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夢と幻のキネマ館  作者: 黒木 静
『白と黒のメリー 東京編』
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36.『神縛連合』と『クトロンカムイ』



 36.『神縛連合』と『クトロンカムイ』



 九階の雨道蔵光は八階に住む黒兎を自室に呼び出していた。

雨道の部屋は多くの雑貨がごった返して居るが、一部、どこから持ってきたのか、畳が二〇畳ほどの範囲に張り巡らされ、その上に敷き布団や生活必需品を置いている。

 壁の如く積まれた机や椅子は、雨道の聖域たる畳の上には一つもない。

 京都に誇る退魔の家系である雨道は、『神縛連合』でも切り込み隊長としてその腕前を評価され、京都に数ある陰陽師の一族や、坊主や退魔師達の間でも時折噂されるほどになった。京都は特に怪魔の出現が多く、中にはかつて大鬼を退治したという家も存在するほど、日本では怪物の集合点で、最前線だった。

 その中で評価されるということは、年に数年と居ない卓越した技術や腕があってこそ、である。日本最古ともいえる退魔の歴史を持つ京都の退魔師達がそう簡単に新入りや若造に良い評価などは下したりはしない。それに引換え、雨道は若干二〇という年代で評価され、その後十年で塗り替えた記録は少なくない。

 百鬼夜行渦巻く京都の都を駆る生粋の戦闘師。それが雨道であった。

 今、この場所で居ることは彼の誇りであった。常に生と死の駆け引きがあるこの戦地は、雨道の血を駆り立てた。ただ、ひたすらに殺す。それだけが雨道の生きる意味に等しい。

 むしろこの場所に居ることで、自身が鍛えられるならば、やってやろうと思うのが彼の性格だった。すでに五百年という時間が経ち、愛路橋の魔術がなければ死んでしまう体になった。それでも、『暗黒のアブホース』という巨悪を前にすると、自分の生死より、アブホースを殺そうと思う他は一切考えないのだ。昔から、悪だの正義だのに興味は無く、ただ、生きるか死ぬかの駆け引き――勝負事に本気を賭けるような性格だった。もし、生死を掛けたギャンブルを持ちかけられようとも、彼なら受けるだろう。それが生まれ持ってもつ彼の気性であり、とことん生死と白黒にこだわる根っからのギャンブラーにして、戦争屋の性格だった。

 ただ勝負がだと言う単純明快な彼は、白蘭館の中でも最も肉弾戦に強く、倒した怪物の数も断トツに多かった。

 そして継ぐ強さを持つのが、『クトロンカムイ』の『黒兎みなみ』だった。

 北海道を中心に活動する魔術師集団クトロンカムイは、古代北海道に栄えた文明の魔法を追求することを目的としているが、実際はすでに魔術的な研究が行われておらず、他から見れば『お遊び』とも言える程度の、弱小魔術結社だった。戦闘に関する方法や物理的に怪物を破壊する能力を備えない、占いや儀式には強かったらしいが、クトロンカムイが何故この『白蘭館』のテレパシーならぬ電波を感じ取ることができたのだろうか? それが、黒兎みなみ(仮名)だった。

 彼女はいわゆる、スカウトされた魔術師だった。かつては東京や大阪などの都会を中心に発生する怪現象を解決して回るフリーの魔術師だった。様々な事象をただ見たいというだけの願望が、彼女に力を与えた。

 元々は西洋に留学して魔術を研究していた本格派だが、その後はどの魔術結社に入ることも無く、ただ、自分の趣味で集めている『都市伝説』を求めて日本各地をぶらぶらするフリーターだった。稀に書くネタを胡散臭い出版社に送ってはささやかな旅生活をした彼女が、何故クトロンカムイに在籍することになったのか? そこには長い長い問題があったり無かったりする。今、この場所にそぐわないため省略してしまうが、彼女の持ち前の明るさと行動力が無駄な事件を招いたというのは、簡単に想像できることだろう。

 ともかく、本筋の魔術を学んだ彼女は、『白蘭館』でも本場の魔術師にも負けない技術を持っていることは、皆まで言う必要はない。

 クトロンカムイ本拠地、北海道はアブホース眷属『バハムット』に焦土にされた。北海道には魔術結社も少なかったため、被害は尋常では無かった。





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