下層
だいぶ間が空いてしまいました…すいません。
ちょこちょこと書いていたのですが中々進まず…
降参する事がどんな意味を持っているか、条件を言い出したアエーラは重々に分かった上で言っているのだろう。
自分の命を奪え、まるでそう言っているかの様にボクの前に頭を差し出している。
「アエーラ様!」
「駄目です! アエーラ様」
洞窟の上方で待機していた二人のハーピーが、叫びながら慌てて降りてくる。
アエーラとボクの間を割るように降り立ち、アエーラの姿を隠すように翼を広げ、膝を折って頭を下げてくる。
「我々の命はどうなろうと構わない! しかしアエーラ様の命だけは!」
自分の命を差し出してでも、アエーラの命を助けて欲しい。
そんな二人のハーピーは本心よりそう叫んでいる様子であった。しかし、アエーラはそれを制止する。
「やめろ、これ以上私に恥をかかせるな」
「しかしアエーラ様!」
なんだか物語のワンシーンでも見ているみたいだけど、本当にこんなことってあるんだねー。
……って何かボクが悪者みたいじゃないですか?
命を奪う気なんてこれっぽっちもないのに。
【あの条件であれば、命を奪われるか、下僕にされるかと考えるだろうな】
まあ、そりゃそうだろうけど。
ボクも負けても、降参しても、命は無いものだと考えていたわけだし。
「では約束通り自由にさせてもらっていいですか?」
ボクの言葉にアエーラは覚悟を決めたように目を瞑り、二人のハーピーは絶望的な表情を見せる。
「ここに戻ってきた時、大穴の上まで運んでください、これを約束してもらいます」
「……?」
ボクの言っていることを理解できていないのか、少し間が開いた後も3人は不可思議な表情を見せていた。
「あ、もちろん、全員ですよ? ちょっと大変かもしれませんけど」
二人のハーピーはポカンとした表情であり、アエーラは眉をひそめてこっちを見ている状態であった。
「何を言っているんだオマエは……?」
「何って……勝者の権利、ですか? もとからアエーラさんをどうこうする気も無いわけで、せめて戻ってきたときに楽できればと思うんですが」
ボクの言葉を聞いて、アエーラは何を言っているのかと一層眉をひそめていた。
「他に頼みたいことは特にありませんし……まあ戻って来た時には宜しくお願いします」
それだけ伝えると3人を後にして、皆が待っている洞窟の通路の方へと小走りで足を運ぶ。
【ククク、お前も意地が悪い言い方を覚えてきたじゃないか】
え、そんなに意地が悪いとは思えないけど。
まあ少しもったいぶった言い方だったかもしれないけど。
【あの表情、知性ある魔物であっても理解しがたい考えであろうな。中々に面白いものを見せてもらった】
いやまあ、命を奪ったところで何の利益もないわけで。
むしろアエーラさんは偉い立場にありそうで、後々の仕返しがあっても面倒ですし……
それに自由にって言っても、下手に魔物を連れて歩いたらそれこそ面倒なわけで(銀鈴とか)。
【魔物や人間を売買する輩もおるからな。お前のような対応はやはり珍しかろう】
あ、奴隷商人ってやつですか。
聞いたことはあるけど……言葉を話せる生物をそういう風に扱うのはボクには出来そうにないかなぁ。
『命を奪うか奴隷にするか。その選択肢が多いでしょうね。ポコの精神は良き成長をしていますね』
何だか照れくさいけども、そんなんじゃなくてですね。結局のところ面倒な事が嫌なだけだと思います。
通路で皆と合流する。銀鈴は「ポコは優しいのだが……少しあまいのぅ」と、キュドは「流石ですじゃ!」と拝んでいた。
「お疲れでしょう。ワタシの背にお乗りください」
ガロウが尻尾を振ってそう言ってきたので、遠慮なく乗せてもらった。
通路を進む前に一度振り返ってハーピー達を見ると、アエーラはこちらをじっと睨み、他の二匹は何が起きたかわからないといった表情をしている。
何故に睨まれているのかはわからないけど……
もしかしたら逆にプライドを傷つけてしまったのかもしれない。
まあ何かあったら戻ってきたときに聞きませう。今はそんなこと気にしてもどうしようもないしね。
アエーラを後にし、以前と同じ陣形で通路の先へと進んでいく。
実にさっぱりとした切り替えである。
「ここって深層の何階に入るんですかね?」
「そうですなぁ、大穴の深さは1000mはありそうでしたから……地下6~7階と言ったところですかな?」
ボクの質問にキュドが少し考えながら答えてくれる。
「え……ギルドの方には最高到達地点が地下5階とかって書いてありませんでしたっけ?」
「とっくに越したと言う事だろう」
赤雷が実にあっさりとした答えを返す。
確かに穴を降りるだけでも、かなりの時間を要したと思う。でもそれだけで更新してしまって良いのだろうか……
「まあ横穴を進んだ道と、大穴を降りた道では、到着する場所も違うかもしれませんがな」
確かにキュドの言うとおり。
深層に行くほど洞窟は広がるって話だったし、そんな事もあるかもしれない。
もしかしたらこの先行き止まりになってるなんて事も……
それだと引き返した所でアエーラと顔を合わせることになる訳で……
それはなんだか恥ずかしいですな。
『どこかしらには繋がっていると思いますよ』
おやシロさん、それはどういうことでしょう?
