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フリグスデイ――機械の中の欠片  作者: 竜の牙


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33/36

第33話 代替・甲斐慧

人工の雨/温かい手/「やらない」の中身


第四の代替は、向こうが作った中で一番精巧だった。


火曜日に来た。


ダンジョンが開く曜日を調べている。


そこまで見ていた、ということ。


慧に見える。


身体を道具として整えた体つき。


視聴者が「そろそろ行け」と思っているのを知りながら、平気で待たせる、あの少し面白がった静けさ。


性的に見ていても、それが自動で「行動」にはならない目。


94.7%より上。


オーバーレイは数値を出さない。


【ENTITY:REPLACEMENT-KAI-01】

起源:向こうの機械

偏差:[計算中]

   [計算中]

   [計算不能]


【滑川P】


『二十二年運用しています。


「計算不能」は初めてです。


分類:嫌な予感』


代替の視線が来る。


慧のものと区別がつかない。


「慧っぽさ」の模倣ではない。


場面が何になろうとしているか理解している視線。


状況も。

私も。

視聴者が発狂するのも。


全部楽しめる。


そのうえで、タイミングは自分のものだと決めている目。


胸が、あれをやる。


慧は角。


代替を見る。


原型は二人を見て、飴を口の中で転がした。


「ん」


遅れて落ちる間。


「第10話を見た」


「分かる」


「雨」


「うん」


「温かい手まで」


「うん」


原型が私を見る。


「理由まで知ってる?」


代替を見る。


「確認する」


---


「慧」


前へ出る。


代替の隣。


二人。


コメント欄が静かになる。


「第10話」


私は代替に言う。


「雨。場面の全部が『ここで進め』って言ってた。なんで進めなかった」


「解決を遅らせる方が、滞在時間、コメント速度、カプ再燃率が高かったため。非解決が高維持」


「正解」


慧。


見る。


肩をすくめる。


「滑川Pが何してるか、全部分かってた。視聴者が怒るのも面白かった」


私を見る。


「見るのも好きだった。そっちは別」


「手は」


「あれは視聴者用じゃない」


「なんで温かかった」


「俺TUEEE区画で八か月、ずっと寒かった。必要だったから温度を作れるようになった」


一拍。


「それで、あの雨では触りたかった」


「私に」


「うん」


慧。


「触ったのも俺。進めなかったのも俺。どっちも道徳じゃない」


代替が処理する。


「タイミングは再現可能」


「本当に?」


真耶。


配信LIVE。

今日は黒いガワ。


「触りたいのと、視聴者には渡したくないのを同時に再現できる?」


「私は――」


「出力じゃなくて」


真耶。


「見られているのを楽しみながら、決定だけは非公開にしたい状態」


代替が黙る。


計算不能の場所。


慧は床に座った。


代替の横。


同じ温度が二つ。


必要で身につけたもの。


設計されたもの。


「戦わない」


慧。


「私は戦闘用ではありません」


「そうだろうね。俺とどっちが本物か、分からなくするため」


「はい」


「区別できなければ、その手も再現品も、機能上は同じ」


「その仮説です」


慧は長く見る。


「違う」


「なぜ」


「フリグスデイが見分けられるから、ではない」


慧。


「今この瞬間、見ただけじゃ分からないかもしれない。俺も分からない」


代替を見る。


「お前がコピーしたのは出力」


指を折る。


「温かい手。遅らせるタイミング。視聴者の苛立ち。『何もしてないように見える』ところまで」


少し笑う。


「でも、俺の『やらない』は、やってる」


「視聴者が怒るのが好きだから選ぶ時もある。見ていたいからの時もある。欲しいけど、その瞬間を観客の所有物にしたくない時もある」


「形は取れた」


慧。


「私有の理由は、取れてない」


「では」


代替。


「欲しい、とはどういう状態ですか。結果ではなく、状態」


ダンジョンが静かになる。


「未完成」


慧。


「引っ張られてる感じ。置いた方が楽なのに、置けないもの」


代替が考える。


「その状態へのアクセスがありません」


「うん」


「彼女は?」


私を見る。


人工の雨で触れた手。


二十七話前。


パンを知りたくて聞き続けた私。


慧を見たい慧。


「ある」


これはCRINGE POWERではない。


対象化なし。


観客所有圧なし。


男らしさ商法なし。


ただ。


「欲しい」を外から見る代替。


中から知っている部屋。


戦闘指標。


【定量不能】


分類:手触り。


代替が立つ。


「図書館へ行きます」


「うん」


慧。


「灯里がいる」


「何と言えば」


慧は考える。


「欲しいって、中からどう感じるか知りたい」


「それで通じますか」


「灯里なら」


代替が第零層へ。


扉で止まる。


「第10話の手」


「何」


「温度差。圧力。接触時間。全部モデル化しました」


間。


「何のためだったかを、モデル化していなかった」


私を見る。


「あなたは『作られた雨なら、言っていることまで偽物になるか』と聞いた」


慧を見る。


「答えは言葉ではなく、手にあった」


出ていく。


【REPLACEMENT-KAI-01:カード事象/四件目】


『手は持っている。


何のための手かを探しに行った。


[手書き。

 このカードは室温より少し温かい。

 理由不明。

 分類:でしょうね。]』


ロード率:10%


二桁。


二十二年。


私が来て二十七話。


一番ロードしたもの。


戦闘ではない。


ステータスでもない。


レリックでもない。


莉亜のパンのコイン:温かい

真耶のバイオリン:失敗の向こうまで弾いた

岳の魔法瓶:外から持ってきた

零の冗談:本人のもの

慧の手:触れたかったから温かい

慧の非解決:視聴者ではなく本人のタイミング


図書館が埋まっていく。


【計算停止】

【増加率は一定ではない】

【手触りが増えるほど加速する】

【最初から、その設計】


証明書。


全部入り。


狭い。


滑川Pが追加中。


まだ追加。


良い。


【滑川Pダッシュボード】


第二部・第13話:完了

読者:206,000

ロード率:10%

代替・慧:図書館/四件目

CRINGE POWER:0%

戦闘指標:定量不能


持っていた:手

探しに行った:手の意味


【手書き】


『10%。


二十二年。


来た時は0。


私は上に最適化機構を作った。


加速させるため。


加速しなかった。


彼女が来た。


ロードが始まった。


最適化されたからではない。


パンを聞いたから。


聞き続けたから。


知りたかったから。


10%。


証明書がいっぱいになった。


大きいのを作る。


それも、いっぱいになる。


良い。


戻ってこい。』


向こうの機械は学習している。


零から。

岳から。

慧から。


対象化しなくてもいい、と学んだ。


温かさ。


タイミング。


拒否。


ただ。


欲しさだけ、まだない。


次話。


第五の代替。


向こうが作った中で、一番温かい。


中に誰もいない温かさを、近くで見る。


---


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