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運命の影  作者: 竜の牙


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3/9

第三章 先生の式で

フィティナは毎朝、同じ順番で点検した。


 入口の膜、下降路、東の結節、西の作業壁。六週間、その順番を変えなかった。グレイスの修正も、通常の作業記録に載せていた。


 ある朝、タリアにその進捗を伝えた。


 タリアは最後まで聞き、茶を置いた。


「見せて」


 グレイスは壁の前に立っていた。タリアの視線が線を追い、接続を渡り、彼女の署名で止まった。


 部屋の暖かさが狭くなった。


「封鎖式」


「はい」


「私に合わせてある」


「はい」


 タリアが近づいた。後ろへ下がれば壁に当たる。グレイスは下がらなかった。


「私の中で、これを組んだのね」


「百年、時間を作れます。その後は共鳴を引き継げるようにしました」


「あなたは百年後まで生きていない」


「必要な人を、式が探します」


 タリアの目が、彼女の手に落ちた。


「私が教えたもので」


「そうです」


 入口の白い膜が一枚ねじれた。


「私を壊しても、起動できます。六週間前に、守護者へ渡しました」


 タリアが止まった。


「六週間」


「先に気づいてほしかった。誰が作ったか、知ってほしかったんです」


「なぜ」


「先生は、ご自分のことを隠さずに見せてくれたから」


 タリアはしばらく彼女を見ていた。


「あの人を愛しているの」


「はい」


「私も」


 答えを礼儀で包む場所は、もうなかった。


「私にできる形で」


 圧力が来た。


 片膝をつき、手を床に当てる。グレイスは起動点へ二歩進んだ。次の衝撃で横に倒れた。開いた扉の向こうにドレイヴンがいた。呼び戻した連絡が間に合ってしまった。


 タリアも彼を見た。


 その手が上がる。


 グレイスは床を滑り、主配列に両手を押し当てた。


「今」


 彼女の腕に隠蔽式が浮いた。三方向から守護者たちが現れた。ヴェナリスの槌が振り下ろされ、冷たい鉄がタリアの右手を留めた。


 右側の壁から熱が消えた。


 次の鉄が左手を留めた。声が幾つにも割れ、天井が鳴った。カスパルが体ごと右腕を押さえる。フィティナは震える両手で、こめかみの留め具を支えていた。


 タリアの目は、グレイスから離れなかった。


 足が留められた。膝が折れた。床に落ちた髪を誰かが踏み、すぐ足をどけた。そこだけが、ひどく日常的だった。


 ヴェナリスが最後の鉄を持った。


「やっと」


 タリアが言った。


 顎に鉄が通り、言葉の続きが閉じられた。手首、喉、こめかみ。留め具を締めるたびに、壁の式が一列ずつ暗くなる。


 残ったのは換気の音だった。


 グレイスは膝をついた。タリアの目が開いている。


「何を捨てるのか、わかっています」


 声がかすれた。


「わかっていて、こうします」


 返事はなかった。


 主配列まで歩き、両手を置いた。先生の教えた式が、弟子の体を通って閉じた。


 廊下でドレイヴンが彼女を呼んでいた。


 グレイスはそこへ出た。


 上層の空気は冷たかった。


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