『この大穴から横に連なる洞窟は、蟻や蜘蛛などの魔物によって掘られたものでしょう』
へー、なるほど。
どこかしらには繋がっていってことですか。
【それに向かう場所はほぼ決まっているようなものだ】
むむ? それはどう言うことです?
主のいる場所に見当がついたってこと?
【ウム、もしいるとしたら大穴の真下であろうな】
ホッホー!
じゃあ大穴の下を目指して通路を選んで行けばいいわけですか?
なんとなく先が見えてきた感じがして、ちょっとホッとします。
──はい、楽かもしれないと思った時期がボクにもありました。
言葉でいうのは簡単で、実行するのは実に難しい。実際進んでみると予想よりはるかに大変だったわけで……
サーチを広げて下へと続く道を探して進んで行くが、真下に続くような道のりは無く、ほとんどがゆったりとした斜めの道であった。
進んでは折り返し、ちょっとずつ下へと進む感じであり、1つ下の地層に降りるまでには1週間を要してしまう。
何よりも探索のペースを遅れさせたのは、進む毎に出てくる魔物達の存在であった。
その中でも達が悪く、相当数遭遇したのが大きな蟻型の魔物。
タイラントアントである。
2mくらいの体長で気性が荒く、一体一体は手こずる相手ではないのだが、通路に10匹以上の列をなして現れる。
倒し終わったと思ったら、奥の通路から再度列をなして現れるという面倒臭さである。
一体どれだけの数が生息しているのか……
何千匹では収まらない様な気がする。
最初出たときは赤雷が一匹一匹叩き潰していたのだが、結構な時間を費やした上に、体力を消耗してしまう。
魔法で一気に対応しようにも、キュドが使うような大規模な魔法は洞窟が崩れる可能性や此方に被害が出る恐れがあり、結局はタイラントアントに遭遇した場合は皆総出で対処することになる。
また違う意味で厄介だったのがグラントサーペントという大蛇である。
そこまで多くは遭遇していないが、20mはある長い身体を通路一杯の幅で襲いかかって来る。
細い通路で遭遇すると顔だけしか見えない状態で、呑み込まんと言わんばかりに襲いかかってきた。
倒した後もこれまた迷惑で、通路にギュウギュウと収まって塞いでしまう。
結局のところ消滅魔法で消すことになったが、もし魔法がなかったら細切れにして進まなければならなかっただろう。
いっそのこと全部消滅魔法で……
なんて考えたけれども、さすがにアレだけの敵を相手にしていたらファルナ切れを起こしてもおかしくない。
クロは飽きてきたのか【洞窟の真下に穴を空けてしまえ】なんて言いだす始末。
確かにその手もありかなー、なんて思ったが、穴が崩れる可能性があるから止めたほうが良いとシロに注意されてしまう。
まあ、つまり、それほどまでに手間取ってしまったと言う事である。
「主とやらはまだなのかえ……? もう飽き……疲れてきぞ?」
「姫様……暫しのご辛抱を」
銀鈴は半日ごとには「主はまだか」「疲れた」と口にしている。
前に「飽きた」と言った時、赤雷に「ついてきたのは我々なのですからそんな事を言ってはいけません」と注意され「疲れた」に言葉を変えていた。
とはいえ、歩くことは殆んど無い。ほとんどの行程で赤雷の肩に乗っかったままなのだけど。
銀鈴も出会った頃に比べたら少し変わった気がする。
前だったら赤雷に言われたことなんか気にせず、自分の思うままに行動していたと。
きっと箱入り生活から外界に出て、少しは成長したのだと思う。
周囲の様子が少し変わり、ガロウが鼻をひくひくとさせる。
「ポコ様、臭いが変わってきたように感じます」
「うん、地層が変わったみたいだね。生息する魔物が変わったんじゃないかな?」
話を聞いた、銀鈴の耳がピクリと動く。
「む! ではあの虫っころに会わなくて済むと言うわけかや?」
「そうですねぇ……今のところ集団の気配は無いので、おそらくは……」
