ダンジョン探索
ようやく…(・ω・`)
「ピィー!」
鷲の甲高い鳴き声が聞こえ、ボンヤリと目を覚ます。
どれくらい眠っていたのか分からないが、体感的には1~2時間くらいだと思う。
かなり大きな荷物を背負った赤雷と、程よい大きさのリュックサックを背負ったキュド、先程となにも変わっていない銀鈴がフラウの背よりおりてくる。
「おお……直前まで睡眠とは……その余裕のある行動、さすがポコ様ですじゃ」
いえ、ただ寝ていただけです。
いったいキュドの中ではボクはどんな存在になっているのか。普通に接してもらえるとありがたいのだけど。
「さてポコよ、この後はどうするのじゃ。さっそくこの洞窟に入るのかや?」
銀鈴がワクワクとした様子でボクに聞いてくる。興奮する気持ちはボクも同じではあるが、クロとシロに注意された通りダンジョン内での役割をしっかりと決めておかないといけない。
「まずはパーティ内での自分の役割を把握してから、探索へと出かけましょう」
銀鈴は「ホウホウ」と納得したような頷きを見せていた。もちろん他の者も、その意見には納得の様子である。
少しの話し合いの後、役割と配置が決定する。
パーティの先頭は赤雷。
突然の出来事に対しても対応できる実力は持っているし、少しくらいの攻撃では動じない肉体からも当然の役割だと思う。
次に銀鈴が赤雷の後ろについてもらった。
赤雷のサポートを主に行ってもらい、魔道具のランプを使ってダンジョンに明かりを照らしてもらう役割だ。
ボク一人であれば明かりのことは気にしていなかったのだが、キュドが購入してきた物を使ってもらうことにした。
ランプはファルナを注げば結構な時間、明かりが灯るとのこと。
結構お高いのでは? と思ったが、値段については触れないようにしておいた。
キュド自身は魔法で明かりを灯せるので、銀鈴に持ってもらう事に問題はないそうだ。
まあ一番の理由は、何か役割を与えないと不貞腐れそうだったからだけど……
赤雷曰く、「おそらく途中で歩きたくないと言う事が度々あるであろう」とこっそりと伝えてきた。
その際は赤雷が肩に乗せて運ぶと言っていたので位置的には赤雷の近くで、また比較的前方でダンジョンを照らしてもらうためにも、この位置が一番良いということである。
次に前から三番目を位置するのがボクとガロウ。
役割としては主にダンジョンの構造解析に周囲の索敵。
通常であれば探索をしながらに地図を描くことになるのだが、ガロウに乗っていればその場に留まる必要もないので効率が良い。
またガロウは匂いに敏感であるため、異変に気が付いた際には教えてくれるとのこと。
つまりはボク達二人で皆のサポートに力を注ぐ形となる。
もちろん戦闘となれば参加することになるが、ガロウが足となってくれることで攻撃にも集中できるわけである。
最後方ははキュドが担当する。
冒険者としても超ベテラン。S級ギルドライセンス保持者である。まあそんな事すっかり忘れていたのだけど……
一番後ろと言うのは、はぐれる可能性もあるし、背後からの奇襲を受ける可能性もある。
パーティの中でもベテランが務めるポジションだ。
問題があるとしたら年齢から来る体力面だが……本人も大丈夫だと言いつつも若干の不安はあるようだった。
しかし、万が一の時にはガロウが乗せても良いと言っていたので、その不安は払拭された。
因みにガロウは銀鈴の事は乗せる気は一切ない。
赤雷はその辺も察して自分が担ぐと言ったのだろう、流石の苦労人である。
「ところでポコよ、ダンジョンへと入る本当の目的は何なのだ?」
赤雷が他には聞こえないように尋ねてくる。
銀鈴とキュドはダンジョンを完全攻略することを前提として動いているが、もともとは二人がボクの話を聞く前に先走った事である。
確かにボクの口からは何も理由は話していない。
「あー……まあ実力試しもあったのですけど、一応は主がいるかもしれない最深部を目指そうとは考えてました」
「ホウ? あの二人が暴走しただけかと思っていたが、あながち間違いではないのだな?」
「あ、いえ……無理そうならすぐ戻る予定ですが……」
