63.激震
63.激震
その間にも、戦闘は激化している。ウェンディは水銀の刃を散らし、地上に疾駆する敏捷な怪物の首を跳ねる。一体二体。重ねる内にさらに加速する刃も、さらなる大群に見舞われてはどうしようもない。
テレスも空中の敵を打ち落すことに専念している。金色の如意棒が鳥を一掃し、地上へと落としていくが、さらに空に黒い影が挿し込む。鳥だけでなく、頑強な甲虫達も集まり始めていた。テレスの如意金箍棒の切れ味が鉄の肉体に阻まれると、その隙に数を増す空挺部隊。空も地上も戦争の模様だった。
それを援護するのは風歌の力だ。『ウボ・サスラ』に白蘭式を施すための彼女は最後まで温存しなくてはいけない存在だ。しかし、そんなことにかまっていられる状態では無かった。彼女はテレスのように空を攻撃できないため、ウェンディと一緒に地上の怪物を掃討するのを手伝った。彼女の手に握られた金剛杵は雷撃を打ち出し、怪物を撃ちぬいた。魔術師としては十分戦力になる力だ。
もちろん『ウボ・サスラ』も未だ健在である。白い腕を必死に伸ばし、矮小な人間を捉えようと必死になっている。その度に雨道の薙刀の神速一閃が肉体を切断する。
紅蓮の炎も矢継ぎ早に空中へと打ち出され、『ウボ・サスラ』を貫いた。ロバートはサラの生み出した炎の弾丸を加速させて打ち続ける。そして、怪物の腕が伸びると同時にサラを捕まえて千二百キロの豪速で逃げ出す。
この作戦は、あまり上手くいっていない。やはり、決定打となる『心臓』を貫かぬ限り、攻撃は意味を成さないのか――――。
「おい、お前ら! その怪物の目とやらで、心臓の位置は分からないのか!」
雨道が声を張り上げる。迫り来る腕をただひたすら切断する。その声を聞いて、ロバートがさらに雨道と張り合うように声を大にしていった。
「今やっている! だが、こいつは並の怪物じゃないぞ! 全く見えないんだ!」
雨道が舌打ちする。地上を走ろうにも、怪物がすでに押し寄せているらしい。そんな場所を走るわけにはいかない。だからといって、ここから先、白蘭館に歩を進ませることもさせてはならない。
「神縛を破られた以上――想定外を考えるべきか――」
そもそも、『ウボ・サスラ』がこれほどの奇態を取るとは予想していなかった。
作戦根本から、すでに退廃している。と言ったところだ……。
「クソッ! 黒兎―ッ! お前なにしているッ! 答えろ!」
代わりに聞こえたのは、小さい声だった。
『くろうさんは、えんぐんに、いったのーっ!』
轟音にかき消されていたが、確かにそれは、夢見野の声だった。
「―――何だって! お前が――夢見野!」
『へっへっへ。んまあ。そういうこったァ!』
同時に―――黒兎のおかしな口調が脳内に走った!
「東を見なさい!」
東と言われても、即座に場所を把握できるわけもなく、ただただ視線を散らして見ていると、それは悠然と、しかし重厚な存在感をもって、地下ハッチから出現した。
漆黒のボディ。肩から伸びる砲身。右腕にはエネルギーを満たしたビームサーベル。
それは、いつかロバートが想像した、都市伝説の形だ!
『秋葉原裏伝説! 日本が秘密裏に開発した最強にして最速の人型決戦兵器!』




