第65話 最終章
カルディアス帝国が管理する皇族の系譜にはセレナが皇帝と記されていたが、表向きには二人が亡くなるまでルクスが表の皇帝、セレナが影の皇帝であるという立場を貫いた。
おしどり夫婦と名高かった二人の間には二男二女の子供が生まれた。
そして、セレナの跡を継いだのは第一子であった長女だった。
石像への魔力注入を行うにあたり、ほとんど疲労を訴えないセレナの様子から精霊女王の魔力は女性の方が適性があるのではないかという仮説が立てられた。
数は少ないが過去に皇帝を務めた女性についても研究が重ねられ、今のところその説が有力だろうと言われている。
結界の管理以外の皇帝の仕事をルクスに分担してもらったことで、セレナには自由になる時間が確保された。
その時間を使い、セレナは医療魔術の研究に力を注いだ。
余命わずかと宣告されていた実父のジュストや、身体が弱く長くは生きられないだろうと言われていた実の弟であるフェリクスを救いたいと思ったのだ。
セレナはその後、カルディアス皇族の家系に生じた変異を突き止め、医療魔術で二人の治療を行った。
ジュストはカルディアスの国民の平均寿命を超えるまで生き、長くセレナの支えになってくれた。
健康を取り戻したフェリクスも、その後愛する女性と出会い幸せな結婚生活を送ることが出来た。
セレナの死後、セレナが皇帝であったという事実やカルディアス皇族の置かれていた危機的な状況について大陸中に公表されることとなった。
大陸の平和を保つための責務を一部の人間だけに押しつけすぎたため、大陸自体が破綻寸前にまで追い込まれた。
大陸のことは大陸に住む全員で責任を負うべきであるということになったのだ。
その後、皇帝による石像の結界は保ちつつも対魔獣魔術の研究がカルディアス以外の国でも盛んに行われるようになった。
カルディアス皇族も直系だけでなく分家が作られ、その時の状況に応じて魔力の高い者が皇帝に選出されるように変化していった。
消滅の危機にあったカルディアス皇族を回復させ、破滅の危機に直面していた大陸を救った影の皇帝セレナ。
偉大な影の女帝と亡くなるまで彼女を支えた夫ルクスは、その死後も大陸中の人々から敬愛される存在となった。
そして特にその運命的な恋の話は歌劇や演劇となり長く愛され語り継がれることとなったのであった。
Fin.




