第29話 ルクスとソレス
言葉が出ないルクスにヴィクトルは悲しそうな表情を見せた。
「ソレスにも姉の意思を尊重するよう伝えてあります。姉が他の者を選ぶようなら、その時は姉さんの意思を叶えてあげて下さい。」
「・・・・・・わかりました。」
ルクスもようやくそれだけ言うことが出来た。
ヴィクトルも何とも言えない複雑な表情になった。
「このような失礼なことをお伝えして申し訳ありません。あなたの置かれた状況も大変であることは十分理解しています。でも、私は姉が不憫で、少しでも心が穏やかに過ごせるようにしてやりたいんです。」
初めて会った時も、セレナとヴィクトルが仲のいい姉弟であることは感じられた。
セレナと二人で会うようになってからも、弟に対する彼女の信頼や愛情がゆるぎないものであることは言葉の端々から伝わってきた。
「ええ、そうですね。あなたと同じくセレナの弟として、私も彼女を支えていきたいと思っていますよ。」
自嘲するような影のある笑みを浮かべそう言ったルクスをヴィクトルは複雑な思いで見つめた。
こんな暗い笑みを浮かべる方ではなかったのに・・・。
今回の結婚がルクスにも暗い影を落としていることを感じ、ヴィクトルはやるせない気持ちになるのを止めることが出来なかったのだった。




