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乙女ゲーの世界に転生したモブが、公爵令嬢と付き合うことになった話  作者: 乙賛


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2/12

第2話 モブっぽかったよな

「ではボイド、わたくしのことはアリシアと呼びなさい。ボイドとはあの女が嫌いと言う、固い絆で結ばれたのですから――おーほっほっ!」

 悪役令嬢改め、アリシアはそう言って何故か得意そうに高笑いする。周りの取り巻きたちも、目の前でひとりお払い箱になったのを見て、口を挟むのをあきらめたよう。いや、もっと突っ込めよと、思わないでもないが、公爵令嬢の取り巻きというだけでも、それなりのステータスなのかもしれないな。


「は、はい。アリシア――様」

 もちろん俺も権力に逆らうなんて、無駄で恐ろしいことなんてする気はない。言われるがままに名前を呼ぶが、小心な俺は「様」をそっと添えておいた。


 ってか、それよりも「鑑定」がレベルアップしたことに、大半の気が取られている。これまで何度も鑑定してきたのに、成長する気配もなかったのに、ここにきてレベルアップとか……なんか作為的じゃね?





 アリシ……悪役令嬢のしつこいお茶の勧誘を、最後には親父が死にかけとまで言うことで何とか逃げ切った俺は、寮の自室でようやく一息ついていた。


「てか……なんか一度にあり過ぎじゃね?」

 一言で云うと、俺の疑念はそういうことだ。乙女ゲーのメインキャラ全員と関わり合い、鑑定のレベルアップのおまけつき。これで全てを偶然と放り出すほど、俺の頭はお花畑じゃないつもりだ。


「いずれにしても、ろくな未来が想像できないんだが……」

 そうなのだ。要はこれだけフラグを立てれば、これから何かイベントが発生するということ。モブでいいと思っていた俺にとって、はた迷惑極まりないのだ。


「……いや、そうじゃない! なんでこれが乙女ゲー前提で考えてんだよ?」

 ちょっと油断すると、さっきまでの考えが当然と思えてしまう。なんというか、無理やり思考誘導でもされているかのような……ひょっとして強制力って奴か?


「あー! もう何がなんだかわかんねえ!」

 リアルなのか、乙女ゲーなのか、俺の頭の中は、ハテナマークが乱立して、フォークダンスを踊り出しそうな勢い。



「……とりあえず落ち着こう」

 俺の足りない頭で考えたところで、答えが見つかるとも思えず。俺は、気分転換も兼ねて部屋中のものを鑑定してみることにした。


【鑑定:ベッド】

 材質:木


【鑑定:布団】

 材質:布


【鑑定:カバン】

 材質:革


【鑑定:教科書】

 材質:紙


【鑑定:ヒ・ミ・ツの本】

 材質:紙、……他

 

 ……


「……いや、うん、確かに名前以上の情報が見られるよな」

 単純に情報量は、倍。とはいえ、身の回りのもの相手では、倍になったとてだ。


【鑑定:ボイド・シュレディンガー】

 種族:人間

 年齢:15


【ピコーン! 鑑定レベルが上がりました!】


【鑑定:ボイド・シュレディンガー】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:モブキャラ(フラグ成立済み)


「……はあっ? なんだこりゃ?!」

 いろいろと突っ込みたい、というか目の前に正座させて一晩説教してやりたい。まあその場合、説教するのもされるのも俺なんだが……ってか、これで乙女ゲー確定ってことか? 「フラグ」ってそういうことだよな? それにレベル上がるの早すぎないか? 15才になるまでどれだけ使ったと思ってんだ、それが一日で2回もレベルアップとか……。


「しかも、主人公じゃなくて、モブのままなんだよな……」

 一瞬冷静になって気が付いた事実に、俺はただただ落ち込むのだった――





 翌日から俺は、開き直ることにした。いや、昨夜落ち込み過ぎて、寝不足だからってわけじゃない……はずだ。


 それよりも、まずは現状の確認。これが本当に乙女ゲーなら、悪役令嬢が最後に断罪されて、聖女ちゃんが誰かとくっつくか、逆ハーエンドってことだよな。そうなると、悪役令嬢の友人枠に嵌められた俺は、死なば諸共……的なエンディングってこと。巻き込まれモブとか、マジで最悪だから、それは何としても避けたいのだ。


 もちろん、昨日のは全部夢……ってオチが希望なのは間違いないんだが。そんなことを考えながら、教室までぼんやりと歩いていた……。


「あらボイド、おはよう」

「ああ、おはよう、アリシア――――」

 なんだろう、あれって《《俺の希望が瞬殺されるフラグ》》が立ったってことなのか? もうちょっと夢を見させてくれてもいいだろうに……ってか、俺今呼び捨てにしてなかったか?!


