61.誕生
61.誕生
結界の破裂音――神柱の崩壊。それが告げている。
「ぐ、ぐ、ぐ、ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおんんんん!」
産声が上がった。誕生を歓喜する怪物の産声。
醜悪な足が卵から伸びる。ぶりぶりとした卵細胞は破れ、粘性を伴った腕が天に伸び上がった。割れた卵の向こうから覗いている目……それは狂乱の宿し子、生命の輝き。
そう、この姿は、何よりも―――人間に近い体の形をしていた!
「………なんて気持ちの悪い、怪物なんだ……」
ロバートは開いた口を閉じることができない。
「う、ううぅ……うごおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおんんんん!」
卵の殻をスカイツリーにぶら下げ、立ち上がった。人間と獣を割ったような怪物。
スカイツリーと比較すれば、小さいかも知れない。しかし、こんな大きくて不快な人類がこの世界に今まで一度でも足を踏み出しただろうか? 否、この『ウボ・サスラ』は、人間として、始めてこの地を踏んだのだ。
「おっ、おで、おで!」
「―――しゃ、喋った!」黒兎の引きつった声が耳に届く。
「おで、おで! おま、おま、ら、おまえら! たっ、食ベルゥゥゥゥゥウウウウウ!」
『ウボ・サスラ』が歩いた。そして、手の伸びる先は『白蘭館』のビル!
「――ッ! させるかぁぁぁああ!」
薙刀が伸びる腕を切り裂く。質量を無視した一閃は正しく達人の一言。しかし、怪物にはそんな腕の冴えを褒めるような人徳は無い。一切非情。腕は吹き飛んだが、切っ先から腕は再び生えてきた。
「――ならば、焼いて一生、生えなくするまでよ!」
灼熱の道が出来上がる。彼女の放った炎の槍が伸びだした腕を切り裂き、さらに腕を焼いた。焼いたことによってつながった細胞は、腕を完全に殺した――訳ではないようだ。
粘膜を滴らせた、真っ白な巨人。『ウボ・サスラ』は、その腕を食った。口は妙に赤く、歯は生まれたてとは思えぬ立派な揃いようだった。白い歯がガリガリと自らの腕を削ると、再び腕が生えてきた。
「黒兎ッ! 心臓は何処だ!」雨道の一喝が東京都心を駆け巡る。
スカイツリー周辺はもはや戦地だ。しかも、『ウボ・サスラ』の産声を聞いて、小さな怪物達が集まり始めていた。空には大量の鳥が覆い尽くし、地上には迅速な獣が大量に舞い込んできた。
『――駄目ッ! 分からない! 絵本たんも分からないって! それより、『ウボ・サスラ』を倒す班と怪物達を惹きつける班に別れて! もう怪物達はすぐそこに迫っている!』