銀鈴は耳をしゃんと伸ばして顔を綻ばせ、赤雷も安堵したような反応を見せる。
「ヤレヤレ、ようやくアレの相手をしなくてもいいわけか」
「しかし、この辺の魔物がどんなやつらかにもよるじゃろうな。まあ細々した面倒な相手はもう勘弁してほしいですじゃ……」
キュドは髭を引っ張りながら、もう会いたく無いとばかりの発言である。
まあ、気持ちは良く分かります……
高齢で体力面が心配であったキュドであるが、流石に戦闘が度重なったことから、今はガロウが背中に乗って移動している。
実質歩いているのは赤雷とガロウだけ。
一番疲れているのは戦闘もこなしている赤雷であろう。
そんな中で、赤雷が比較的平然としているのは鬼人としての特性なのか、赤雷が特別なのかはわからないけど。
そうそう、特性と言えば道中にシロとクロに聞いた話がある。
ハーピーを見て思ったのだが、魔方陣を使わすに魔法を使っているんじゃないかという事だ。
【ほとんどの魔物は魔方陣なんぞ使わんぞ】
クロがあっさりとそう答える。
よくよく考えてみれば、その辺の魔物が魔方陣を使う姿なんてあまり想像できない。
『魔物たちは本能で魔法を使用しています。例えば大穴で見かけた蜘蛛。彼らが生成する毒もファルナから生成したものです』
シロにそう言われたときには、驚きと共に考えこんでしまった。
物心ついたときには蜘蛛や蛇が毒を持っていることなど当前のことであった。
それが魔法の一種のような物と言われ、何だか不思議な感じがしたからだ。
『人が手を動かす、鳥が空を飛ぶ、蜘蛛が毒をつくる。魔物にとって魔法を使うという事は、それらと対して変わらない事なのです』
ハーピーが風を従えるのも当たり前のこと。
魂に真名が刻み込まれていると言う表現を使っていた。
もちろん子孫に魔法の知識を受け継がせるような例もあるらしいけど、知能の高い魔物の中での特異的な話だそうだ。
ボクはこんな感じの事が度々あるので、洞窟の探索がそれなりに勉強になっている。
しかし銀鈴なんかはストレス面で結構限界が近いかもしれない。
まあ、ボクも攻略より学園って目的の方が大事なわけで。
そろそろ帰還の事も考えないといけないかもしれないね。
【フム? まあここまで来たのだ。サーチの範囲を広げてから判断しても良いのではないか?】
む? なるほど一理ありますね。
期間的に間に合いそうな範囲に何かありそうなら、そこを最後に引き返すって事でいいかと思う。
皆にも話して、了承を得ましょう。
「あの、新しい地層に着いたところですし、この先の予定の事を少し話したいのですが」
「……まあ、一層降りるのにかなりの期間を要したからな」
赤雷が相槌をうってくれたことで、ボクとしては非常に話しやすい。
「この先も多くの魔物が出てくるとなると食料的にも、日数的にも厳しくなると思います」
「フム……確かに帰還の日程も合わせて考えると、進めるのは後1週間と行ったところですじゃ」
流石キュドである。冒険者としての経験も長く、ボクが言いたいことが良く分かっている。頷きながら、ボクの考えを捕捉してくれる。
「浅層と深層での魔物の量と質が違いすぎましたな。予定を考え直さんといかんですぞ」
「む? 一体何が言いたいのじゃ?」
銀鈴は頭上にはてなマークを浮かばせて問いかけてくる。
「姫様、帰還も視野に入れなくてはいけない。ポコはそう言っているわけです」
「なんじゃと!? では主はどうなるのじゃ!」
「諦めるのもやぶさかではないかと……」
「ムムム……しかしここまで来て引き返すなど……」
銀鈴は複雑な表情で、渋るとも肯定するとも言えない反応を見せる。
このまま戻るのは釈然としない。だけども疲たのも事実。
本人としてもどっちが良いのか分からないと言った感じだ。
ガロウはボクに従うのみ。そう一言発すると黙って話を聞いている様子であった。