「フム、まあその予定は無くなりそうだがな」
赤雷は少し笑いながらにそう言っていた。
確かに何も成果を得ずに途中で戻るなんて選択は、あの二人を前には無くなったと考えた方が良いだろう。
しかしそうなると本当にダンジョンを攻略しないと学園に迎えないのでは? いや……今は考えるのはやめよう……
「では準備も整いましたので出発しましょう。一番に自分の命を、二番目に攻略と考えて下さい」
初めての冒険の際にロイズに言われた言葉を思い出し、入る前に皆にそう告げる。
「ハイですじゃ!」
「楽しみじゃのぅ!」
「任せておけ」
「了解しました」
それぞれの返事を聞き、皆の方を向いて頷く。
さあダンジョン攻略の始まりである。
話し合いで決まった陣形にてダンジョンの内部へと侵入する。
中は少しじめっとした冷たい空気が漂うが、外に比べて風が少なく少し暖かく感じる。
周りの壁は石と土で作られており、時折飛び出している木の根からポタリと水滴が垂れている。
自然にこのような洞窟ができるものなのかと感心してしまう。
ダンジョンの中は意外に広く、全員が並んでも余裕がある場所が多い。
このような場所が続くのであれば、探索を進めるのも比較的に楽そうである。
銀鈴の持つランプによってダンジョン内は明るく照らされており、視覚による認識にも問題はない。
ボクは敵意に対する《サーチ》を唱えて周囲を警戒し、時間をおいては空気に対する《サーチ》でダンジョンの構造を解析していた。
平面と立体での解析を、その場に応じて変えていく必要があったが、慣れてしまえば問題は無かった。
──半日程経過しただろうか、探索自体にも慣れ、最初の頃よりもペースがあがってくる。
「しかし魔物が全然おらんのぅ……」
「早く下の階層に進めて良いんじゃないんですか?」
銀鈴が赤雷の肩の上から振り向き、ボクに話しかけてくる。
銀鈴は1時間程で足が痛いと言いだし、早々に赤雷が担ぐことになっていた。
まあ歩きながら文句を言われるよりは全然良いと思う。
それよりも銀鈴が言っていること。魔物が一向に現れていない。
少し肩透かしをくらった感じではあるのだが、実はこれには理由がある。
サーチで探索している時に気付いたのだが、浅層の魔物はボクたちから離れていくような動きを見せていた。
それもそのはず、魔物はそもそも危険を察知する能力が優れている。
恐らくは赤雷やガロウの気配を感じた魔物達は、早々に逃げ去っているのだろう。
「まあ早く進めるに越したことはないのだがの。しかし、これでは退屈じゃぞ」
銀鈴は欠伸をしながらそんなことを言っていた。
「む、光……?何か見えてきましたな」
先頭を歩く赤雷が洞窟の先を見て、そう告げてくる。
銀鈴は少し表情を明るくして前を向き「なんじゃ?何があるんじゃ?」と興味深そうな声を出しながらピョコンと肩から降りていた。
「恐らくは中間地点の大穴ですじゃ」
二人の反応にキュドがそう答える。
このダンジョンに来たのはかなり昔だとは言っていたが、流石に特徴的な場所は覚えていたようだ。
「うはー! 大きな穴ですね!」
通路を抜けた先の光景に思わず声をあげてしまった。
目の前には山頂の村が入りそうなくらいの巨大な円柱状の穴が広がっている。
太陽の光がうっすらと射し込んでおり、山頂にまで繋がっているのが分かる。
大穴に沿って壁が深くえぐれており、大穴を囲むように道ができていた。かなり下にも同じようにえぐれた場所が見え、ここと同じように他の通路へと繋がっているのだろう。
「ホホウ! これは見事なものじゃのう」
銀鈴は四つん這いになり、穴の底を覗き込んでいる。
ボクも軽く覗いてみたが底は暗く、どこまで続いているかはわからない。
【フム……この円柱状の穴、等間隔に削り取られた壁、見覚えがあるな】
え、何々?
なにやら意味深な事を言ってませんか?
『この特徴的な作り、地に属する竜の住みかで間違いなさそうですね』
あー、そういう話ですか。
やっぱりダンジョンの主はドラゴンってことですかね。
【しかもこの大きさ、創生の古竜クラスだな】
え……なにそれ?