「――様!」

 必死で敬称を口にするが、間に合ったか?


「ふふっ、別に呼び捨てで構わなくてよ。わたくしたちは強い絆で結ばれた者同士なのだから」

 セーフッ! 問答無用の無礼討ちも、一瞬覚悟して「先立つ不孝を――」とか思ったが、無事に生き延びることができたようだ。


「アリシア……様って、王太子殿下の婚約者だったと思うんですが、俺なんかと居て大丈夫でしょうか?」

 次々と襲いかかる命の危機。冷静に考えれば、王太子の婚約者とふたりきりで会話とか。しかもそれが下級騎士の息子って、殺されても文句が言えない様な……。


「あの女に鼻の下を伸ばす殿下に、そのようなことを言う資格なんてありませんわ。それにわたくしが誰と仲良くするかまで、殿下に口出しされる謂れもね」

 なんか、やっぱり王太子に怒ってるよな。そりゃ自分の婚約者が、他の女にかまけてたらそうなるわな。そういや今日は取り巻きがいないようだが、あれってオプション装備なのか?


「まあ、アリシア様がそうおっしゃるなら。それよりも今日はおひとりなのですか?」

「ええ、わたくしがあの子たちを集めているわけではないですもの。皆自分の意思でそばにいるのです。それにいつも周りに居られたら息ができませんわ」


「なるほど――」


「貴様! 我が婚約者に何をしている!」

 なんか、もう驚かなくなってきた自分がちょっと怖い。突如目の前に現れた王太子とゆかいな仲間たち。もちろん、モブの俺がアリシアと歩いているのが気に入らないのだろう。なんというか、乙女ゲーならこうなるだろうって展開だ。


「あら、殿下。おはようございます、朝からお元気ですわね。それとボイドは、たまたま会ったので話していただけですわ。どこかの誰かのように、婚約者がいるのに異性に付きまとうような、はしたない真似はいたしません」

「くっ、アリシア! それはどういう意味だ!」


「あら? あの女のお花畑な頭まで、うつったようですわね」

「ロゼを馬鹿にするのか!」


「わたくし、別にロザリアさんのこととは言っておりませんわ。でも殿下がそうおっしゃるということは、心当たりがあるのですわね」

「それが王太子に対する口の利き方か!」


「あら? 婚約した頃に、殿下から普通に喋るように命令されたと思うのですが。もしや、それすらも忘れてしまったのですか? 一度、神殿で診て頂いた方が……頭を……」

「うるさい! 黙れ! もういい、勝手にしろ!」

 なんか、今の俺ってモブっぽかったよな。完全に背景となって、メインキャラ同士で話が進むのって。ちょっと希望が持てそうで、にやけそうになる。


「ボイド、ごめんなさいね。朝から嫌な気持ちにさせてしまったわね」

 やはり、《《俺の希望が瞬殺されるフラグ》》が、俺のフラグなのかもしれない。間近で俺の顔を覗き込むアリシアからは、なんとも言えないバラの香りが俺の鼻腔をくすぐる。しかも追加で、金髪ドリル髪美少女のドアップの笑顔つきだ。


 思わず視線を逸らすと、王太子とゆかいな仲間たちが、俺を親の仇かのように睨んでいた……。こういう時は気分転換に鑑定だよな――


【鑑定:アリシア・フォン・ヴェルトハイム】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:ヴェルトハイム家長女


【鑑定:リチャード・フォン・アルデリア】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:アルデリア王国王太子


【鑑定:ハンス・フォン・リヒター】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:リヒター家嫡男


【鑑定:ゲオルク・フォン・ヴェルトハイム】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:ヴェルトハイム家嫡男


【鑑定:クリス・フォン・ホーエンハイム】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:ホーエンハイム家嫡男


【ピコーン! 鑑定レベルが上がりました!】

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