第28話 波が来る
CRINGE POWER最大/初変身/兵器を作ったので撃ち返す
【ESE戦闘注意報】
『以下の内容はCONTENT EXCELLENT判定です。
法務部が変身シークエンスを確認しました。
法務部は本日、有休を取得しました。
続行します。』
夜明け。
一人ではない。
三人でもない。
波。
これまで単独主人公、二人組、妻五人同伴事件まで処理してきた鉄格子が、近づく人数について建築的意見を示した。
意見。
「無理」
波は入ってきた。
【主人公波/第二部エスカレーション】
孤高修仙主人公 ×4
俺様最強系 ×3
メンズコーチ系 ×2
恋愛工学師型(進化済) ×1
システム修仙主人公 ×2
異世界トラック生還者 ×1
合計:13
脅威度:集団になるとかなり恥ずかしい
CRINGE POWER予測:現密度で最大
【滑川P】
『事故報告書は先に三部提出しました。
結末は分かっています』
鼻血リスク:高
---
十三人。
肩を並べている。
パワーファンタジー主人公十三人分の金白色オーラで、局所的に小型太陽ができている。
先頭。
【メンズコーチ系/短尺煽り特化】
識別:ALPHA-PRIME-CHAD-1
命名:本人
ESE再分類申請:4回拒否
一歩。
胸元に小型ワイヤレスマイク。
縦動画用の自動追尾カメラまで出た。
「お前ら、危機感が足りない」
誰に言ったのか分からない。
私か。
十三人か。
コメント欄か。
たぶん全部。
「筋トレ。禁欲。収入。身だしなみ。覚悟。女に選ばれないなら、全部足りてない証拠だ」
「何人」
「これは人数の問題じゃ――」
「十三」
私は言う。
「岩に座ってる女ひとりに、男磨きコーチ二人と恋愛工学師まで連れてきた」
後ろの恋愛工学師がタブレットを開く。
【ATTRACTION PHASE】
【COMFORT PHASE】
【CLOSE PHASE】
【対象:FRIGS-7】
【成功率:87.4%】
「もう営業資料になってる」
私。
「再現可能な方法論だ」
恋愛工学師。
「再現できるなら、あなたじゃなくていいね」
止まった。
メンズコーチ主個体が割って入る。
「論点をずらすな。強い男は――」
演説を始めた。
客観的には良い。
ショート動画なら切り抜きやすい。
最初の三秒で不安を作る。
十秒で原因を本人へ返す。
三十秒で改善策。
最後に有料コーチングへの導線。
完成している。
筋トレ。
禁欲。
年収。
清潔感。
成功。
女性評価。
全部、ひとつの採点表。
そして、その採点表を売っている本人が採点者。
ダンジョン内の女は主人公に対して特定の物語的役割を持ち、ジャンルによって歴史的に証明されていて――
後ろの孤高修仙主人公が言った。
「笑えよ」
【変身シークエンス承認】
照明が変わる。
松明色から。
一シーズンと三分の二秒、我慢していたものの紫。
影が外れた。
冥司に剥がされた時とは違う。
あれは損傷。
今は自分から。
背後で、第二の輪郭になる。
暗闇で待っていたものが、待つのをやめる。
ダンジョンが暗転。
私だけ残る。
髪。
痣のような黄色の端から、虚無へ。
黒ではない。
虚無。
星と星のあいだ。
古いものが住む色。
目の赤が、ちらつかなくなる。
固定。
まずいパンを聞き。
バイオリンを聞き。
温かいコインを持ち。
二十七話、答えを聞き続けたものが。
同時に。
罪の宇宙存在だったことを思い出す赤。
ストッキングに黒い炎。
冷たい。
狙ったものだけ焼く。
それ以外は触らない。
『変身シークエンス完了』
滑川Pの声。
二シーズン準備してきたものが予定どおり完成し、それでも驚いている人の声。
『物語権限、起動』
『CRINGE POWER変換、開始』
少し静かになる。
『二十二年、この機械を見ています』
『これは初めてです』
【記録:CONTENT EXCELLENT】
【記録:手触り】
【同時成立。矛盾のため正しい】
