第45話 ラングドック
「セレナ陛下。陛下のご即位を心より喜びお祝い申し上げます。どれほどの期間カルディアスの民はあなたの誕生を待ち望んだことでしょう。大陸の滅びが目前に迫ったこの時期に、あなたは神が遣わせた救世主です。私の命のある限り、陛下に絶対の忠誠を誓うことをお約束いたします。陛下に、そして帝国に永遠の繁栄がもたらされることを願っております。」
感極まりすぎたのか、最後の方はヒューゴの声は涙声になっていた。
「ありがとうございます。不慣れな事や知識が足りていないところも多々あると思うので、支えて頂けると助かります。」
ヒューゴの反応は概ね他の領主と同じようなものだった。
しかし皇帝への忠誠心が特に強いと言っていた分、ヒューゴが受けている感動もより大きいように思えた。
一方、先ほどまで勝ち誇った様子だったコルネリアは青ざめ信じられないという表情を浮かべていた。
「でも、セレナ様が皇帝陛下だとしても、どちらにしても皇族の数を減らすわけにはいかないですよね。だから私をルクス様の側妃に・・・」
必死に言い募るコルネリアを見てセレナは思った。
ああ、この子は別に皇妃になりたいわけじゃなくて、ルクスのことが好きなのね。
そして、そのコルネリアの言葉を拒否したのはルクスだった。
「次の皇帝はセレナの子だ。私が側妃などを迎えれば、事態がややこしくなる可能性があるし、そんなものを持つつもりはない。」
きっぱり言い切ったルクスにコルネリアは傷ついた表情を見せた。
「でも・・・」
まだ、何か言おうとするコルネリアにルクスが畳みかけた。
「私はセレナを悲しませるようなことはしたくないんだ。理解してくれ。」
俯いたコルネリアにヒューゴが声をかけた。
「コルネリア。部屋へ下がりなさい。皇帝陛下やご夫君を煩わせることは私が許さん。」
心強い味方だった父が、恋敵の女の下僕となってしまったことをコルネリアは悟った。
大陸の命運を一手に握る女帝に自分が敵う訳がない。
コルネリアは目に涙を浮かべ、唇を噛みしめながら無言で頭を下げ部屋を出て行った。
セレナは最後に彼女に睨みつけられたように感じた。
「陛下。申し訳ございません。娘はルクス殿下を慕っていたものですから。二度と陛下とご夫君の御心を乱さぬようしっかり指導いたしますので、今回はご容赦下さい。」
頭を下げるヒューゴに、セレナは曖昧な笑みを浮かべて頷いたのだった。




