第7話 手紙
五百年祭の直後、ルクス皇子からセレナの元に魔法便で手紙が届いた。
魔法便とは、魔力を込めることで直接本人に届く手紙だ。
手紙を開くと色っぽい内容ではなく、魔術に関する事ばかり書かれていた。
「ヴィー。ルクス様から手紙が来たの。さすが北の要塞と言われる帝国の皇子様ね。対魔獣系の魔術の知識は目を見張るものがあるわ。」
年頃なのに魔術が恋人のようになっている姉にヴィクトルは苦笑した。
同じ年の男性から手紙を貰って、この反応はないだろう。
ルクス様も大概だけどな・・・。
五百年祭の時に少し彼と話をしたが、姉に好意を抱いているように感じたのだ。
好きな女性に、この手紙はないだろう・・・。
セレナに見せられたルクスの手紙を見ながらヴィクトルは天を仰いだ。
「そんなに話が合うのならルクス皇子のところに嫁入りしたらいいんじゃないか?あの方が義兄になるなら、俺は反対しないぞ。」
「嫁入り?」
セレナにそんな発想はなかったが、話が合うのは間違いない。
見た目も格好いいと思うし、身分的にも皇子と王女でつり合いは取れている。
「そうねえ。でもお父さまもお母さまも私がカルディアスに留学することを反対したり、あまりあの国が好きじゃなさそうだしなあ・・・。」
「確かに、それはそうだな・・・。」
ヴィクトルも何となく同じ様に感じることがあったのか、セレナの意見に同意してきた。
「まあ手紙のやり取りくらいいいんじゃない。」
「そうよね。内容も魔術の話ばかりだし。」
セレナは手紙の内容を思い出し、クスクスと笑った。
「ただ父上たちには隠しておいた方がいいかもね。」
「そうね。ヴィーも黙っておいてね。」
こうしてセレナとルクスの秘密の文通が始まったのだった。
※
そして手紙のやり取りが三回目を超えた時。
『この前二人で考案した空間移動の魔法陣を試して、国境付近で会いませんか?』
ルクスからの手紙を読んでセレナは胸がドキドキした。
初めて会った時も素敵な人だとは思ったが、手紙のやり取りをする中で魔術以外でもいろいろ感性が合うと思うようになっていたからだ。
そして約束の日。
ヴァレンティンの国境付近の森の中で待ち合わせをしていた。
「ルクス様!」
「セレナ様、お久しぶりです。」
「ふふ。最後にお会いしてから一か月しか経ってませんけどね。」
二人は挨拶を交わすと、早速魔術理論について議論を始めた。
そして二時間後。
「ルクス様とお話していると時間が経つのが早いです。残念ですが、そろそろ城に帰らないと・・・。」
セレナは悲しそうな表情を浮かべた。
「僕も同じように感じていました。次回の約束をしてもいいですか?」
「ええ!」
セレナは嬉しそうに頷いた。
こうして二人は秘密の逢瀬を重ねていくことになった。