まあ納得がいかない気持ちがあるのも良く分かる。クロの考えを皆に提案することにした。
「一度サーチの範囲を一階層下にまで拡げようと思います。何も無ければ引き返す、何か有るようであればそこで探索を終了すると言うのはどうでしょうか?」
「ホウ? 良いんじゃないか」
「流石ポコ様ですじゃ、異論は無いですぞ」
赤雷とキュドから賛同の言葉をもらい、ガロウも問題無しとばかりに尻尾を振ってボクの方を見つめていた。
「フム……まあ無難なところじゃろうな」
銀鈴は少し迷った感じを見せていたが、1週間たっても何も無い状況がわかっているならば、流石に厳しいと思ったようである。
「では早速試してみます。情報酔いを起こすかもしれませんので、周囲の事はお願いします」
皆が頷いたのを確認し、ボクは《サーチ》を唱え始める。
今までより遥かに大きく、上は大穴の底に届くほどに。
む、ムムム……耐えられるか……
いや、うん……ウえっぷ……
やっぱりこの広さは厳しいようで……
数秒間ではあったが、かなりの情報量が入ってくる。
この気持ち悪さが継続したら嘔吐するか、倒れるかしていただろう。しかし《サーチ》は上手くいったようで、大雑把な構造は把握できた。
『今後の為に一つアドバイスをしておきましょう。《サーチ》の範囲をゆっくり広げ、解除できるよう魔法を構築するのです。そうすることで自分の許容限界を調べることができます』
わーお……
もっと早めに聞いておきたかったな……
『いえ、本当であれば自分で思い付くのが一番です』
【代弁するとだな、もっと早く気付けノロマ野郎! と言いたいわけだ】
『いえ、そんなことは……そのうち気が付いてくれたでしょうし……』
え、あ、うん……
心に突き刺さるお言葉で……
最近、二人に頼りすぎていました。
生意気言ってすいませんでした!!
「で、ポコよ、どうなのじゃ?」
銀鈴の声で自分の世界から引き戻される。
サーチの時間は数秒であり、細かい通路を覚えているわけではない。しかし、範囲内のダンジョンの様子をなんとなくは把握できたつもりである。
頭の中に描かれた情報には、大穴と同じくらいの広さを持つ、一際大きな空間を感知していた。
場所は大穴から真下に位置しており、通路は複雑であっても迷うことはなさそうである。
「えーと、結構な下層になりますが、大穴と同じくらいの広さの空間が存在しているようです」
「ホウ、どのくらいでそこにたどり着けそうなんだ?」
「魔物の出具合によると思いますが……上の層と同じくらいなら1週間くらいかと」
赤雷の質問にそう答えると、銀鈴も反応する。
「では前回と同じくらい踏ん張れば主に会えるということかや?」
「そこに主がいるとは限りませんが……とりあえず何かありそうな場所にはたどり着くかと」
「ふむー」
銀鈴は行き帰りの道のりを想像したようで、少し難しい顔をしていた。しかし、とりあえずでも目標地点が定まった事で納得したようである。
「では何があるか分かりませんが、そこで折り返しと決めて向かいましょう」
みんなの了解を得られ、更なる探索を続けることとなった。
地層が変われば魔物も変わる。
冒険者ギルドで聞いていた通りであった。
出現数は少なくなったもの、一匹一匹の魔物の質は格段に上がっていた。
一つ目の巨人であるサイクロプスと呼ばれる魔物が徘徊し、リビングデッドと呼ばれる魔物の死体が次々と襲ってくる。
リビングデッドの様な魔物が多く出現する場合は、強大なファルナが漂う影響だとシロが教えてくれた。
ダンジョン全体を通して、様々な魔物を見てきたが、何だかんだ段違いに強かったのはアエーラだと思う。
彼女の場合はダンジョンに棲むと言うよりは、山頂付近を縄張りとした存在なのだろうけど。
そう言えば大穴に戻るまでにも約1ヶ月かかるわけで、それまで待たせてることになるのかな……?
