表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーの世界に転生したモブが、公爵令嬢と付き合うことになった話  作者: 乙賛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

第10話 悪夢の整理

 逃げ込んだケーキ屋で、俺たちは《《普通の》》セットを注文する。もちろんこれ以上強制力に介入されて、余計な「親密度」なんていうものを追加されないためにだ。目の前のアリシアは、とても嬉しそうに色とりどりのタルトを上品に口に運んでいる。


 そして俺は、この悪夢のような状況を改めて整理し始める。


 まずは、王太子とゆかいな仲間たち。


 ゆかいな仲間たちは、再構築前はフラグも立っておらず、はっきり言えばただのモブに毛が生えた程度。シナリオが進めばイベントでフラグも立ったのかもしれないが、まだ開始直後ということもあり恐らく初期値のままだ。


 王太子も、似たようなものだろう。一応メインの攻略対象だったようだが、こちらもテストイベントは俺が潰したから、フラグは立ってないはず。まあ、負けフラグは立ったんだろうがな。


 つまり、こいつらはある意味弄りやすいキャラクター。パラメータが初期値なら、役割ロールを変えるだけで済む。中途半端にイベントが進んでいれば、シナリオに影響するだろうからな。


 ここから考えられるのは、再構築と言っても、シナリオと役割ロールが変わっただけで、キャラクターが持つパラメータやフラグはそのまま維持されているということだ。


 それは、目の前のアリシアを見れば証明される。俺に対する好意は、「親密度+5」のためだろうからな。あとは、俺がアリシアの攻略対象になっているのも関係するのかもしれない。正直、目の前で微笑みかけてくれるアリシアの姿が、強制力によるものなんて信じたくない。ほんとに、なんて悪夢なんだよ……強制力ってのは。


 アリシアについても、「悪役令嬢」から、「公爵令嬢」への役割ロールの変更。しかし再構築前でも、アリシアはすでに「悪役令嬢」ではなくなりつつあった。王太子との婚約破棄によって、ピンク髪への敵意が薄れて無関心に近くなっていった気がする。


 そして俺という異物バグによって、俺に対するフラグが立ってしまったことで、もはやアリシアの役割ロールは、よくわからないものになっていた。俺に対するフラグと親密度を維持したままの再構築によって、彼女は今俺の目の前でタルトを頬張り、紅茶でその白い喉を艶めかしく動かしつつ飲み込んでいる。


「ふふっ、ボイド。このタルトとっても美味しいわよ、一口差し上げますわ」

 そういって、フォークに刺さった綺麗に切り分けられたタルトを、俺の口に近付けてくる。いわゆる、あーんってやつだ。こういうのに全く耐性のない俺は、自分でもわかるぐらいに顔が真っ赤になる。しかし、アリシアは優しい笑みを浮かべるだけで、口の前の差し出されたタルトは微動だにしない。


「はむっ……」

 仕方なく……いや、喜んで俺はタルトを口にする。するとアリシアの笑みはさらに華やかなものに変わり、俺はタルトの味なんて感じる余裕がなくなる。


「どう? 美味しいでしょ。わたくしも、ボイドのショートケーキが一口頂きたいわ」

 しかしこれで終わりではないらしく、アリシアは攻略の手を緩めない。その美しく、少し潤んだ瞳は、俺の手元のケーキに向けられている。俺は必死に手の震えを抑え込み、なるべくきれいな形に切り分ける。そして……。


「あむっ……ふふっ、ボイドのも美味しいわね。ボイドが食べさせてくれたかしら?」

 少し首を傾げて覗き込むようにして、楽し気に微笑むアリシア。もはや俺の心臓は、爆発寸前である。女性経験ゼロ、彼女ナシの俺にとって、超絶美少女とのあーんのやりとりなんて、ハードルが高すぎる。おそらくゲーム開始直後にラスボスと戦う、程度にはな……。


【鑑定:アリシア・フォン・ヴェルトハイム】

 種族:人間

 年齢:15

 備考1:ヴェルトハイム家長女

 備考2:ヒロイン、攻略対象(逡ー迚ゥ縲翫ヰ繧ー縲�)『親密度+5』、フラグ成立済み

 備考3:繧キ繧ケ繝�Β縺ョ譖エ譁ー縺ォ繧医j險ュ螳壼、画峩貂医∩、逡ー迚ゥ縲翫ヰ繧ー縲�ルート


 そして、どうやらアリシアにフラグが立った。どう考えても攻略対象の俺に対するフラグだよな……。しかも多分、俺ルートにまで入ってしまっている。


 冷静になるためにも、俺は再び再構築に思考を戻す。……なんだっけ、アリシアが俺の攻略を順調に進めてて、再構築後も維持されてるってことだったよな。そこからキャラクター自身が持つ、フラグやパラメータは維持されるはず、という仮説は正しそうという話だ。


 それから、再構築前に確認した、イベント外の様子。王太子とゆかいな仲間たちは、明らかにイベント中と異なり、ごく普通の少年らしい姿だった。アリシアも、公爵令嬢に相応しい優雅な姿で、初期の「悪役令嬢」とは完全に別もの。ピンク髪だけが、イベントに関わらず、常時空気の読めない八方美人だった。



 そうなると、問題はピンク髪ということになる。こいつの、他のキャラクターとの差は何だ? そう、考えられるのはこいつがヒロイン、つまり主人公だったということだ。乙女ゲーのキャラクターとしても、こいつだけは他のキャラよりも多くのパラメータを持っている可能性が高い。あちこちでイベントを起こし、複数のキャラクターを攻略するのだから、それも当然だ。


 ピンク髪だけは、アリシアたちと違うキャラクター定義情報を持っている。そして詳細に作り込まれているために、イベントに関わらずキャラクターがぶれないと考えられないだろうか。


 ようするに、アリシアたちはイベント中だけだが、ピンク髪は常時強制力に晒されているということだ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