聞いたこと無い話ですけど……
『ポコも小さなとき創世と創生については聞いたことがあるでしょう?』
うん。教会で育ったボクには、小さなころから馴染みのある話だね。
教会の教えの中で伝わる創世は、創世三神である地のアルメド神、空のヘリオス神、海のポロニア神によって、陸・空・海が作られ、世界自体が誕生した事を指している。
これに続くのが創生であり、精霊や天使などを女神エスセリアが、動物などの生き物を男神アヌマが、植物を女神ププロアが作り出すと言う話だ。
だがこの創生の中に竜と言う言葉を聞いたことが無い。
まあボクもおとぎ話の様に聞いていたので、そこまで詳しい話まで知っているわけではないのだけど。
まあ竜も動物なのだから男神アヌマが作り出すことになるのかな?
【違うな。竜は創世三神によって、それぞれの領域を監視する者として創られておる。その中でも創生の段階で生み出された竜達を古竜と呼ぶのだ】
へぇーそうなんだぁ……って、ちょっと話が大きすぎません?
そんなレベルの竜が初めてのダンジョンにいるかもしれないなんて……ボクには重すぎる内容なんですけど……
【勘違いするでない。ここが住処であったというだけで、今も住んでいるとは限らんだろうが】
あー……ごもっともな話です。
いつ住んでいたかは分からないけど、大昔から生きている竜が一度も引っ越ししていないってことはないよね。
今も住んでいるかもしれないけど、他の魔物が住み着いている可能性の方が高いかもな。
銀鈴が身を乗り出して穴を覗いているのを見て、キュドが口を開く。
「あまり身を乗り出すと危ないですぞ?」
「む? 何が危ないのじゃ? 流石に落ちはせんぞ?」
銀鈴が反応した瞬間、ギィィ! と言った多数の鳴き声が反響して聴こえてくる。
「お、なんじゃ? 何か棲んでおるのかえ?」
銀鈴が身を引くでもなくキョロキョロと大穴の中を見回していた。
「姫様、取り敢えず穴から放れてください」
赤雷の注意に「おお、そうか」と気が付いたかのように壁際まで下がってくる。
「確か鳥や蜘蛛の魔物の棲みかになっているんでしたっけ?」
「そうですじゃ、気付かれると一斉に襲ってきますぞ」
あらやだ! そんな習性があるんですか!
そんな事までは聞いてなかったなぁ。
「じゃあ出来るだけ静かに反対側までいかなくちゃいけないんですかね?」
「イエイエ、侵入した事はわかるでしょうが、音の反響で何処にいるかはわからぬでしょうな」
なるほど。
まあ、できる限り静かにするのに越したことはないだろうけど。
「のうポコよ。ここを降りれば一気に短縮できるんじゃないかのう?」
「イヤイヤ! 襲われるのが目に見えてるじゃないですか」
銀鈴の言葉に慌てて反応する。
まあ誰しもが考えうる内容なのだが、銀鈴が言い出すと本当に実行しそうで怖いものである。
「しかしポコであれば、その辺の魔物など一掃できるであろう?」
その言葉を聞いてキュドが片方の眉毛をあげて、ハッとした様な表情をする。
「フムっ!……銀鈴様の言うことも一理ありますな」
あれ? この人たちは何を言い出しているのだろう。
別にボクは自ら好んで殺戮を犯すような人物じゃないはずなんですけど。
【ククク……穴の底が最下層と言うわけでもないが、相当な短縮になるであろうな】
オ、オイ、やめろよ!
【しかし学園の事を考えたらできる限り早く探索は終えたいのではないか?】
いやまあそうではあるけど……
無理をしてまでとは考えていませんよ?
「ワタシはポコ様に従います。穴の底からは魔物の濃い匂いが漂っていますので、ご注意していただければと」
ガロウは気付いている事を教えてくれたのだが、既に前提が穴を降りることになっている気がする。
残るは赤雷だけであるが、目が合うと片方の口角を上げてフッと笑っているようだった。
ボクが二人を説得できるのであればそれでいいんじゃないか。そういっている様にも思えた。
「あのですね、ボクはそんなに好んで命を奪おうとは思わないのですが……」
「フムゥ? では命を奪わない程度にすませればいいのではないのかや?」
銀鈴は何が問題なのかと言わんばかりである。確かにそんな手立てがないわけでない。
「いやまあ……それに帰りの道のりが……壁を上る訳にも行きませんし……」
「お任せくだされ! 浮遊魔法なら得意ですぞ!」
「そうですか……でもダンジョンのお宝探しなんかも醍醐味の一つじゃ……」
「浅層は調べ尽くされていますゆえ、むしろ深層に行ってからの方が可能性はあかるとおもうのですじゃ」
「なるほど……」
キュドの言葉に納得させられてしまった。
そんな様子を見て赤雷がクックッと笑っている。
なんだかな。
なんでここを降りちゃいけないのか分からなくなってきたぞ?
