第26話 ソレス
「お前にとっても酷な話だということは分かっている。でも、姉さんにしたら全く知らない男よりはお前の方がいいだろう?」
「・・・セレナ様は了解されているのか?」
ソレスは絞り出すように尋ねた。
「いや、昨日の今日だ。さすがにそんな話は姉さんに出来ないさ。」
ヴィクトルが苦笑した。
「でも、帝国に姉さんの意向を伝えたら、急ピッチで話は進むだろう。帝国の状況を考えれば、跡継ぎに関することを早急に求められる可能性も高い。その場合、お前が側にいれば姉さんも安心だろう。恋をする対象と思ってなくても、将来はソレスと結婚するんだろうなくらいは姉さんも考えたことはあるはずだ。」
ヴィクトルの言葉にソレスは悩んだ。
ソレスにとっても残酷な話だ。
愛しいセレナと結ばれても、夫と名乗ることは出来ず、生まれた子はルクス皇子の子として扱われる。
目をつぶり、どうするか考えた。
『私のお菓子もソレスにあげる。』
『ソレス。こっちよ。私と手をつなぎましょう。』
『新しい魔法陣を思いついたの。ソレスにも見せてあげる。』
幼い頃からの明るく眩しいセレナの笑顔が次々と頭の中に浮かんだ。
セレナ様はこの話を聞いて、きっと大きなショックを受けただろう。
それこそソレスが受けたものより何倍もの衝撃に襲われたに違いない。
セレナを支えてあげたい。
ソレスの中に確固とした気持ちが生まれた。
「わかった。その話受けよう。」
ヴィクトルはホッとした表情を浮かべソレスを見た。
「すまない。お前にも悪いと思ってる・・・姉さんの輿入れにヴァレンティンの近衛騎士として随行できるよう手配させてもらう。」
「ああ、カルディアスに行くと決めたからにはセレナ様に相手として選んでいただけるよう頑張るさ。」
ソレスは心を決めたのか、明るい笑顔で宣言した。
「頼んだぞ。」
ヴィクトルは感謝の意を込めて、幼馴染の肩をこぶしで叩いたのだった。




