第59話 イレーネの日記
9月23日
私は昨日、ジュスト様と結婚した。
ジュスト様も突然押し付けられた私に戸惑っておられるようだった。
皇妃の務めとして初夜を迎えたが、身体と心がバラバラになるような感覚がした。
ジュスト様はいい方だけど、愛する対象にはならないだろうと思った。
ユリウス様、会いたい・・・。
9月25日
あまりの気持ちの悪さにレストルームで嘔吐してしまった。
まさかと思い、医療魔術で自分の身体を診てみると、お腹に赤ちゃんが宿っていた。
ユリウス様の子だ。
皇帝に嫁いだ皇妃が、皇帝以外の男性の子供を産むなどということは許されるのだろうか?
カルディアス皇族の現状をみれば、子供の命を取られることはないだろう。
しかし不貞を理由に私が実家に帰され、子供と引き離される可能性はあると思う。
それにカルディアス皇帝に娘が嫁いだことを喜んでくれた両親やヴィクトルにも申し訳が立たない。
私は事実を隠そうと決めた。
9月28日
つわりの辛さは魔術で出来るだけ軽減させ、あとは頑張って平気なふりをして乗り切るつもりだ。
その間に、シルヴァヌスからばあやと私の主治医をずっと務めてくれていたカルロス先生を呼び寄せた。
二人には誓約をしてもらい事実を打ち明け協力してもらうことになった。
10月10日
私はジュスト様の子を妊娠したと公表した。
担当の医師はカルロス先生じゃないと嫌だと我儘を言って、先生以外身体に触れさせなかった。
10月30日
妊娠により精神的に不安定になり母国での療養が必要であると、カルロス先生に診断書を書いてもらった。
そして、私はばあやとカルロス先生と一緒にシルヴァヌスに戻ってきた。
ユリウス様と結ばれた日から考えると5月15日が予定日になると先生から言われた。
4月15日
お腹はずいぶん大きくなった。
中から赤ちゃんが私のお腹を蹴っているのがわかる。
愛しいユリウス様の子に早く会いたい。
5月15日
早朝、私はカルロス先生の病院で密かに子供を産んだ。
わかっていたが、男の子だった。
初めて生まれた我が子と対面した時の感動は忘れない。
私の元に生まれて来てくれてありがとう。
愛してる。ユリウス様の赤ちゃん。
ユリウス様が以前、子供が生まれたらルクスと名付けたいとおっしゃっていた。
光という意味だ。
とりあえず今はルクスと呼ぶことにした。
6月5日
カルディアスに皇子が生まれたと連絡を入れた。
あまり本当の誕生日から離れるのも嫌だったので、帝国に伝えていた出産予定日である6月15日より少し早く生まれたことにした。
ジュスト様に子供の名前をルクスにしたいとお願いするとあっさり認めて下さった。
7月15日
ルクスを連れてカルディアスに戻った。
月齢にしては大きな赤ちゃんですねと言われることはあったが、大きく生まれたんですと言うと怪しまれることはなかった。




