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フリグスデイ――機械の中の欠片  作者: 竜の牙


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第18話 ゴシック区画と、笑わせたかった男

ゴシック城は、入った瞬間から私たちに意見があった。


石が覚えている。

影が荷重を受けている。

蝋燭の光が、こちらの服装と人生観を採点している。


物語を置く建物ではない。


廊下は、私たちが秘密を持っている前提で長くなる。


扉は、開ける前から罪悪感を要求する。


窓の外には、必要以上に月がある。


「月、多くない?」


真耶が数える。


「三つ」


「ゴシックだから?」


慧が言う。


「たぶん、象徴を一つに絞れなかった」


『演出密度は基準内です』滑川P。


「月三つで基準内」


『ゴシック区画ですので』


真耶の配信窓では、成人ゴシックロリータのアバターが自動で立ち上がった。


「似合う」


「昨日も使った」


「この区画のため?」


「検索流入のため」


『私の指定です』滑川P。


「二人とも夢がない」


「月三つよりある」真耶。


慧の前には【悲劇的恋愛イベント:推奨】が出た。

彼は読んで、閉じた。


《また閉じた》

《開け》


「区画まで俺に同じ仕事させる」


「仕事って認めた」私。


「今さら?」


真耶が三つの月を順番に指す。


「象徴、重複。削れる」


『削らないでください』


「滑川Pが月を守った」


『演出資産です』


「愛着じゃなく?」


『演出資産です』


ジャンルとは、便利な免罪符でもある。

建物そのものが、勝手に物語へ口を出す。


慧が壁に触れた。


「ここ、前に二か月いた」


「似合いそう」


「血の契約。序列。全部取引。そこそこ上手く陰鬱だった」


「信じる」


「褒めてないよね」


「うん」


廊下の奥から、男が来た。


黒い外套。

骨格が良い。

図書館の全蔵書を読み、全部が自分の絶望を裏づけたと思っている顔。


「三人か。この区画は通常、一名ずつだ」


慧を見る。


「戻ったのか」


「通過中」


「以前の陰鬱は適切だった。最適ではなかったが」


私を見る。


「ダンジョンの女」


「影が噂してる?」


「普段、影は雰囲気の話しかしない。最近、お前の話をする」


「迷惑」


「同感」


真耶は書いていた。


「名前」


「夜城零」


「ここ何年」


「推定三年」


慧が静かに息をした。


三年。


「学んだ」


零は言う。


「闇。犠牲。血筋。呪い。失うことの美しさ」


蝋燭を見る。

影を見る。


「かなり完成度の高い罠になった」


「自覚あるなら、来れば」


「区画の一部になってる。出られるか分からない」


私は名前を置く。


「零」


城が静かになる。


「ここに“深さ”を与えられる前、何したかった?」


長い時間。


「人を、笑わせたかった」


影が止まった。


真耶のペンも止まった。


零は、少し困った顔をした。


「昔、ひどい駄洒落を考えていた」


「言って」


「ここで?」


「ここだから」


零は三年分の耽美と呪われた血筋を背負った顔で言った。


「吸血鬼が会議に遅れた。理由は」


慧が目を閉じた。


真耶が、すでに嫌そうだった。


「血刻表を見間違えた」


私は笑った。


ほんの一回。


零の顔が崩れた。


三年間、この城で作られた「深い顔」が。


彼は泣いた。


「最悪」


真耶が言った。


「うん」


私は答えた。


「でも、零の」


城の壁にひびが入る。


その向こうは光でも闇でもない。


まだ何にも決まっていない場所。


負領域。


滑川Pの声。


『元のフリグスデイは第一層。中心です。あなたたちが移動している間も、何かを作っています。センサーは現在、完全に機能しません』


「良い」


『金曜』


「何を作ってても、私たちのもの」


ひびが広がる。


「零。自分の建物の割れ目、歩ける?」


彼は三年分の闇を見る。


そして、ひどい駄洒落を言いたかった自分を見る。


「やってみる」


精密なゴシック主人公が、初めて精密でない決定をした。


城は、それを嫌った。


壁がきしむ。

蝋燭の炎が、こちらを責めるみたいに細くなる。

影が荷重を持っている。

この場所では建築が背景ではなく、物語の参加者だった。


慧が壁に触れた。


「前に二か月、ここにいた」


「何してた?」


「血を使う儀式魔術。組織の階級。全部を取引にする区画」


「似合いそう」


「褒めてないね」


「うん」


「分かってる」


零が、その短いやり取りを見る。


三年間、深さを演じ続けた人が、深くない会話を少し羨ましそうに見ていた。


こちらへ来た。


【滑川P・次回予告】


『夜城零は、三年間“最も悲劇的で深い人物”になることに成功していました』


成功していました。

不幸でした。


駄洒落を一つ言いました。

金曜が笑いました。

零が泣きました。


三万四千人が、その行だけ少し読む速度を落としました。

私は分かります。

全部、ログにあります。


次回、ESE重課金サポーター四十七名。

ただし、実在するカクヨムのギフトは審査にもランキングにも影響しません。

これはESEの悪い制度です。

念のため、非常に大事なので明記しました。


第19話「サポーター戦争」。


[記録済]


【ESE事後記録】

ゴシック区画:構造亀裂

夜城零:区画から分離

滞在:約3年

本来の願い:人を笑わせる

影指標:0.3%


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