1周年記念SS その5 朽木聖夜の失敗
1周年記念SS 第5弾は聖夜君です
「今回の件は無かったことに・・・」
今日で30回目の見合いが不成立に終わった。
「お兄ちゃん・・・」
母の目が冷たい。父は半笑いだ。一族の婚姻をありとあらゆる伝手と権力で取り仕切る見合いババアの朽木恵美さんは、深いため息を吐いた。
「聖夜さん、わざとじゃないでしょうね?」
と、きりっとして言われたが、それは流石に冤罪だ。私は一度たりとも見合いを不成立にさせようと思ったことはない。実際、すでに30連敗。全てあちらからお断りされているのだ。
「聖夜さんなら楽勝だと思ってたんですけどね」
恵美さんの苦悩はもっともだ。私だって、もうとっくに結婚していると思っていた。
料理人というジョブを得た割に私には見合いの話は多かった。血筋は悪くないのだし、ジョブのしょぼさは目を瞑ってもいいという分家のお嬢さんたちや、他の蔵持ちの血筋の令嬢など、それなりの家からの釣り書きがきたのは、一重に「顔」である。
いや、私も流石に上には上がいるということは知っているが、それでもそれなりに見られる顔なのは確かだ。それに、金も持ってるし、学もある。ジョブで貢献できないのだから、せめて結婚で朽木の家に貢献しようと思っていたのだが、こうも失敗続きだと地味に凹む。
さらに、ジョブがしょぼいのは間違いで、料理人は結構かなり使えるジョブだったということがわかり、最近の私はとうとうAランクだ。こうなると、蔵関係でも傍系ではなく本家筋のお嬢さんやら、財界系のトップクラスの令嬢やらからも申し込みがひっきりなしだったのだが、流石にこうも断られ続けると徐々に減ってきた。
まずい、このままだと結婚できない。涼しい顔で座っているが、内心かなり焦っていた。
「誰かいい人がいるんじゃないの?」
母の言葉に場の空気が凍りついた。
「え?」
私は驚嘆のあまり固まる。
「ええ?!それならもっと早くに言ってくださいよ」
と恵美さんが抗議の声を上げるが、私は慌てて首を振った。
「いませんよ、そんなの。そもそも女性と付き合ったこともないですし」
「え?」
私の回答にその場の全員が凍りついた。
「お兄ちゃん、ガールフレンドとか彼女とかいなかったの?」
母の声が上擦っている。バレンタインは山ほどチョコレート持って帰ってきたじゃないと言われてもそこから発展したことはない。
「お前、その顔で一人もってことはないだろう」
とは父の言葉だ。胡乱な目で見られてもいないものはいない。
「流石に時間がなさすぎました。女性に構っている時間が惜しかったので。どうせ、見合いで決まるのなら恋愛する時間は不要でしょ?」
と私が告げると、その場の全員は天を仰いだ。
「真面目だ真面目だとは思っていたが、厄介な恋愛音痴がここにもいたか」
とため息をついたのが前当主の巌さんだ。失礼な。私は恋愛音痴ではない。恋愛不要論者だということを説明したが、誰も納得してくれなかった。
「なんとなく見合いがうまくいかなかった理由がわかったわね」
母の深いため息を最後に、その場はお開きになった。
「うーん」
道場で修行しながら私は眉を寄せていた。このままでは結婚できない気がする。三連の突きを繰り返しながら、私は悩んでいた。
正直なところすごく結婚したいかと言われればそうでもない。ただ、家の為に結婚するのが至上だと思っていたから見合いをしているだけなのだが。相手は誰でもいいし、誰と結婚しても誠実に相手を尊重して良い家庭を築ける自信があるのだが。ため息が自然ともれる。
「上手くいかないもんだな」
「その姿勢がよくないんだと思うけど」
と不意に背後から言われて飛び上がった。
「瑞稀さん!」
本家の長女、瑞稀さんが不満そうに立っていた。
「誰でもいいなんて思われている人と結婚とかありえないでしょ」
どうやら私の独り言は口に出ていたらしい。
「見合いなんだからそういうものじゃないですか?」
と私が言うと彼女はマズい食べ物を口にしたように顔を歪めた。
「え?正気で言ってる?そりゃ最初はそうだけど、二度、三度会う間にこの人ならって思うから結婚するんじゃない。それが、二度目も三度目も誰でもいいから結婚しましょうって姿勢でこられたら嫌になるに決まってるわ」
と彼女の指摘に私は愕然とした。
「え?そ、そういうもんなんですか?」
「当たり前でしょ!見合いは相手の条件が最初にわかってるってだけで、そこから発展させるのは普通の男女の仲と同じでしょうよ」
と彼女は何故かひどく不機嫌そうに言った。
「瑞稀さんは、先生に粉かけてましたけど」
「五月蝿いわね。あれは、好きな人とは結婚できないってわかってたから、次は彼より条件の良さそうな男にしようと思っただけよ。まあ、向こうはさっぱり眼中になかったけど!」
「へえ、そうなんですか」
私はてっきり神崎先生に一目惚れでもしたのかと思っていた。瑞稀さんと神崎先生ならお似合いだと思ったのだが、相手が霧崎桜子では瑞稀さんでも流石に分が悪いか。私がよそごとを考えていると、彼女は鬼の形相になって
「やっぱり、あんたなんか嫌いよ!バカ!」
と叫んで道場を出て行ってしまった。
「でも、有用なアドバイスが聞けた。次の見合いでは誰でもいい感を出さないようにしよう」
うんうんと私は納得したが、それ以来ぱったりと見合いの話がなくなってしまった。
「やっぱり30連敗なので、ほとぼり冷めるまでしばらく待機ですかね」
と私が母に尋ねると、彼女はひどく微妙な顔をして笑って誤魔化した。
道場でのやりとりを見ていた遊馬が恵美さんのところに「瑞稀姉ちゃんが聖夜兄ちゃんのことが好きだから見合いはやめてあげてほしい」と直談判に行ったのを、私が知ったのはだいぶ先のことである。
リクエスト企画ラストは「聖夜くん好きなので聖夜くんの努力の話」ということで、聖夜君の努力の話でした。若干お求めのものと違ったらごめんなさいですヽ(;▽;)ノ
いや、第二弾も聖夜君関連だったのでちょっとテイストを楽しい方に持っていこーかなーと。
瑞稀さんと聖夜くんは蔵があった時は血筋を増やすために結婚できない状況だったのですが、今は可能です。ただし、聖夜君はまったく気がついておりません。というか、元々対象外だったので、今も対象外だと思っております。
瑞稀さんはずっと聖夜が好きでしたが、血縁なことと、ジョブの問題で結婚は本家としては不可だったのでずっと気持ちを堪えていました。これは、本当は本編でいれたかったシチュエーションだったのですが、文字数や話数の関係でさくっと削除しちゃいました。瑞稀さん出た消えたになっちゃった。
あと「主人公周りの恋愛話」とあったのですが、第一弾にも書いておりますので・・・あっ、お名前入れてないヽ(;▽;)ノすいません。入れてきます!
はるひな様リクエストありがとうございました。
以上リクエスト大会でございました。
なかなか面白いお題がくるのでまたいつか機会がございましたらやりますねー