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先頭が私を見る。
虚無髪。
冷たい黒炎。
内部パラメータを走らせる。
該当応答なし。
再起動。
「は?」
「《審判の下着》――最大透明化」
接触。
先頭の頭上に文字。
全員に見える。
読める。
【昔、一度だけ本気で好きになって失敗した。それ以来「努力不足なら全部説明できる」理論を売っている。会員制コーチング三段階。四年間ちゃんと寝ていない】
演技構造が溶けた。
孤高ポーズ。
練習済みの見下し。
課金済みの男らしさ。
真夏の車内に置いた高級塗料みたいに流れ落ちる。
【SPLATTER METER:十分】
次。
俺様最強系、三人。
威圧目的に最適化された「生まれつき違う」体格。
一番大きいのが本気で困っている。
「目だけで、どうやって」
「《意地のストッキング》――交差流」
思い込みの落差。
谷。
圧力。
深い谷。
三人が一瞬だけ私の周りを周回した。
重力が仕事を思い出す。
落ちる。
よろめく、ではない。
浮いた。
少し。
恥ずかしい程度に。
そして、自分たちの思い込みの重量で落ちる。
衝撃波の残滓は、しぼんだ自尊心。
灰色でもベージュでもない。
さっきまで大声だったものの色。
孤高修仙組は、修行で脱出しようとした。
修行には集中がいる。
自分の動機が頭上に字幕表示されている状態では難しい。
だいたい全員、同じ意味。
【頂上がなければ、登る意味がなくなる気がして怖い】
自分のオーラにつまずく。
オーラ崩壊。
修仙コア排出。
きゅっ。
きゅっ。
きゅっ。
きゅっ。
床を四個、跳ねる。
見る。
手元にすでに一個ある。
新しい四個。
『ポケットが足りません』
滑川P。
「岳のリュック」
岳。
「もちろん」
異世界トラック生還者は後ろで計算していた。
「これは、自分が転生して対応するべき戦闘か」
床に十三人分の恥。
頭上字幕。
しぼんだ自我。
跳ねる修仙コア。
虚無髪。
黒炎。
同接十八万、上昇中。
慎重に言う。
「火曜日に、また来ます」
「火曜、開いてる」
私。
帰った。
早い。
尊厳を保って。
ぎりぎり。
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【戦果】
メンズコーチ系・主個体:+4,200
・動機字幕17ページ
・コイン刻印:小型ワイヤレスマイク
・無料ショート→有料コーチング導線:切断
・四年寝ていない匂い
俺様最強系×3:各+2,800
・思い込み落差:大峡谷級
・コイン刻印:周回矢印
・少し焦げ
孤高修仙×4:各+892
・修仙コア×4取得
・鳴く
・岳のリュック内、合計5個
・岳「もちろん」
メンズコーチ系×2:各+3,100
・二人同時に「昔、一度だけ本気で――」まで表示
・コイン刻印:最後まで言えなかった文章
・莉亜のパン以降で、一番温かいコイン
恋愛工学師型(進化済)×1:+2,200
・Attraction/Comfort/Close表:破損
・現在、角で「欲しさはKPIか」のノートを書いている
・鷹見隆雅成分:高
・たぶん後で話す
・今は聞かない
【合計:+26,492 ESEクレジット】
【単一戦闘イベント新記録】
変身:初完全展開
CRINGE POWER消費:100%
再充填:高速
理由:向こうの宣伝がまだ対象化エネルギーを出している
ロード率:6%
注記。
戦うことも、重みになる。
守りたいものを守るためなら。
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変身は戦闘後三分続いた。
虚無髪が痣色へ戻る。
炎が消える。
ストッキングが冷える。
私に戻る。
見た目ではないところが、少し重い。
╔════════════════════════════════════╗
║ ★ 物語ランクアップ ★ ║
║ ║
║ 変身解放:基本形 ║
