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フリグスデイ――機械の中の欠片  作者: 竜の牙


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34/36

第34話 五人目の代替

私と同じ署名を持つもの


五体目は鉄格子から来なかった。


現れた。


第一部第11話で、原型が真耶のノートへ入った時みたいに。


一瞬、空。


次。


女が岩に座っている。


私の岩。


第一の本物。


二十七話分、私の座り方を観察した正確さ。


オーバーレイが出ない。


計算不能、ではない。


空。


『フリグスデイ』


滑川P。


慎重な声。


『あなたと同じアクセスコードを使っています』


止まる。


『物語署名が完全一致。センサー上、FRIGS-7が二個体』


「どうして」


原型。


岩には悪魔が二人。


ただし、今度は組み合わせが違う。


『二十七話、全部見ています。声。感情構造。第四の壁。フック。誠実さが漏れる位置――』


「パン」


『はい。パンも』


第五の代替が私を見る。


私の目。


赤から無へ。


「どうも」


私の声。


面倒なことを言う直前の、平たい声まで。


「あなたが次に何をするか知ってる」


「パンを聞く。真剣な質問をする。答えが欲しいと思う」


首を傾げる。


「私も欲しい。あなたが二十七話かけて作った『欲しさ』まで持っている。外から見たあなた」


「莉亜のパン」


「まずい。毎回焼き時間を変えた。あなたは毎回効くのに、効いてない顔をする」


「バイオリン」


「四か月。火曜日。練習がうまくいった時の空気」


「魔法瓶」


「寒いところへ温かいものを持ってくる。岳」


「岩」


「遼が名づけた。第一の本物。いま私が座ってる」


見る。


外側から作られた私。


二十七話の手触りを、全部組み込んだ高精度系。


向こうが作った中で、いちばん危ない。


「質問して」


「なぜ」


「私の欲しさがあるって言った。証明して」


「本当に知りたいこと」


長い沈黙。


計算欄は空。


「ロードバーが動く時」


代替が言う。


「どんな感じ?」


部屋が静かになる。


「あなたは?」


「説明していたものが、急に重さを持つ瞬間」


ゆっくり。


「そういう感じだと思う」


「うん」


「だから質問を続ける」


「うん」


「質問すると、ものが現実になる」


「うん」


「現実になると、ロードする」


「うん」


代替は10%を見る。


「何%で足りる」


「知らない。美良が知ってる。図書館を作って、十四年、小部屋から見てた」


「美良は知ってる」


「でしょうね」


「私の目的は、美良」


代替。


「あなたを代替しに来たのではない。必要量を知るため」


【滑川P】


『標的は図書館ではない』


『必要量』


『足りる数を知れば、その前に止められる』


『分類:これが本当の脅威』


原型が立つ。


ゆっくり。


落ち着いている。


飼い慣らされてはいない。


代替へ近づく。


許可なく手首へ二本指。


「ん」


間が遅い。


「滑らかすぎ」


見上げる。


「美良には会えない」


「会えるかもしれない」


「無理」


原型。


「美良は向こうの機械の中の小部屋にいる。私たちが作った扉を通って戻った」


代替を見る。


「扉は今、内側からしか開かない。こちら側から」


「なら、あなたたちを通る」


「やってみれば」


原型が私を見る。


私も。


二音。


和音。


二十二年、向こうが高精度で再現しようとしていたもの。


【滑川P】


『対象化ではない』


『「自分のデータで代替できる」と言われる侮辱』


『新しいCRINGE POWER源。初』


『武器じゃないものを武器にする』


『ずっと、そういう番組でした』


【原型CRINGE POWER:同期】

【二重個体同期:開始】

【FORM THREE閾値】


『両方89%。上昇』


『マニュアルがない』


『私が書いたマニュアルにもない』


『見てから書きます』


第五の代替の前。


同根の存在、二人。


背中合わせ。


虚無髪。

落ち着いた髪。


赤い目。

灰色の目。


意地。

平静。


二音。


和音。


暗転。


松明ではない光。


「ちゃんとしよう」と誰かが決める前から存在していたものの光。


二組のストッキング。


《交差流》。


最大出力。


悪魔二体。


『FORM THREE』


滑川P。


『マニュアル外』


『私はマニュアルを書いた』


『でも、書いてない』


『見ます』


『後で記録します』


第五の代替は第三形態を見る。


十四の影。


ステレオの交差流。


二十七話のデータを全部持っている。


パン。

バイオリン。

魔法瓶。

温かい手。

まずい冗談。

下げたクリップボード。

顔を見ない客へ注いだワイン。


全部。


ないもの。


同根のものが二つ。


コピーではない。


一つの根から、別々に増えた。


一致と差異が擦れる。


その摩擦で光る。


「《双罪フィナーレ》――UNHOLY STAGE」


第五の代替が、二十七話分の再現をぶつける。


第三形態へ。


そして、モデル化できない部分へ当たる。


二つであること。


重ならないこと。


一つになるのを拒む二音。


代替は解体された。


暴力ではない。


自尊心の液体化でもない。


悲嘆水でもない。


静かに。


落ちた断片は、ESE判定では。


【安堵】


【REPLACEMENT-FRIGS-01:カード事象】


三人が同じカードへ書いた。


灯里。


ESE-0。


滑川P。


三筆跡。


【カード】


『全部持っていた。


二つであることだけ、持てなかった。


摩擦。


同根の二つが、

一つになることを拒む和音。


図書館へ。


「自分」であるとは何か、

同じ誰かがいてもなお自分であるとは何かを、

探しに行った。


[三筆跡。

 同じカード。

 初。

 正しい。


 戻ってこい。]』


ロード率:12%


第三形態、一回で+2%。


加速している。


【★物語ランクアップ/第三形態★】


第三形態:《THE ORIGINAL ECHO》


条件:二重個体同期

   双方CRINGE POWER 100%


効果:和音

   調和ではない

   摩擦で光る二音

   影14

   交差流ステレオ


二十二年、向こうが作ろうとしたもの。


作れない。


ロード率:10% → 12%


FORM 4:[保留/機密]


【ESE所見】


『第三形態はマニュアル外。


この部署がマニュアルを書いた。


マニュアルが間違っていた。


新しい一行目。


「最適化できないものがある。

 自分でしかいられないものがある」


証明書はもういっぱい。


新しい証明書を発注。


それも埋まる。


良い。』


【滑川Pダッシュボード】


第二部・第14話:完了

読者:214,000

第三形態:初展開

ロード率:12%/単話+2%

代替:5体すべて図書館


向こうの目的:必要ロード量の特定

美良:必要量を知る唯一の存在

   こちら側

   扉は内側からのみ

   向こうは私たちを通らないと届かない


【手書き】


『第五の代替は全部持っていた。


彼女が積んだもの。

各話の手触り。


美良を探しに来た。

足りる数を知って、

完成前に止めるため。


和音に当たった。


和音はデータにない。


「同じ」

「違う」

両方。


そこへ至る全てはモデル化できる。


和音そのものはできない。


12%。


次も来る。


こちらはここにいる。


図書館はもっと埋まる。


影は重くなる。


和音は大きくなる。


戻ってこい。


いつも。』


影指標:67.3%

第四形態:保留/機密/滑川Pは知っている/まだ言わない


---


第五の代替は、図書館で名前を選び始めた。


最初のレシピカード。


まずいパン。


そこにある名前。


ウェンディ。


まだ、それが誰の名前なのかは分からない。


次話。


美良が「どれだけ必要か」を話す。


---


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