第50話 シルヴァヌス
シルヴァヌスでは、連絡を受けていた国王のヴィクトルが自ら出迎えてくれた。
薄茶色の髪と目の穏やかそうな男性だった。
「叔父上、お久しぶりです。」
笑顔で挨拶をしたルクスに国王も笑みを浮かべた。
「ルクス・・・陛下。」
しかし、ヴィクトルはカルディアスの皇帝になった甥をなんと呼んでいいのか一瞬迷ったようだった。
「ハハ。小さい頃のようにルクスでいいですよ。叔父上は僕の叔父なんですから、以前のように接していただけた方が嬉しいです。」
「そうか・・・よく来てくれたな。」
「こちらは妻のセレナです。」
「おお、皇妃様。ようこそシルヴァヌスにおいで下さいました。歓迎いたします。」
ヴィクトル国王には事実を伝えていない。
誓約させるほど今後深くかかわることはないだろうと、ジュストが判断したのだ。
「セレナです。この度はお世話になります。」
「シルヴァヌス国王のヴィクトルです。ルクス陛下の母であるイレーネは私の姉になります。姉が亡くなってからはあまり交流がありませんでしたが、陛下が幼い頃は、姉についてしばしばこちらを訪れておられたので、親しくさせていただいていました。」
優しそうな人柄が話し方から伝わってくる。
セレナも笑顔で頷いた。
「陛下はヴィクトルというお名前なのですね。私の一つ下の弟もヴィクトルという名前なので、とても慕わしい気持ちになりました。」
セレナの言葉にヴィクトル国王は破顔した。
「偶然ですね。私と姉も一つ違いなのです。セレナ様も魔術に大変優れていらっしゃるという話を伺いましたが、姉も魔術に長けていたんですよ。共通点が多いですね。」
国王の言葉にセレナは驚いた。
セレナの魔術好きはそんなに有名なのだろうか。
「まあ、そんな噂があるのですか?」
「ヴァレンティンの五百年祭に出席させていただいたシルヴァヌスの大臣から聞きました。」
にこやかに微笑むヴィクトル国王を見ながらセレナは思いだした。
あ、あの話の長かった男性か⁉
「お恥ずかしい限りです・・・。」
頬を赤らめるセレナにヴィクトルは懐かしそうな表情を浮かべた。
「姉も本当に魔術が好きで部屋にも魔術書がたくさんあるんです。姉の部屋はそのままにしてあるので、気に入った魔術書や物があれば持ち帰っていただいても大丈夫です。」
「母上の部屋が・・・」
イレーネが亡くなったのは十年近く前だ。
ルクスが驚いたように呟くと、ヴィクトルが寂しそうな表情を浮かべた。
「いい加減整理しないといけないとは思っていたんだが、姉上の顔が思い浮かぶと処分しがたくてね。ルクスが来てくれたのはいい機会かもしれない。」
「ありがとうございます。滞在中に見させていただきます。」
ルクスの返事にヴィクトルも嬉しそうに頷いたのだった。




