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第5話 欠けた皿の理不尽
「他人の涙を背負ったとき、逃亡者は初めて立ち止まった。」
新左衛門が道祖神の影に戻ると、刃物男・柿崎源之助が声を荒げて泣きながら事情を明かした。
襲われていた初老の男は庄屋・丹波色兵衛で、源之助の妻・お光に欠けた絵皿(実は最初から欠けていた可能性がある)
を理由に3両の借金を押し付け、月1貫の返済と遅延時の2年間奉公を強いた証文を書かせていた。
源之助の足が傷つき、血を流しているのを見て、新左衛門は背負い、長屋へと連れ帰った。
よほど思い詰めていたのであろう。新左衛門の背中は、源之助の流す涙でぐっしょり濡れた。
源之助は商店の裏に位置する、裏長屋に居を構えていた。一つの棟を数戸に仕切り、間取りは四畳半ほど。
細長い通路の先に井戸と便所がある粗末な住まいでは、美しいお光と利発そうな10歳前後の息子・太助が迎え、
源之助が駕籠かきを生業としていたことを初めて知った。
源之助は争いの詳細を避け、妻に「助けられた」とだけ伝え、家族は新左衛門を上客のようにもてなした。
だが、新左衛門は自分の早とちりで始まった事件の責任を感じ、
怪我が癒えるまで仕事を補佐し、一緒に暮らす決意を固めたのであった。
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