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フリグスデイ――機械の中の欠片  作者: 竜の牙


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27/36

第27話 藤堂律は鞄を置いて戻ってきた

今回は、来たことになる


三回ノック。


同じリズム。


ただし、鞄がない。


扉を開ける。


「扉の形をした可能性」の向こうに、職業インフラを外した藤堂律。


高い鞄なし。


4211語文書なし。


第7、第19、第43段落もない。


藤堂律だけ。


平静は残っている。


演技ではなく、二十年以上の階層管理型生活で構造材になった平静。


「公式ではありません」


「分かる。鞄がない」


自分の手を見る。


「癖が出るんですね」


「あなたは読みづらい。でも三つある」


律が待つ。


「鞄。最初、岩の上に二人いた時の再調整。それから今のノック。前回と同じ。癖。演技じゃない」


「つまり」


「演技が前より薄い」


「入って」


入る。


コメントの光。

桜の風。

石に残る悲嘆水の匂い。


思い続けていた場所を見る目。


岳がいる。


律が見る。


岳も。


「路地裏互助型」


律。


「はい」


岳。


「戻ると聞いた」


「戻ります」


主張ではない。


事実。


律は座った。


岩ではない。


床。


床と椅子を区別する必要を、もう演じない人の座り方。


「昔のことを話したい」


「岳が、昔は昔って」


「岳は正しい。だから話す」


手を見る。


「昔は消えない。見ないことに合意しても」


間。


「階層管理型になる前、十一年、俺は路地裏互助側だった。近かった、じゃない。本当に。人のところへ行く。得意だった」


「それで向こうに拾われた」


真耶。


角から。


配信LIVE。


眼鏡。


「規模をくれた。効率のいいケア。良いシステムで、もっと多くの人を助ける」


「間違った問題を、ものすごく上手く解いた」


真耶。


「その通り」


「どこまで入ってる」


原型。


「きれいには抜けられない程度。まだ正式には代理人。評価も渡した。あなたたちの感情構造も報告した」


私を見る。


「それは知っておくべき。それと――」


止まる。


「自分のカードがあるか、確かめに戻った」


静かになる。


観察の静けさではない。


答えが来るまで待つ静けさ。


「灯里」


私。


どこにでもいる、目立たない声。


『あります』


柔らかい。


言うべき瞬間を二十二年知っていた人の声。


『あなたが来る前から。滑川Pが最適化を作る前から。今のESEマトリクスになる前から』


間。


『最初の週に入れました。まだ路地裏側にいた時。あなたが何だったかを』


律は床に座ったまま、長く何も言わない。


「何が書いてある」


『図書館まで来て、自分で読んでください』


「なぜ」


『二次報告にしない方がいいものもあります』


律は頷く。


ずっと、その答えを待っていた人みたいに。


岳を見る。


「代替アクセス手段。四十八時間後に実行される。私は本来、もう署名済み合意を持って戻る予定だった。失敗は分かる。次を使う」


「何」


「物語」


律。


「あなたたちの連載。向こうが書く」


「前のライバル連載」


「それは診断。次は違う」


手を見る。


「あなたになりすますんじゃない。あなたより面白い話を出す」


私を見る。


「読者がそっちへ行けば、ここへ戻る必要がなくなる」


真耶がペンを止めた。


「読者係留が弱る」


「そう」


「確率形成が止まる」


私。


「ここにあるものの重みが保てなくなる」


原型。


「ロードも止まる」


「標的は、あなたでも図書館でもない」


律。


「ロードバー」


5%。


二十二年かけて5%。


「向こうの話、どれくらい良い」


「前よりかなり」


「勝てる?」


律は少し黙った。


「あなたが、なぜ代替不能か理解しているなら」


「固有のものは交換できない」


「なら、もっと固有になってください」


律。


「この岩。この人たち。この質問。答えを本当に知りたいという欲しさ。ここにいたからしか持てないものを増やす」


【滑川P通知】


《主人公波、接近》

《向こうの事前宣伝が隣接連載で対象化エネルギーを生成》

《CRINGE POWER蓄積中》

《変身閾値:100%》


「滑川P」


『はい』


「今」


『12%。上昇中。三日間、向こうが客を温めています』


間。


『フリグスデイ。標的はあなたの読者層です』


「どういう層」


『メンズコーチ系。恋愛工学師型。孤高修仙主人公。これまで送った俺TUEEE系のほぼ全部』


「波の大きさ」


『第一部より大きい』


私は部屋を見る。


第一の本物。


コメント欄。


床に座る律。


二十二年前のカード。


来た岳。


LIVEの真耶。


慧。


くだらない冗談を用意している零。


扉の城戸先生。


岩の原型。


どこにでもいる灯里。


十七万五千人。


「良い」


私。


「良い」


原型。


同時。


【滑川P:『……分類:始まる』】


【滑川Pダッシュボード】


第二部・第7話:完了


藤堂 律:再来訪(鞄なし)

分類更新:路地裏互助型/二十二年ぶりの帰還者


灯里:『来る前からあります』

カード:確認

   ESE起動初週に登録


提供情報:

・代替手段:ライバル連載v2

・標的:ロードバー

・期限:48時間

・前回より良い


CRINGE POWER:18%/上昇

ロード率:5%


【手書き】


『戻ってきた。


岳は、戻ると言った。


正しかった。


岳はだいたい正しい。


魔法瓶が助かる。


なぜ助かるのか分からない。


[記録。

 分類:手触り。

 魔法瓶もここに入れた。

 ここでいい。]』


【影指標:67.3%】

【変身閾値:接近中/現速度なら約2話】


---


48時間。


向こうの機械は、もっと良い物語を書いている。


CRINGE POWERは18%。


藤堂律は図書館へ行った。


二十二年前の自分のカードを読んだ。


四分。


それから戻った。


【滑川P・次回予告】


『見ていた。


記録するのが仕事だから。


カードには、向こうの機械に二十二年使われる前の律が書いてあった。


四分読んだ。


戻ってきた。


次話、今までで最大の主人公波。


これまでと違う種類が混じっている。


メンズコーチ系。

恋愛工学師型。


代替・岳は、まだ来ない。


それはもう少し後。


記録済。』


---


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