第64話 ルクスとソレス
「ルクス様。私の正直な気持ちをお伝えさせていただくと、いきなり現れて長年想い続けていた姫を横からかすめ取られたという思いはずっとありました。ですが、今はセレナ様が選ばれた相手があなたで良かったと思っています。」
「ソレス・・・」
「私ではセレナ様にあんな表情をさせることは出来ません。それに、今はあなたなら絶対にセレナ様を幸せにしてくださると信じることが出来ます。」
それを聞いてルクスは微笑んだ。
「嬉しい言葉だ。ありがとう。君の信頼に応えられるよう、必ずや彼女を幸せにすると誓うよ。」
その言葉にソレスも笑顔で頷いた。
「・・・ところで話は変わるが、大切な跡継ぎを半年も借りることになって、ヘルヴェス公爵家には何か礼をしたいと思っている。」
真剣な表情を浮かべるルクスに、ソレスは笑顔でそれを断った。
「お気持ちだけで十分です。」
「昨年の大雨で、ヴァレンティンは結構な被害が出たと聞いている。公爵領には大河が走っているから特に被害が大きかったとも。橋も幾つか落ちたのだろう?」
ソレスはハッとしてルクスを見た。
公爵領で農作物に大きな被害が出て、食料の買い入れに奔走したのは事実だ。
橋が崩落したのも。
ヴァレンティン全体での被害だったので、奪い合いになり農作物の買い付けにも苦労した。
橋の補修も資材の不足で予定より遅延している。
ここは見栄を張るところではないだろう。
ソレスは苦笑した。
「断らせる気がありませんね。」
「もちろんだ。表に出ず、ずっと陰で支えてくれた君には誠意を表したいからね。」
ソレスは諦めて、笑みを浮かべ頷いた。
「ありがとうございます。ありがたく援助を受けさせていただきます。」
それを聞き、ルクスもほっとしたように笑みを浮かべたのだった。
「ソレスはこれからどうするんだ?」
ルクスが話題を変えてきた。
「私のここでの仕事は終わったと思いますのでヴァレンティンに帰国しようと思っています。」
「そうか。寂しくなるな。」
口先だけでなくルクスが本心から言っているのを感じ、ソレスは心の中で苦笑するしかなかった。
そして、自分でも想像しなかったほど心から次の言葉が口から出た。
「セレナ様とお幸せに。」
この三日後、ソレスはヴァレンティンへと帰って行ったのだった。




