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乙女ゲーの世界に転生したモブが、公爵令嬢と付き合うことになった話  作者: 乙賛


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第5話 モブからサブキャラへ

 突然の、モブからサブキャラへの昇格。さらに、悪役令嬢の攻略対象となった俺は、それでもアリシアとの勉強会イベントをこなし続けている。いや、何度か逃げようとしたり、体調不良を装ってみたりもしたんだが、全てが無駄に終わり気が付けば図書室でアリシアとふたりきりになっていたのだ。


 これが、いわゆる強制力って奴なのだろう……。


 そして、俺とアリシアが一緒に居ることが、なぜか当然と受け入れられ始めたのは、イベントが順調に進んでいるせいなのかもしれない。というのも、いつの間にかアリシアの取り巻きが消えて、俺にその立ち位置が代わっても、その事に誰一人突っ込まないのだ。取り巻きが何処に行ったのか不明、というか顔すらロクに思い出せなくなっている……。





「ふふっ、ここ最近ずっと一緒だと、まるで付き合っているみたいね」

 勉強会の合間、アリシアがとんでもない台詞を口にする。もしかしてこのイベントをクリアしてしまうと、正式にお付き合いとかになったりしないよな。いや、アリシアと付き合うのが嫌とかいう話じゃなく、普通に考えて公爵令嬢とモブ……元モブが付き合うとか、世間の常識としてもあり得ないだろ。


 いや……王太子と平民の聖女候補が引っ付いて、公爵令嬢を断罪するような、乙女ゲーの世界。モブと公爵令嬢がくっついたところで、問題が無いこともあり得てしまうのか……。


 断罪されるべき公爵令嬢が、モブと付き合う展開なんて、もはや乙女ゲーではない。それでもピンク髪と王太子がくっついて、ハッピーエンドなら、ギリギリ許容範囲と言えなくはないか。とはいえ、この状況はモブでしかなかった俺には、完全に想定外なんだよな……。


「今日は、早く終わったしどこかでお茶でもしませんこと?」

 距離が急接近してきたアリシアは、それでもまだグイグイと押してくる。俺を攻略対象として、確実にロックオンしてきているのだ。そしてこういうフラグを立てられたら、俺にはどうやっても逃げることは不可能なのは、すでに体験済みである――



「――ふふっ、そこのケーキ屋さんが最近の流行だそうよ。なんでも、カップルで行くとサービスしてくれるらしいわ」

 楽し気に微笑むアリシア。そこには悪役令嬢の面影など、影も形もない。こんな美少女に微笑みかけられれば、俺も嫌な気持ちになるはずもない。しかし、これが「汚染」の結果だとしたら……。そう思うと、素直にアリシアの好意を受け取ることができない。いや、強制力による好意なんて、そんな人格を無視したものを受け取ってはいけない。


「あっ、ボイドくーん!」

 向かったケーキ屋の店先に並んだ、テラス席。そこには見間違いようのないピンク髪が、王太子とゆかいな仲間たちを引き連れて、鎮座していた。王太子や高位貴族の嫡男なんて、モブにとっては無縁どころか恐怖の対象でしかない。いくつも並んでいるテーブルは、ピンク髪たちが占めるひとつ以外は、全て空席だった。


 横に居るアリシアからは、すでに怒気が漏れ出している。この状況で俺がピンク髪に返事が出来るだろうか、いや出来るはずがない。


「あら、殿下。もうすぐテストというのに、随分と余裕ですこと」

 アリシアは、ピンク髪を完全に無視して王太子に話しかける。ピンク髪は無視した形になった俺を、頬を膨らまして睨むが、それよりもゆかいな仲間たちの視線の方がキツイ。「平民如きが、公爵令嬢と――」とか、如何にもテンプレな台詞で嫌味を言ってくるが、あまりにもテンプレすぎてこいつらの方がモブに見えてきたのは内緒だ。


 その横でアリシアは王太子とバチバチに言い争っているが、それすらも既視感のある情景。「王太子と言い争う公爵令嬢」というシーンを、見させられているだけにしか思えない。そしてこのシーンのアリシアは、さっきまでと打って変わってバリバリの悪役令嬢顔。俺にとっては、もはや乙女ゲーではなく、ホラーゲームに思えてくる。


「――良いだろう、我が負けるようなことが万が一にもあれば、お前との婚約を破棄してやろう!」

 ……ちょ、ちょっと待て。俺の気付かない間に、勝手にイベントを進めるな、それとフラグも立てるな! 王太子が婚約破棄するのは、卒業シーズンのはずだろうが!


「ふふっ、言いましたわね。今更無かったとは言わせませんわよ」

「当たり前だ! 王太子である我に、二言などあるはずが無かろう」

 この際ピンク髪でもいいから、止めてくれ! ゆかいな仲間たちも、呆然としてる場合じゃないだろ! 王太子と公爵令嬢の婚約なんて、国家規模のイベントのはずなのに、こんな簡単に破棄とかありえないだろうが!


「わたしの殿下なら、負けるはずないですよね」

 ピンク髪は止めるどころか、火に油を注ぎやがる。しかもしれっと王太子を所有物扱いとか……不敬で殺されても知らねえぞ。


「ああ、殿下がこんな雑魚に負ける訳がないでしょう」

「そうだよな。なんたって王太子殿下だぜ」

「ええ、神も御照覧あれ。この国の王太子殿下の、その知勇の冴えを!」

 ……こいつらに期待した俺が、馬鹿だったのかもしれない。もはやモブに成り下がったこいつらは、テンプレの定型句しか口にすることができないようだ……。



「ふふっ、テストが楽しみですわ」

 そう言って、なぜかこいつらの横のテーブルに腰を下ろすアリシア。今さっきまでもめてたのに、何で隣なんだ?


「いらっしゃいませ――」

 そして、イベントが終わると同時に現れた店員。こっそり覗いてでもいてくれたらよかったんだが、さっきまで影も形もなかったよな。


「このカップル向けのセットを、ひとつお願い」

 躊躇うことなく、ひと際目立つフォントで、メニューに書かれたセットを指差すアリシア。カップル向けとか、嫌な予感しかしないし、それをこいつらの隣のテーブルでとか……イベントはまだ続いているのか?

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