いや、あの時は咄嗟だったし、あんまり考えるのは止めとこう。
地層が変わってから約5日。
魔物は多かったけど集団で常に襲ってくるような魔物はいなかったので、比較的スムーズに進めたと思う。
少し厄介だったと言えば、リビングデッドはいくら倒そうが向かってくることくらいかと。
「何だか魔物が出なくなりましたね。先ほどの魔物たちの臭いもしないようです」
ガロウが様子が変わってきたことに気が付いて口にする。
「うん、後少しで目的の場所だけど、あまりこの辺りには近づいてこないみたいだね」
「ほっほっほ、ようやくですかな。流石に疲れましたぞ」
キュドがヤレヤレと疲れたことを口にするが、その表情は明るい。
「ん……む、なんじゃ……もうすぐなのかの?」
赤雷に担がれて眠っていた銀鈴が目を覚ます。
銀鈴も新しい魔物が出てきたうちは、それなりに頑張っていたのだが、2日もすると完全に飽きてしまっていた。
それからというもの、ほとんどの時間を赤雷に担がれて、ぐうぐうと眠って過ごすことになる。
寝ている間の戦闘はボクとキュドが請け負うことになる。
まあタイラントアントのように大量の魔物が押し寄せてくるわけではないので問題はなかったけど、赤雷はずっと申し訳なさそうな顔をしていた。
今歩いている通路を抜ければ、目的の広い空間へとたどり着く。
2週間も魔物との戦いに明け暮れていると自然と口数は減ってしまったが、後少しと分かると気が楽になる。
「その場所には魔物の気配はないのか?」
赤雷が目的の場所について、用心のためか聞いてくる。
少し気が抜けてしまっていたが、確かに油断してはいけないと気を引き閉め直した。
「そうですね、魔物の気配はないと思うんですけど……」
けど、と言った曖昧な答えを返してしまった。
と言うのもボクが検索しているのは空気が存在している場所である。全く動かずに息を潜めていれば分からないと言うこと。
「まあ魔法が妨害される可能性もあるわけですじゃ……どちらにしろ足を踏み入れるのは間違いない、覚悟を決めましょうて」
キュドはサーチが効かない可能性と、覚悟を決めるという言葉を皆に投げ掛けてくれる。
「どちらにしろ、か。確かにな」
赤雷はキュドの言葉に下を向き、少し笑いを含みながら呟いていた。
「さあ、そろそろですが……」
ボクの言葉に皆の言葉が再び少なくなる。
皆からもピンと張った空気が漂っており、それぞれが何があっても対応できるという状態だろう。
通路の先にボンヤリとした光が見えてくる。
目的地であり、今回の探索の終着点。
警戒しながらも足を踏み入れる。
そこには洞窟とは思えない光景が広がっていた。
そこかしこにある鉱石がキラキラとした光を放ち、洞窟の中だというのに昼間のように明るくなっている。
植物や木々が生い茂り、花が咲き、蝶が舞う。
先程まで警戒していただけに、まるで幻でも見せられているかのような気分であった。
ボクたちが立っている崖の下には、草原が広がり、部屋の中心は木々が立ち並んで森がある。
なんとも洞窟には不釣り合いな光景が眼前に存在し、暫く言葉を失ってしまっていた。
次回は大きな部屋での話になります。
できる限り早く…書きたいとは…!




