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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
深果都市フリッス編

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67/73

試始

の裏から外へ出たソラは、まだ残る違和感を抱えたまま空を見上げた。


明るい。


完全に朝だった。


「……なんでだ」


小さく呟くと、隣でアシュベルがひょいと顔を出す。


「時間の流れが違うのよ」


あっさりと言った。


「精霊の巣窟の中は、現実の大体10分の1くらいの時間で進むの」


ソラは眉をひそめる。


「……じゃあ、さっきのは」


「1時間くらいでしょ?」


アシュベルが指を折る。


「現実だと、だいたい10時間」


ソラは息を吐いた。


(だから夜が明けてるのか……)


納得はできる。


だが、やはり常識から外れている。


そんなソラを見て、アシュベルが腕を組む。


「あと、ひとつ」


「アシュベルって呼び方、やめて」


ソラが視線を向ける。


「イリーナでいいわ」


少しだけ照れたように言う。


「そっちが名前だから」


「……分かった、イリーナ」


素直に頷く。


すると、イリーナは満足そうに小さく笑った。



店の方へ戻る。


すると――


「……!」


数人の影が見えた。


イナミたちだ。


だが、様子がおかしい。


落ち着きがない。


周囲を見回し、何かを探している。


その中で。


イナミが、こちらに気づいた。


一瞬、固まる。


そして――


「ソラ!!」


全力で駆けてきた。


勢いのまま肩を掴まれる。


「お前どこ行ってたんだよ!!」


息を切らしながら言う。


その表情には、明らかな焦りが残っていた。


「夜出てったきり、戻ってこねぇから……!」


言葉が詰まる。


「先生とかロストさんも探してたんだぞ!?」


ソラは一瞬、言葉に詰まる。


「……悪い」


短く謝る。


その時。


「ソラ!」


ドミニクの声。


後ろから、ハバープルとロストを連れて走ってきた。


「無事か」


ハバープルの声は落ち着いているが、わずかに安堵が混じっている。


ロストも真剣な目でソラを見ていた。


ソラは軽く頭を下げる。


「心配かけてすみません」


そして。


一息置いてから――


「……説明します」



ソラは、滝の裏の洞窟。


精霊の巣窟。


そして、試練のこと。


すべてを話した。


誰も口を挟まない。


ただ、静かに聞いている。


話し終えた時。


空気が、少しだけ重くなった。


その瞬間。


ソラの横に――


魔法陣が展開された。


淡い光。


キラキラとした粒子。


そこから、ふわっと現れる影。


「よいしょっと」


軽い声と共に現れたのは、イリーナだった。


イナミが目を見開く。


「なっ……!?」


ドミニクも驚く。


ロストは――


明らかに反応が違った。


「……精霊、だと」


低く呟く。


その目は、強い興味と驚愕に満ちていた。


ソラは一歩前に出る。


「こいつが、イリーナ」


「精霊族です」


イリーナは軽く手を振る。


「どうもー」


軽い。


場の空気と合っていない。


ロストがゆっくり口を開く。


「精霊の巣窟に招かれる人間は……極めて少ない」


視線をソラに向ける。


「詳細も、ほとんど記録に残っていない」


静かに言う。


「非常に貴重な事例だ」


ハバープルは少し考えた後、頷いた。


「……一度、宿に戻りましょう」


「ここで話す内容ではありません」


全員がそれに従った。



宿。


荷物を置き、小さな会議用の部屋へ移動する。


扉が閉まる。


外の喧騒が遮断される。


ハバープルが前に立つ。


「状況は理解しました」


そして、ソラを見る。


「精霊の試練」


一拍。


「これをどう進めるか、ですね」


ロストが腕を組む。


「これはむしろ好機でしょう」


静かに言う。


「通常の体験学習よりも、得るものは大きい」


ハバープルは頷いた。


「同意します」


そして、生徒たちを見る。


「イナミ、ドミニク、レア、アイラ、ソラ」


「この班は予定を変更し――」


一呼吸。


「“精霊の試練の攻略”を目的とします」


イナミがニヤッと笑う。


「お、面白くなってきたな」


ドミニクも静かに頷く。


レアは何も言わないが、視線はしっかり前を向いていた。


アイラは少し緊張しつつも頷く。


ロストが続ける。


「引率として、専門家を一人つけます」


そう言って、扉の方へ視線を向ける。


コンコン。


ノック音。


「どうぞ」


扉が開く。


入ってきたのは、一人の男。


落ち着いた雰囲気。


知的な目。


「マナス・リガーデです」


軽く頭を下げる。


「魔法研究科所属、精霊分野を専門にしています」


ロストが補足する。


「彼はこの件に強い関心を示しています」


マナスはソラを見る。


「興味深いですね」


微かに笑う。


「実地で関われるとは」


(なんかやばそうなやつ来たな……)


ソラは内心で思った。



その後。


ソラたちはイリーナに問いかける。


「で?」


イナミが腕を組む。


「何すりゃいいんだよ」


イリーナは軽く指を立てた。


「新しい精霊の巣窟を作るの」


「場所は?」


ドミニクが聞く。


「どこでもいいわ」


あっさり。


「ただし条件がある」


空気が引き締まる。


「“密閉されていること”」


「そして――」


少し間を置く。


「“魔力が通っている場所”」


ソラは頷く。


「なるほどな……」


完全にランダムではない。


条件はある。


ハバープルが言う。


「では、まずは場所探しですね」



数時間後。


パークスの城外。


森。


ソラたちは探索を始めていた。


木々の間を進む。


しばらくして――


「ねえ!」


アイラの声。


振り返ると、手招きしている。


近づく。


そこにあったのは――


木の根元。


ぽっかりと空いた穴。


「これ……」


覗き込むと、地下へ続いている。


洞窟だ。


ソラは少し考え――


「ここ、いいんじゃないか?」


と口にする。


だが。


イリーナが、すっと前に出た。


「……惜しい」


「もう一つ条件があるわ」


全員の視線が集まる。


「その場所に――」


「魔物がいないこと」


一瞬の沈黙。


イナミが笑う。


「いや絶対いるだろこういうとこ」


ドミニクも頷く。


「確認は必要だな」


ソラは前を見る。


暗い洞窟。


先は見えない。


(……行くしかないか)


一歩、踏み出す。


「とりあえず調べるぞ」


その言葉に、全員が続く。


暗闇の中へ。


新たな試練のために――。

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