第61話 帰国
数冊の魔術書と日記帳を携え、二人は魔法陣を使いカルディアスに帰国した。
そしてカルディアスに着くと、真っ直ぐにジュストの執務室へと向かった。
途中で会った文官にドミニクを父の執務室へ呼んで欲しいと伝えると、ちょうど今そこにいるとの返事が返ってきた。
コンコン
ルクスが部屋の扉をノックした。
「父上。ルクスとセレナです。今、シルヴァヌスから帰国致しました。」
どうぞという声を聞き、部屋の中に入るとジュストとドミニクが同時に二人の方へ顔を向けてきた。
「二人共お帰り。シルヴァヌスは楽しかったかい?」
笑顔で尋ねてきたジュストに二人は頷いた。
「内密の話があるので、今からこの部屋に防音魔術をかけてもいいですか?」
「防音魔術?それは別にいいが・・・」
新婚旅行から帰るなりそんなことを言い出した息子に、ジュストは訝しそうな表情を見せた。
一方、父の許可を得たルクスは即座に部屋を覆う防音魔術を施した。
魔術がかかったのを確認すると、ルクスはジュストに近づき母の日記を手渡した。
「母上の日記です。シルヴァヌスの王城にある母上の部屋で見つけました。施錠魔術がかかっていましたが、僕が開錠しています。」
「イレーネの日記?」
「栞のところから読んでみて下さい。」
ジュストは不思議そうな表情でそれを受け取ると、栞が挟んであるページを開いた。
ジュストの後ろからドミニクも覗き込むようにして日記を眺めていた。
読み進めるに従って、ジュストの表情が強張っていった。
ある程度読んだところでジュストは日記を置き、目頭を押さえた。
立ち上がると、フラフラとルクスの方に歩み寄り彼を抱きしめた。
「自慢の長男が自分の子じゃないと知って、こんな嬉しい気持ちになるとは思わなかったよ。」
「父上・・・」
「イレーネは立派だ。今日まで事実を完璧に隠し通した。僕は全く気付かなかったよ。」
ジュストの声が涙でかすれていた。
「誓約をさせた者たちには事実を伝える必要はあるが、これを国内外に公表する必要はない。お前たちは既に夫婦なのだから・・・。」
ジュストは感極まったように言葉を詰まらせた。
ルクスから身体を離すと、ジュストは右手を差し出した。
「僕の娘を幸せにしてやってくれ。」
それは娘の幸せを願う父親の姿だった。
「はい。」
ルクスは笑顔で、その手を握り返したのだった。




