第43話 ラングドック
ラングドックを訪れる当日、セレナに月の物が訪れた。
「少しだるそうだね。大丈夫?」
ルクスが心配そうに尋ねてくれた。
「ええ。さっき少しお腹が痛かったけど、今は治まったわ。」
今回はジュストの体調が悪く、セレナとルクスの二人と近衛での訪問となった。
魔法陣を使ってラングドックへ移動すると、既に領主一家が皇帝の訪れを待ち構えていた。
「ルクス陛下、セレナ妃。ようこそおいで下さいました。」
前に進み出て頭を垂れた男性が領主のヒューゴだろう。
「セレナ。彼がヒューゴ・オリオール。ラングドックの領主だ。」
ルクスに紹介され、ヒューゴがもう一度セレナに向かって頭を下げた。
「お初にお目にかかります。ヒューゴ・オリオールです。よろしくお見知りおきを。」
「セレナです。この度はお世話になります。」
ヒューゴはにこやかで丁寧な物腰だったが、雰囲気的にセレナを大歓迎しているようには思えなかった。
やはり娘のコルネリアが望んでいた地位を奪った娘と思っているのだろうか。
「妻と娘です。」
後ろに控えていた二人の女性が進み出てきた。
「コルネリア・オリオールです。」
コルネリアは少しきつそうだが、美しい少女だった。
口元には笑みを浮かべているものの、セレナを見る目には全く親しみを感じないどころか挑むような色を宿していた。
うわあ、ルクスの言ってた通りね。
セレナは苦笑しながらコルネリアに挨拶を返した。
「ヒューゴ、石像へ行く前に少し話がしたい。奥方とコルネリアにも一緒に聞いてもらいたいが、誓約が必要な内容だ。部屋を用意してもらえるか?」
ルクスの言葉にヒューゴが目を瞬かせた。
「誓約?コルネリアもですか?」
誓約をするには身体に負担がかかる。
娘もと言われ、渋い顔をしたヒューゴにルクスが畳みかけた。
「カルディアス皇族に関するかなり秘匿性の高い内容が含まれるものだから、全ての領主に誓約をさせている。それを拒否するようなら領主を交代してもらうことになる。」
「私自身は構わないのですが、他の領主の家族の方も皆さん誓約に応じられたのですか?」
「家族まで誓約が必要かどうかは私が判断している。」
きっぱり言い切ったルクスにヒューゴが悩ましげな表情を浮かべたが、そこにコルネリアが割って入った。
「お父さま。私、誓約致しますわ。」
「コルネリア・・・。わかりました。では、私の執務室で行いましょう。」
娘本人の同意が得られて、領主の執務室へと移動することになった。
セレナは黙ってルクスとヒューゴたちのやり取りを聞いていたが、ラングドックに到着してから再びお腹の痛みを感じていた。
そして近くに立っていたコルネリアに小声で話しかけた。
「私、今日から月の物で少しお腹が痛むんです。」
「まあ、大丈夫ですか?では、レストルームをご案内させますわ。」
コルネリアは何故か勝ち誇ったような表情になり満面の笑みを浮かべそう答えた。
「ルクス。お腹が痛むからレストルームに行ってくるわ。」
ルクスにそう囁くと彼は心配そうな表情を浮かべた。
「大丈夫?」
「ええ。大したことないわ。治まったらすぐ執務室の方へ行くわ。」
「ああ、では先に行って誓約の準備をしておくから、ゆっくりでいいよ。」
そう言い残し、ルクスは領主家族と共に先に執務室の方に移動していった。
そしてセレナは案内の者についてレストルームへと向かったのだった。




