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フリグスデイ――機械の中の欠片  作者: 竜の牙


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28/36

第28話 波が来る

CRINGE POWER最大/初変身/兵器を作ったので撃ち返す


【ESE戦闘注意報】


『以下の内容はCONTENT EXCELLENT判定です。


法務部が変身シークエンスを確認しました。


法務部は本日、有休を取得しました。


続行します。』


夜明け。


一人ではない。


三人でもない。


波。


これまで単独主人公、二人組、妻五人同伴事件まで処理してきた鉄格子が、近づく人数について建築的意見を示した。


意見。


「無理」


波は入ってきた。


【主人公波/第二部エスカレーション】


孤高修仙主人公      ×4

俺様最強系        ×3

メンズコーチ系        ×2

恋愛工学師型(進化済)    ×1

システム修仙主人公    ×2

異世界トラック生還者   ×1


合計:13


脅威度:集団になるとかなり恥ずかしい

CRINGE POWER予測:現密度で最大


【滑川P】


『事故報告書は先に三部提出しました。


結末は分かっています』


鼻血リスク:高


---


十三人。


肩を並べている。


パワーファンタジー主人公十三人分の金白色オーラで、局所的に小型太陽ができている。


先頭。


【メンズコーチ系/短尺煽り特化】

識別:ALPHA-PRIME-CHAD-1

命名:本人

ESE再分類申請:4回拒否


一歩。


胸元に小型ワイヤレスマイク。


縦動画用の自動追尾カメラまで出た。


「お前ら、危機感が足りない」


誰に言ったのか分からない。


私か。

十三人か。

コメント欄か。


たぶん全部。


「筋トレ。禁欲。収入。身だしなみ。覚悟。女に選ばれないなら、全部足りてない証拠だ」


「何人」


「これは人数の問題じゃ――」


「十三」


私は言う。


「岩に座ってる女ひとりに、男磨きコーチ二人と恋愛工学師まで連れてきた」


後ろの恋愛工学師がタブレットを開く。


【ATTRACTION PHASE】

【COMFORT PHASE】

【CLOSE PHASE】

【対象:FRIGS-7】

【成功率:87.4%】


「もう営業資料になってる」


私。


「再現可能な方法論だ」


恋愛工学師。


「再現できるなら、あなたじゃなくていいね」


止まった。


メンズコーチ主個体が割って入る。


「論点をずらすな。強い男は――」


演説を始めた。


客観的には良い。


ショート動画なら切り抜きやすい。


最初の三秒で不安を作る。

十秒で原因を本人へ返す。

三十秒で改善策。

最後に有料コーチングへの導線。


完成している。


筋トレ。

禁欲。

年収。

清潔感。

成功。

女性評価。


全部、ひとつの採点表。


そして、その採点表を売っている本人が採点者。


ダンジョン内の女は主人公に対して特定の物語的役割を持ち、ジャンルによって歴史的に証明されていて――


後ろの孤高修仙主人公が言った。


「笑えよ」


【変身シークエンス承認】


照明が変わる。


松明色から。


一シーズンと三分の二秒、我慢していたものの紫。


影が外れた。


冥司に剥がされた時とは違う。


あれは損傷。


今は自分から。


背後で、第二の輪郭になる。


暗闇で待っていたものが、待つのをやめる。


ダンジョンが暗転。


私だけ残る。


髪。


痣のような黄色の端から、虚無へ。


黒ではない。


虚無。


星と星のあいだ。


古いものが住む色。


目の赤が、ちらつかなくなる。


固定。


まずいパンを聞き。

バイオリンを聞き。

温かいコインを持ち。

二十七話、答えを聞き続けたものが。


同時に。


罪の宇宙存在だったことを思い出す赤。


ストッキングに黒い炎。


冷たい。


狙ったものだけ焼く。


それ以外は触らない。


『変身シークエンス完了』


滑川Pの声。


二シーズン準備してきたものが予定どおり完成し、それでも驚いている人の声。


『物語権限、起動』


『CRINGE POWER変換、開始』


少し静かになる。