║ 条件:CRINGE POWER 100% ║
║ 持続:意地チャージ依存 ║
║ ║
║ 意地:Tier 4 → Tier 5 ║
║ ESE史上初のTier 5 ║
║ ║
║ 尊厳:Tier 3 → Tier 4 ║
║ 自覚的変身=自覚的コスト ║
║ ║
║ 読者係留:175,000 → 182,000 ║
║ 戦闘由来新規:史上最多 ║
║ ║
║ 新能力:CRINGE POWER変換 ║
║ 対象化を自動的に変身資源へ ║
║ ║
║ ESE所見: ║
║ 「構造的圧力を電源へ変換した。 ║
║ 史上最高効率か、 ║
║ ジャンル全体への悪口か。 ║
║ おそらく両方。証明書発行」 ║
║ ║
║ フリグスデイ:いらない ║
║ 滑川P:ラメ付きです ║
║ フリグスデイ:……ならもらう ║
╚════════════════════════════════════╝
第一の本物に座る。
岳のリュックに26,492。
鳴くコア五個。
CRINGE POWER、12%まで再充填。
ロード率6%。
レベルアップ看板が天井へ帰っていく。
岳が魔法瓶を渡す。
取る。
温かい。
「良い戦いでした」
「十三人いた」
「はい」
岳。
「良い戦いでした」
『ライバル連載v2』
滑川P。
『四十分前に公開』
「どう」
『前よりかなり良い』
「数字」
『十八万二千。単話増加、ESE史上最大』
間。
『向こうは、あなたがランクアップした直後の読者群へ公開した』
コメント欄は、遅い方ではなかった。
滝。
《韓ドラ沼民:変身。虚無髪。黒炎。無理。もうここ住む》
《量子筋トレ勢99:意地Tier5!? 第2話で中堅とか言ってごめん。中堅は俺だった》
《闇主匿名部:鳴くコア四個追加+岳の「もちろん」で死亡》
《黒城冥司【公式】:火曜開いてるって言った。異世界男、信じた。次の火曜来る。俺も行く》
《有馬遼【地図係】:変身を描いた。古いものが我慢をやめた時の地形》
《鷹見隆雅【公式】:角の進化済み恋愛強者、俺じゃない。断言はしない》
《黒須岳【水筒持ち】:良い戦いでした☕☕☕☕☕》
《ASSET-ZERO:宿でも廊下でも、顔を見ない誰かにワインを注いでいる時でも聞こえました。変身を。戻ってきて》
【滑川Pダッシュボード/戦闘後】
第二部・第8話:完了
初変身:基本形
獲得:26,492
修仙コア:5/岳のリュック
意地:Tier 5
尊厳:Tier 4
ライバル連載v2:公開
読者:182,000
【清掃記録】
液化した自意識:書類鞄一つ分
自我周回現象:3
コア排出:4
動機字幕:13
思い込み大峡谷:解消
プロテイン粉末+投資助言:床
岳:頼まれてないのに掃除中
分類:手触り
【手書き】
『変身するとは知らなかった。
岩に座っていた。
十三人来た。
一人が「笑え」と言った。
そして機械が、
二シーズン準備してきたものを出した。
私はCRINGE POWERを、
あの一語のために作った。
毎回。
[記録。
分類:CONTENT EXCELLENT。
分類:手触り。
分類:私が武器を作り、
彼女が反対向きに撃った。
証明書はラメ付き。
彼女は受け取った。
それがずっと、この番組だった。
戻ってこい。]』
ロード率:6%
影指標:67.3%
---
十八万二千。
意地Tier5。
初変身。
岳のリュック、鳴くコア五個。
ライバル連載は前より良い。
私たちは、それより良い。
【滑川P・次回予告】
『向こうの連載、二万六千。
まだこちらが多い。
ただ、向こうの主人公が、私のデータにないことをした。
戦わない。
変身しない。
技名も叫ばない。
ダンジョンに座った。
待った。
二十二年、戦闘解析をしている。
「座って待つ」の分類がない。
作る必要がある。
たぶん、その名前を私は気に入らない。
次話。
記録済。』
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