別に自分達の命の無事が確保できるなら問題ないんだよね?
【ククク、こりゃ決定のようだな】
『まあ良いのでは無いですか?新しい魔法を使えば襲われようが問題ないと思いますよ?』
!?
流石シロさん!
《デリートアタック》のことですね!
確かに攻撃を無効にしてしまえば、いくら襲われようとも関係ないですね。
シロの一言で大穴をそのまま下に降りることが決定する。
「では穴を降りていきましょう」
「おお! 流石は妾のポコじゃ!」
いえ、銀鈴のものになった覚えはございません。
「キュドさん、浮遊魔法で全員を穴の下までおろすことは可能ですか?」
「もちろんですじゃ!」
「ではボクは攻撃無効魔法を皆さんにかけますので、後をよろしくお願いいたします」
そう言うとキュドは両方の眉毛を上にあげ、目を見開いたような表情を見せる。
「こ、攻撃無効ですか? 防護魔法ではなく?」
「えーと、厳密には少し違うのですが……まあ攻撃は受けなくなると思います」
「おおぉ……流石はポコ様ですじゃ……」
毎度お馴染みであるが、両手を合わせて拝まれてしまう。
銀鈴は何故だか得意気な顔をして胸をはっていた。
そんな二人は置いといて、取り敢えず《デリートアタック》を一人一人へと唱えていく。
全員が薄い透明な膜に包まれ準備は完了である。
赤雷が身体を見回して、特に変化が見られないことが気になるようだった。
「疑うわけではないが……本当に大丈夫なのか?」
「なんじゃ赤雷、妾のポコを信じられんと申すのか?」
いえ、だから銀鈴のものになった記憶はありません。
「では、その辺の石を思いっきりボクに投げつけてもらえますか?」
「本当にいいのか? 本気で投げるぞ?」
赤雷は足下の石を拾い上げて確認する。
ボクが大丈夫だと頷くと、振りかぶって思いきり投げつけてくる。
ゴウっ! と空気の層を突き抜けるような音が聞こえたかと思うと、ジュルッ! という音と共に石が消え去る。
「……ホントに遠慮がないですね」
「これはスゴいな……」
赤雷が感嘆の声をあげる。
「さ、流石はポコ様ですじゃ……」
キュドは声を震わせながら、感動しているかのように拝んでいた。放っておけば、そのままずっと拝んでいそうである。
「えっと……キュドさん、下までお願いします」
「あ、ハイ! そうでしたな。ではワタシの周りに集まってくだされ」
気がついたかのように顔をあげると、皆を自分の周囲へと集めて懐からモソモソと魔法書を取り出す。
パラパラとページを捲ったのち、右手をかざしてファルナを込めると、キュドを中心に球状の空間が広がる。
ボクたちを包み込んだ空間はフワリと浮き上がり、ゆっくりと大穴の方へと移動し始めた。
へー、これで自由に動かせるとなると便利なものだよね。
構築が色々と大変そうではあるけど……
【ホウ? 重力魔法による浮遊とは珍しいな】
重力魔法と聞くと嫌なヒトを思い出すな……
って珍しいってことは浮遊魔法でも色々あるってこと?
『そうですね、ただでさえ扱いの難しい浮遊魔法ですが、一般的には自然系統の風魔法によるものが多いと思います。』
扱いが難しい……?
魔方陣だったらそんなに難しく無いんじゃないの?
『そんな事はありませんよ。自動で動くように構築されているなら良いですが、自分で動かすとなるとそうは行きません』
【ウム、お前の《デリジョンボール》も発動した後に操作するであろう?】
ああ、なるほど……
でもそんなに難しいとは……
『浮遊魔法の場合では魔法と対象を同時に動かさねばなりません。それに魔方陣を介して操作する場合では常にファルナを送って操作することになるのです』
【とにかくお前のように単純ではないってことだな】
オオウ……なんだかイライラさせてしまったようで。
ものわかりが悪くてすいません……
僕らを包んだ空間は大穴の下へとゆっくりと降りていく。
「ホホウ、これは便利なものじゃのぅ」
「姫様、少しはしたないですよ」
銀鈴が四つん這いになるような格好で、下を見ながらにはしゃいでいた。
「足元が無いというのは落ち着かないものですね……」
ガロウは尻尾を股の間に挟み込み、少し縮こまっているように見えた。
ギィー!