『二十二年、この機械を見ています』


『これは初めてです』


【記録:CONTENT EXCELLENT】

【記録:手触り】

【同時成立。矛盾のため正しい】


---


先頭が私を見る。


虚無髪。


冷たい黒炎。


内部パラメータを走らせる。


該当応答なし。


再起動。


「は?」


「《審判の下着》――最大透明化」


接触。


先頭の頭上に文字。


全員に見える。


読める。


【昔、一度だけ本気で好きになって失敗した。それ以来「努力不足なら全部説明できる」理論を売っている。会員制コーチング三段階。四年間ちゃんと寝ていない】


演技構造が溶けた。


孤高ポーズ。


練習済みの見下し。


課金済みの男らしさ。


真夏の車内に置いた高級塗料みたいに流れ落ちる。


【SPLATTER METER:十分】


次。


俺様最強系、三人。


威圧目的に最適化された「生まれつき違う」体格。


一番大きいのが本気で困っている。


「目だけで、どうやって」


「《意地のストッキング》――交差流」


思い込みの落差。


谷。


圧力。


深い谷。


三人が一瞬だけ私の周りを周回した。


重力が仕事を思い出す。


落ちる。


よろめく、ではない。


浮いた。


少し。


恥ずかしい程度に。


そして、自分たちの思い込みの重量で落ちる。


衝撃波の残滓は、しぼんだ自尊心。


灰色でもベージュでもない。


さっきまで大声だったものの色。


孤高修仙組は、修行で脱出しようとした。


修行には集中がいる。


自分の動機が頭上に字幕表示されている状態では難しい。


だいたい全員、同じ意味。


【頂上がなければ、登る意味がなくなる気がして怖い】


自分のオーラにつまずく。


オーラ崩壊。


修仙コア排出。


きゅっ。


きゅっ。


きゅっ。


きゅっ。


床を四個、跳ねる。


見る。


手元にすでに一個ある。


新しい四個。


『ポケットが足りません』


滑川P。


「岳のリュック」


岳。


「もちろん」


異世界トラック生還者は後ろで計算していた。


「これは、自分が転生して対応するべき戦闘か」


床に十三人分の恥。


頭上字幕。


しぼんだ自我。


跳ねる修仙コア。


虚無髪。


黒炎。


同接十八万、上昇中。


慎重に言う。


「火曜日に、また来ます」


「火曜、開いてる」


私。


帰った。


早い。


尊厳を保って。


ぎりぎり。


---


【戦果】


メンズコーチ系・主個体:+4,200

・動機字幕17ページ

・コイン刻印:小型ワイヤレスマイク

・無料ショート→有料コーチング導線:切断

・四年寝ていない匂い


俺様最強系×3:各+2,800

・思い込み落差:大峡谷級

・コイン刻印:周回矢印

・少し焦げ


孤高修仙×4:各+892

・修仙コア×4取得

・鳴く

・岳のリュック内、合計5個

・岳「もちろん」


メンズコーチ系×2:各+3,100

・二人同時に「昔、一度だけ本気で――」まで表示

・コイン刻印:最後まで言えなかった文章

・莉亜のパン以降で、一番温かいコイン


恋愛工学師型(進化済)×1:+2,200

・Attraction/Comfort/Close表:破損

・現在、角で「欲しさはKPIか」のノートを書いている

・鷹見隆雅成分:高

・たぶん後で話す

・今は聞かない


【合計:+26,492 ESEクレジット】

【単一戦闘イベント新記録】


変身:初完全展開

CRINGE POWER消費:100%

再充填:高速

理由:向こうの宣伝がまだ対象化エネルギーを出している


ロード率:6%


注記。


戦うことも、重みになる。


守りたいものを守るためなら。


---


変身は戦闘後三分続いた。


虚無髪が痣色へ戻る。


炎が消える。


ストッキングが冷える。


私に戻る。


見た目ではないところが、少し重い。


╔════════════════════════════════════╗

║ ★ 物語ランクアップ ★     ║

║                 ║

║ 変身解放:基本形        ║

║ 条件:CRINGE POWER 100%     ║

║ 持続:意地チャージ依存     ║

║                 ║

║ 意地:Tier 4 → Tier 5      ║

