第58話 イレーネの日記
聖教歴1789年
3月3日
お父さまから私がカルディアス帝国のユリウス皇太子殿下の妃候補に選ばれたと伝えられた。
私は魔術が得意なので、それが評価されたのだと思うととても光栄だし嬉しかった。
ユリウス様は私と同じ年で、今年二十歳になるらしい。
政略結婚とはいえ、気の合う方だったらいいのにな・・・。
3月10日
カルディアスの皇宮でユリウス様と初めてお会いした。
とても素敵な方で、会った瞬間に私は恋に落ちてしまった。
お話してみると穏やかな優しい方で、ますます好きになった。
ユリウス様も私のことを気に入ってくださり婚約することが正式に決定した。
あんな素敵な方と夫婦になれるなんて夢みたい。
3月15日
カルディアスに嫁ぐことが正式に決まり、私は誓約をしてカルディアス皇族の秘密について伝えられた。
皇帝にそんな重責があるなんて・・・。
結婚したらユリウス様をしっかり支えて差し上げたいと思った。
カルディアス皇族は魔力が高いものの、身体が丈夫でない方が多いため若くして結婚し跡継ぎを儲けることが推奨されているらしい。
それもあり、私たちの結婚式は半年後に決まった。
9月22日、ユリウス様の二十歳の誕生日だ。
8月22日
結婚式の準備で8月に入ってからカルディアスに滞在したので、ユリウス様とも何度もお会いすることが出来た。
何度会っても、こんな素敵な人が私の旦那様になるなんて夢みたいと思ってしまう。
一か月後には結婚式を行うのだけど、私は明日から結婚準備のため一旦シルヴァヌスに戻らないといけないことになっていた。
一か月近く会えないことを思うと、二人共お互いを求める気持ちが抑えられなくなり、ついに私たちは結ばれた。
愛しい人から愛し愛され、忘れることの出来ない人生で一番幸せな時間だった。
8月23日
昨日、ユリウス様が少し咳をしておられたのが気になった。
彼の体調が心配だったが、シルヴァヌスでやらなければいけない準備があるため泣く泣く帰国することになった。
9月9日
朝から身体が熱くだるかったので部屋で休んでいた。
するとお父さまが血相を変えて、私の部屋に入って来た。
「ユリウス様が風邪をこじらせて亡くなった。」
聞いた瞬間、私は気を失った。
9月20日
その後、ユリウス様を含め五人のカルディアスの皇子が感染症で亡くなられた。
これ以上、カルディアス皇族が減っては近い将来大陸の結界を守ることが出来なくなる。
そのためユリウス様のために準備された結婚の支度が、ユリウス様の異母兄弟で繰り上がり皇太子となった皇子に使われることに決定した。
そうして私は二日後、会ったこともない第六皇子のジュスト様に嫁ぐことになった。