グァィー!
下に降り初めて5分程だろうか。鳥の声が響き渡り、次第にその数を増やしていく。
声の方を見ると、目が赤く、体長1mはありそうなカラスにも似た鳥が集まっていた。
バサバサと群れをなし、まるで黒い雲のようにボクたちの上方を埋め尽くす。
【ヘルクロウだな、集団で対象に襲いかかる凶暴な連中だ】
『抵抗しなければものの数分で骨となるでしょうね』
あらやだ……見た目と違って結構おっかないんですね……
まあ普通のカラスも集団だと危ないことはあるけども。
「こりゃまた大軍だな」
赤雷が上を見上げて、少し笑いながらにそう言っていた。
ざっと見る限りでも200は越えているだろうか?
大穴を降りるのは止めたほうがいいと言うのも頷ける。
「む、そろそろくるようですぞ?」
キュドは浮遊魔法に集中しながらも、周りを見る余裕は十分にあるようで、上を見ながらそんな事を言ってくる。
3匹が上方より急降下し、そのまま嘴をボクたちに向けて突っ込んでくる。
しかし、ボク達を包み込んだ空間に浸入したとたんに失速し、戸惑いながら離れていく。
「ホッホッ、この空間は重力魔法によるもの。中に入れば重力方向の違いに混乱するでしょうな」
何が起きたのかと思ったが、キュドが笑いながら説明してくれた。
なるほど、最初から中にいればそこまで気にならないけど、スピードに乗って突然に中に入ってくれば戸惑うのも納得である。
ギャッギャッ!
クァー!
「むっ、手を変えてくるようだぞ」
赤雷が様子が変わったことに気が付き、少し身構える。
先程の3匹の様子を見て、勢いに乗って突撃する事に意味がないと悟ったのか、ゆっくりと距離を縮めるように周囲に集まってくる。
「ムゥ、邪魔じゃのぅ。これでは周りが見えないではないか……」
全方向にヘルクロウが飛び交い、先程まで下を見ていた銀鈴が鬱陶しそうな声をあげる。
うーん、本当であればそんな場合ではないと思うのだけど……
相変わらずマイペースなものである。
クァックァッ!
ギギャー!
何匹かの鳴き声に合わせて、周囲を飛んでいたヘルクロウ達が一斉に押し寄せ、嘴や爪で襲いかかってきた。
ジュルッ……
ギギャー!
ギャギャ!
ボク達に攻撃を加えた部位が消滅し、苦しそうな声をあげ、ヘルクロウ達は離散する。そのまま下に墜ちていく者も数引き見られる。
警戒をしているのか、先程より距離をとって騒がしく鳴いているが、ボクたちの周りから離れる気配は見られない。
「うーむ、諦めの悪いやつらじゃのう」
「まあ奴等では何も出来ないでしょう……な?」
銀鈴の言葉に、赤雷が相づちをうっていたが、ヘルクロウ達の様子の変化に語尾を曇らせる。
一斉にクァークァークァーと鳴き始めたかと思うと、上方を空けるように飛びかたを変え、半分ほどは大穴の壁際や木の根などに止まりはじめた。
「これはいったい……何がおきてるんですかね?」
「ポコ様、上方より濃い魔物の臭いが近づいてきます」
ボクの疑問に答えるように、ガロウが上方を凝視する。
逆光で影しか見えないが、鳥のようでもあり、人のようにも思える3つの影がゆっくりと降りてくる。
「我等の領域にて、シモベを騒がせているのはお前達か」
近づいてきたことでハッキリとその姿が確認できる。
人の言葉を話すその者の姿は、顔と上半身は若い女性の姿をしている。
手は鷲の様な大きな翼となり、胸と下半身は羽毛に包まれ、足の先には大きな鈎爪が見える。
本や話で聞いたことのあるハーピー。そのままの姿であった。
次回はハーピーさんとのやり取りからとなります。




