第42話 ラングドック 前日
ロレンソを訪れてから二か月。
明日はラングドックという領地を訪れることになっていた。
前日の夜、寝室でルクスがラングドックについて説明してくれた。
「ラングドックはカルディアスの中でも領地が広い方だし、北に接する面積も大きい。魔力を注ぐのに時間がかかるかもしれない。領主のヒューゴは皇帝への忠誠心がとても高く人格者だし特に問題ない人物だ。」
ルクスの説明を聞きながらセレナは少し違和感を覚えた。
何となくだが、話し方がいつもより歯切れが悪いように思ったのだ。
「何か気になることがあるの?」
ルクスが苦笑した。
「君には隠し事が出来ないね・・・。今から言うつもりだったんだけど、ヒューゴにはコルネリアという一人娘がいるんだ。魔力が強くて僕の妃候補の一人だった。」
「まあ。」
セレナは手で口元を押さえた。
ルクスはカルディアスの皇太子だったのだ。
そういう候補の女性が一人もいなかったはずがない。
「コルネリア自身がその話に乗り気でね。僕は二年前から、引継ぎも兼ねて時々父上の仕事に同行していたんだけど、かなり積極的にアプローチしてくる人だったんだよ。」
ルクスはその時のことを思い出したのか、うんざりした表情を浮かべた。
ルクスからその女性への好意はないように思えたが、話を聞いただけでセレナはモヤモヤしたものを感じた。
「頭では分かっているけど、聞くと妬けちゃうわね。」
「妬いてくれるの?」
ルクスは少し嬉しそうにセレナを見た。
「そりゃあ・・・」
もじもじするセレナをルクスが抱きしめた。
「ラングドックでは、領主のヒューゴだけでなく奥方とコルネリアにも誓約をさせるつもりだ。彼女の性格なら、きっとセレナが皇帝だということを聞かないと僕を諦めてくれないと思うからね。」
ルクスの腕の中でセレナは頷いた。
「誓約を交わす前、もしかしたら彼女が君に失礼なことを言ったり嫌な態度を取るかもしれないけど、気にしないようにして欲しい。」
「わかったわ。」
セレナがなるべく嫌な思いをしないよう、あらかじめラングドックの話をしてくれたのだろう。
自分を大切にしてくれる優しい夫に感謝して、セレナはルクスを抱きしめたのだった。