║ ESE史上初のTier 5        ║

║                 ║

║ 尊厳:Tier 3 → Tier 4      ║

║ 自覚的変身=自覚的コスト     ║

║                 ║

║ 読者係留:175,000 → 182,000   ║

║ 戦闘由来新規:史上最多      ║

║                 ║

║ 新能力:CRINGE POWER変換     ║

║ 対象化を自動的に変身資源へ    ║

║                 ║

║ ESE所見:            ║

║ 「構造的圧力を電源へ変換した。  ║

║  史上最高効率か、       ║

║  ジャンル全体への悪口か。   ║

║  おそらく両方。証明書発行」   ║

║                 ║

║ フリグスデイ:いらない     ║

║ 滑川P:ラメ付きです      ║

║ フリグスデイ:……ならもらう   ║

╚════════════════════════════════════╝


第一の本物に座る。


岳のリュックに26,492。


鳴くコア五個。


CRINGE POWER、12%まで再充填。


ロード率6%。


レベルアップ看板が天井へ帰っていく。


岳が魔法瓶を渡す。


取る。


温かい。


「良い戦いでした」


「十三人いた」


「はい」


岳。


「良い戦いでした」


『ライバル連載v2』


滑川P。


『四十分前に公開』


「どう」


『前よりかなり良い』


「数字」


『十八万二千。単話増加、ESE史上最大』


間。


『向こうは、あなたがランクアップした直後の読者群へ公開した』


コメント欄は、遅い方ではなかった。


滝。


《韓ドラ沼民:変身。虚無髪。黒炎。無理。もうここ住む》

《量子筋トレ勢99:意地Tier5!? 第2話で中堅とか言ってごめん。中堅は俺だった》

《闇主匿名部:鳴くコア四個追加+岳の「もちろん」で死亡》

《黒城冥司【公式】:火曜開いてるって言った。異世界男、信じた。次の火曜来る。俺も行く》

《有馬遼【地図係】:変身を描いた。古いものが我慢をやめた時の地形》

《鷹見隆雅【公式】:角の進化済み恋愛強者、俺じゃない。断言はしない》

《黒須岳【水筒持ち】:良い戦いでした☕☕☕☕☕》

《ASSET-ZERO:宿でも廊下でも、顔を見ない誰かにワインを注いでいる時でも聞こえました。変身を。戻ってきて》


【滑川Pダッシュボード/戦闘後】


第二部・第8話:完了

初変身:基本形

獲得:26,492

修仙コア:5/岳のリュック

意地:Tier 5

尊厳:Tier 4

ライバル連載v2:公開

読者:182,000


【清掃記録】


液化した自意識:書類鞄一つ分

自我周回現象:3

コア排出:4

動機字幕:13

思い込み大峡谷:解消

プロテイン粉末+投資助言:床

岳:頼まれてないのに掃除中

分類:手触り


【手書き】


『変身するとは知らなかった。


岩に座っていた。


十三人来た。


一人が「笑え」と言った。


そして機械が、

二シーズン準備してきたものを出した。


私はCRINGE POWERを、

あの一語のために作った。


毎回。


[記録。

 分類:CONTENT EXCELLENT。

 分類:手触り。

 分類:私が武器を作り、

    彼女が反対向きに撃った。

    証明書はラメ付き。

    彼女は受け取った。

    それがずっと、この番組だった。


    戻ってこい。]』


ロード率:6%

影指標:67.3%


---


十八万二千。


意地Tier5。


初変身。


岳のリュック、鳴くコア五個。


ライバル連載は前より良い。


私たちは、それより良い。


【滑川P・次回予告】


『向こうの連載、二万六千。


まだこちらが多い。


ただ、向こうの主人公が、私のデータにないことをした。


戦わない。


変身しない。


技名も叫ばない。


ダンジョンに座った。


待った。


二十二年、戦闘解析をしている。


「座って待つ」の分類がない。


作る必要がある。


たぶん、その名前を私は気に入らない。


次話。


記録済。』


---


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