第2話「最初の魔物」
「ところで、リリア」
リリアが一通りの説明を終えたところで、ディリュージアが口を開く。
「なんでしょう、魔王様」
「お漏らしさせる、と言っても、こちらから尿意に干渉することなんてできるのか?」
リリアは静かに微笑んだ。
「それについてですが、まずはこの世界における魔力と尿意の関係について説明させていただきます。この世界では、世界に漂う魔力──人間たちの言葉では『マナ』と呼ぶようですが──を吸収して魔法を唱えるのですが、そうして魔力を発揮したマナの残りかすが、人間たちの体内で老廃物と同じように処理され、おしっことして排出されるのです。つまり、魔法を多用すればするほど、体内に蓄積されたマナの残りかすがおしっことなり、尿意を催しやすくなるのです」
「ほう、なるほど」
「そして、魔王軍の力であれば、その仕組みを悪用し、漂うマナを強制的に対象のおしっこに変換することが可能なのです。言うなれば『尿意を急激に高める魔法』が使えるという訳ですね」
ディリュージアは興味深そうに目を細めた。
「そんなことが、本当にできるのか?」
「でしたら、ぜひ私でお試しください」
リリアは一歩前に出ると、余裕の表情を崩さないまま両手を広げた。
ディリュージアは杖を掲げ、リリアを見つめながら魔力を集中させる。
『アクア・プレス』
ディリュージアがそう呟くと、杖の先から淡い光がリリアの下腹部へと伸びた。リリアは一瞬目を細めたが、すぐにいつもの冷静な微笑みに戻る。
「……お上手でございます、魔王様。私の尿意が、明確に普段とは違う、異常な速度で高まっているのを感じます」
「なるほど、こんな感じか」
ディリュージアが満足そうにそう呟くと、リリアは「少し、席を外します」と言い、トイレに向かった。
「気を取り直して、この能力を持った魔物を生み出すのが最初の一手としてよろしいかと」
トイレから戻ってきたリリアがディリュージアに提案する。
「それじゃあ、どんな魔物にしようか」
「それでしたら、スライム型の魔物はいかかでしょう? 単純で、異質さもなく、警戒されにくい。なにより、生み出すために必要な魔力が単純ゆえに軽く、数も増やしやすいですから」
ディリュージアは深く頷く。
「それで行こう」
「承知いたしました。すぐに実験用の試作体を準備させていただきます」
リリアは嬉しそうに目を細め、魔方陣の部屋へと入っていった。
数時間後。
「こちらがスライム型の魔物の試作体でございます」
リリアが運んできた箱から、半透明な淡い黄色で、内部で小さな魔力の粒が淡く光っているスライム型の魔物が飛び出す。
「これが試作体か」
「はい、尿意増幅魔法を付与したスライム、言うなれば『ピスライム』でしょうか」
「ずいぶん安直な名前だな」
「分かりやすさが重要かと」
リリアは悪戯っぽく微笑み、また話し始める。
「黄色い身体でおしっこを連想させるうえに、普通のスライムの青色とも、毒を放つスライムの緑色の身体とも違う、新しいスライム型の魔物ですわ」
そう言って、リリアが手を鳴らす。
すると、魔族の兵士たちが1人の年頃の少女を連れてきた。
「リリア様。ご命令の通り、近くの村の娘を確保してまいりました」
「ご苦労。彼女が逃げないように見張っておきなさい」
兵士たちはリリアとディリュージアに敬礼すると、出入り口の前を塞ぐように移動した。
「リリア、いつの間に……」
「実験台でございます。魔王様、いつでもピスライムにご命令を」
実験台として連れてこられた少女は、不安そうに怯えた目で周囲を見回している。
「……あのあのっ、私は一体、何をされるのですか……?」
「なに、こいつの実験台になってもらうだけだ。ピスライム、お前の力を見せてみろ」
ディリュージアはそう言って、杖でピスライムをちょん、と押す。
促されるように前に出たピスライムは少女を攻撃対象として認識すると、少女に向けて飛びかかる。
「きゃっ……!」
咄嗟に両手で顔を覆う少女。その腕にぶつかったピスライムの体内から魔力の粒が飛び出し、少女の下腹部へと吸収された。
