第57話 イレーネの遺品
手が滑ったのかしら?
セレナがそう思った瞬間、茫然とした表情のルクスがセレナに駆け寄ってきた。
えっ?と思う間もなく、ルクスにギュウっと抱きしめられた。
「セレナ、セレナ、セレナ・・・」
何かに取りつかれたようにセレナの名前を呼ぶルクスに、セレナは自分も腕を回して抱きしめ返した。
「ルクス?」
心配そうにルクスの名前を呼ぶと、ルクスは熱に浮かされたように呟いた。
「セレナ。愛してる。僕と結婚して。」
「?」
二人は半年前に結婚し、すでに夫婦となっている。
「ルクス・・・どうしたの?」
セレナは驚いて尋ねた。
「僕と結婚して、僕の子供を産んでくれ。」
ルクスが叫ぶように声をあげた。
「!」
ルクスの言っていることの意味が理解できず、言葉を返すことが出来なかった。
そうしたかったのに出来ないから、あれ程悩んでいたのだ。
ルクスはそこでハッと気づいたような表情を浮かべ、セレナから少し身体を離した。
肝心なことをセレナに伝えていなかったことにようやく気付いたのだ。
「セレナ。聞いてくれ。僕は父上の子じゃなかった。」
「えっ?」
カルディアス皇帝の息子が皇帝の子でないなどあり得るのか?
もし、それが事実ならジュストは何故それを知らなかったのか。
意味が分からずセレナは戸惑った。
ルクスはセレナから身体を離すと、先ほど落とした日記帳を拾いセレナに見せた。




