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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
深果都市フリッス編

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臨戦

暗い森の奥深く。


湿った空気が漂う洞窟の中で、パチパチと薪の爆ぜる音だけが響いていた。


赤く揺れる焚き火。


その周囲には五つの黒い影が座っている。


全員が深くフードを被り、顔は見えない。


やがて、そのうち三人が静かにフードを外した。


現れたのは、ルカ、ユイ、そしてレオンだった。


焚き火の火が三人の顔を赤く照らす。


ルカがため息混じりに口を開いた。


「……ソラはいなかったわね」


その目には焦りが滲んでいる。


「一体どこにいるのかしら」


するとユイが静かに頷いた。


「うん……早く見つけないと」


「間に合わなくなる」


その言葉に、空気がさらに重くなる。


レオンは無言のまま、手に持った木の枝で焚き火を突いた。


火花が舞う。


そして前屈みのまま、低い声で呟く。


「早く見つけて――」


その表情が曇る。


「殺さなければ」


その言葉。


だが誰一人驚かなかった。


否定もしない。


ただ静かに頷くだけだった。


その瞬間。


ふっ――と風が吹き抜ける。


焚き火の炎が揺れ。


次の瞬間、完全に消えた。


洞窟が闇に包まれる。


全員が反射的に立ち上がった。


視線が一斉に洞窟の入り口へ向く。


そこには、一つの人影。


五人は即座にフードを被り直し、臨戦体勢へ移行する。


空気が張り詰める。


レオンが低く呟いた。


「……厄介な奴に目をつけられたか」


その時。


雲の隙間から差し込んだ月明かりが、人影の顔を照らした。


そこにいたのは。


ニコリと笑みを浮かべるアバンだった。


「やあ」


軽い調子。


だが、その場の誰も油断していない。


「この間はやってくれたね」


その瞬間。


レオンだけでなく、ルカ、ユイ、残り二人の額にも冷や汗が浮かぶ。


すると。


アバンの後ろからもう一つ影が現れる。


ソラだった。


それを見た瞬間。


レオンの姿が消えた。


「っ!?」


ソラが反応する間もない。


次の瞬間には目の前。


レオンが剣を振り下ろしていた。


ソラは咄嗟に『式眼』を発動。


視界が加速する。


ギリギリでその刃を躱す。


しかし。


「甘い」


ドゴッ!!


腹部へ強烈な蹴りが叩き込まれる。


肺の空気が一気に吐き出され、ソラの身体が吹き飛んだ。


木々を薙ぎ倒しながら地面を転がる。


その様子を一瞥したアバン。


だが、その隙を四人は逃さない。


ユイ。


ルカ。


残り二人。


四人が一斉にアバンの懐へ飛び込む。


同時展開される魔法陣。


炎。


雷。


氷。


闇。


複数属性の魔法が一斉に放たれる。


しかし。


「おっと」


アバンは笑みを崩さない。


まるで散歩でもしているかのような軽やかな動きで全てを回避する。


魔法が地面を穿つ。


木々が吹き飛ぶ。


だが、一発も当たらない。


その最中。


アバンの目が細められた。


「……なるほどね」


何かに気づいたような表情。


一方その頃。


吹き飛ばされたソラは地面を滑りながら体勢を立て直していた。


息が苦しい。


速い。


以前のレオンとは比べ物にならない。


その時。


背後から殺気。


ソラは反射的に振り向く。


キィン!!


甲高い金属音。


飛んできた剣筋を間一髪で弾く。


勢いで互いに距離が離れる。


レオンが目を見開いた。


「……その剣、いつ出した?」


ソラの手には白銀の霊剣。


実は吹き飛ばされた瞬間、右目の中にいるイリーナに出してもらっていた。


だが、イリーナ自身はまだ姿を現さない。


何か理由があるのだろう。


レオンは小さく舌打ちすると、そのまま草むらへ飛び込んだ。


ガサガサッ!!


周囲の草が揺れる。


右。


左。


後ろ。


どこから来るか分からない。


ソラは『式眼』を発動。


全方向へ意識を集中する。


そして。


一瞬。


右側の草が僅かに揺れた。


「そこっ!」


ガキィン!!


飛び出してきたレオンの剣を受け止める。


火花が散る。


そこから始まる高速戦闘。


剣が交わる音。


地面を蹴る音。


木々を裂く音。


全てが連続して響く。


速い。


速すぎる。


『式眼』を使ってなお、ギリギリ捉えられる速度。


かつてのレオンとは別人だった。


二人の動きは、もはや普通の人間には認識すらできない領域へ達していた。


そして。


ソラが着地した瞬間。


グッ――


足元が沈む。


「っ!?」


地面の窪みに足を取られ、体勢が崩れる。


レオンはその隙を逃さなかった。


「終わりだ」


振り下ろされる刃。


ソラの首を捉えた――


その瞬間。


カキィン!!


甲高い音と共に、レオンの剣が弾き飛ばされた。


「!?」


ソラが目を見開く。


地面に刺さっていたのは、小さなナイフほどの剣。


飛んできた方向を見る。


暗闇の中。


青い光が輝いていた。


そこに立っていた人影が、静かに口を開く。


「――術式破綻」


その言葉が響いた瞬間。


目の前の“レオン”の姿が崩れ始めた。


ノイズのように歪み。


外側が剥がれ落ちる。


その内側から現れたのは――全く別の男。


知らない顔だった。


男は舌打ちする。


「チッ……」


そしてゆっくり視線を向ける。


草むらの奥から現れたのは。


青い魔法陣を展開したユイだった。

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