次の瞬間、少女の表情が変わった。
「……っ!? な、なに……これ……?」
少女の下腹部に、急激な熱さと内側からの圧迫感が伝わる。先ほどまで何ともなかったはずの尿意が、みるみるうちに強くなっていく。
「う、嘘っ……なんで、急に……! お腹が、熱い……っ!」
少女は下腹部を押さえ、内股になって尿意に耐えようとする。顔は赤くなり、額に汗が浮かぶ。
「やめて……っ! こんな……急に……っ!」
両手で股を押さえ、急激に高まる内圧を押さえ込もうとする少女。
それでも、尿意は収まるどころか、波のように強くなっていく。
お腹が熱く、重い。
そして、はっきりと「出したい」という欲求が少女を襲う。
「トイレ……行きたいっ……!」
ピスライムが再び少女に飛びつく。
「ひゃうっ……!?」
少女の下腹部の圧が一段と跳ね上がり、膀胱が軋むような感覚が走る。膝は震え、股を押さえる手の周りにはおしっこが染み始めた。
「だめ……もう……出ちゃう……っ!」
少女は必死に耐えていたが、やがて我慢の限界が訪れる。
じゅじゅっ、じゅぅぅぅぅぅぅぅ
「あっあっ、だ、だめぇっ……!」
短い悲鳴とともに、彼女のハーフパンツの染みが一気に広がり、細い脚を伝っておしっこが床へと流れ落ちる。ぴちゃぴちゃと床におしっこが落ちる音が、玉座の間に響く。
「や、やだぁっ……出てるぅっ……おしっこ、出ちゃってるっ……」
少女はなんとかおしっこを止めようとするが、一度緩んだ少女の括約筋は、高まった尿意と「出したい」という欲望のままに、彼女の下腹部に溜まっている熱い液体を吐き出し続ける。 床には小さな水たまりができ、少女はその上にへたり込んだ。
「……はぁっ、はぁっ……お漏らししちゃった……恥ずかしい……」
ピスライムは少女のおしっこに反応するように、水溜まりの周りをぴょこぴょこと跳ねた。
それは、まるで自分の手柄を誇示するように。
顔を真っ赤にしてすすり泣く少女に、リリアが歩み寄る。
「あなたはあくまでも実験体ですから、今日はこの程度にしておきますわ。これ以上のことをされたくなければ、くれぐれも今日のことは口外しないことね」
そう言って、リリアは思考操作魔法で彼女のお漏らしの記憶を消し、兵士たちに少女を村へ帰すように命令した。
「魔王様、ピスライムの戦いぶり、いかがだったでしょうか」
「尿意を高め、我慢を破綻させる。効果は充分だな」
ディリュージアは満足そうに腕を組む。
「効果が出るのも早いな。接触してから、あっという間に限界まで持っていった」
「はい。魔法耐性が低い者には特に有効でしょう。今回の娘のように、最低限の魔力耐性しかないような者であれば、あっという間に崩せますわ」
リリアも、満足げに頷く。
「もちろん、女騎士や魔法使いなどとなれば、魔力耐性の高い者もおりますから、今回のようにいかないこともあるかと思われます」
「もちろん、そんな簡単にはいかないことは分かってる。だが、何もこのピスライムだけで女騎士たちをお漏らしさせようとは考えていないからな。今はまだ、これくらいで充分だろう」
ディリュージアがそう言うと、リリアは安心したように小さなため息をついた。
「分かりました。でしたら、このまま数を増やし、戦場に投下してしまいましょうか……ふふっ、女騎士や魔法使いたちが、見慣れているはずのスライムに尿意で苦しめられる姿……楽しみです」
「ああ、『お漏らし』を武器とする魔王として、俺も楽しみだ」
ディリュージアは口角を上げ、水溜まりの周りで跳ねているピスライムを抱き上げる。
「それでは……ピスライムを戦場に放つ準備を、整えさせていただきます」
リリアは深々と頭を下げ、ディリュージアからピスライムの試作体を受け取り、再び魔方陣の部屋へと消えていった。
「ふっ……魔王らしく、面白くなってきたな……」
玉座の間にまだ残る少女のおしっこの匂い。ディリュージアはそれを感じながら、静かに笑った。
こうして、ディリュージアによる『お漏らし』侵攻作戦は最初の一歩を踏み出した。




