第37話 オストマルク
領主の館がある敷地の中に建てられた聖堂に精霊女王の石像は設置されていた。
皇城のものとは異なり水晶玉は無く、女王の像は胸の前で手を組んでいた。
「私は聖堂の外に控えております。終わりましたらお声かけ下さい。」
ブルーノはそう言うと聖堂から出て行った。
「やり方は基本的に帝位の引継ぎの時と同じだ。女王の両手に包み込むように触れ魔力を流す。ただ、広大な領土にまんべんなく結界を張らなくてはならないから、時間がかかる。魔力は少しずつゆっくり流すんだ。勢いをつけすぎると身体中の魔力を急に持っていかれるから気を付けるんだよ。」
ジュストに注意されセレナは頷いた。
そして女王の手に両手で触れると目を閉じた。
ゆっくり流すイメージで魔力を手に込めていった。
すると頭の中に黒く塗りつぶされたオストマルクの地図が浮かんできた。
魔力を流していくことでその地図が領主の館を中心に徐々に金色に変化していくのが感じられた。
しかし、あと少しというところで焦ってしまったのが良くなかったのかもしれない。
それまで一定のペースで流してきた魔力に勢いをつけてしまった。
「あっ」
その瞬間もの凄い勢いで身体から魔力が引っ張られていくのを感じた。
「「セレナ!」」
ジュストとルクスが同時に名前を呼ぶのを聞いたのを最後にセレナは意識を失った。
※
セレナが目を覚ますと、知らない部屋のベッドの上に寝かされていた。
あれ?
私、聖堂で倒れて・・・?
セレナが倒れる前のことを思い出していると、横からルクスの声が聞こえた。
「セレナ、気分はどう?」
ルクスが心配そうな表情を浮かべながら尋ねてきた。
自分を覗き込むルクスをセレナは見上げた。
「今は全然大丈夫よ。私、聖堂で倒れてしまったのね。」
「ああ、魔力を流す時、最後に勢いをつけすぎてしまったみたいだね。」
セレナはしゅんとした。
「事前に注意されていたのに・・・。」
「初めてだし仕方ないさ。父上も慣れない間は何度もやってしまったとおっしゃっていた。」
「そうなの?慣れれば大丈夫なのかしら?ところで私、どれくらい眠っていたの?」
「二時間くらいだ。この後、領主が夕食を一緒にと言っていたけどどうする?体調が優れないなら断ってもいい。」
セレナはふと自分のお腹を押さえた。
「いただくわ。魔力を沢山使ったからかしら?お腹は空いているみたい。」
それを聞いてルクスが笑顔になった。
「食欲がありそうで良かった。今から夕食を頼んでくるよ。あと、父上にもセレナが目覚めたと報告してくる。すごく心配していたからね。」
「お父さまが・・・。」
セレナの呟きにルクスが少し目を細めた。
「戻ってくるまで、もう少し休んでいて。」
そう言ってルクスは部屋を出て行った。




