第24話 ソレス
両親から姉の決断を聞いたヴィクトルは、その足で騎士団の訓練場を訪れた。
「ソレスはいるか?」
入り口付近にいた騎士に尋ねると、騎士は奥の方を指さした。
「あちらにいらっしゃいます。」
ソレスは他の騎士と模擬戦をしているようだった。
それが終わってから声をかけようと、ヴィクトルは訓練場の端に寄りソレスの試合を眺めることにした。
ソレス・ヘルヴェスはヘルヴェス公爵家の嫡男でヴィクトルと同じ年だ。
ヘルヴェス公爵家は代々軍関係の仕事に就くことが多く、現当主も騎士団の総帥を務めている。
ソレスも将来は公爵家を継ぐものの、幼い頃から騎士団に所属し訓練にも参加しているのだ。
茶色い髪に緑の目の男らしい精悍な青年だ。
そして、姉セレナの婿候補として筆頭に挙げられていた人物だった。
はっきり婚約を交わしているわけではなかったが、セレナが国内で降嫁出来る身分の貴族で年回りの合う男性は限られている。
そして、お互い幼い頃から付き合いもあり、セレナとも親しくしている。
そのため彼が筆頭候補と言われていたのだ。
なによりソレスはセレナのことを女性として好いている。
それは幼馴染として相談を受ける中で、本人から聞いているので間違いないことだ。
でも、姉さんは分かってないんだよなあ・・・。
セレナはソレスのことをヴィクトルと同じ可愛い弟と思っているのだ。
幼い頃の一歳の差は大きい、しかも小さい頃は女の子の方が成長が早かったりする。
ずっとセレナがヴィクトルやソレスの面倒をみてあげる側だったのだ。
今でこそ身体もセレナより大きいし、もしかすると精神的にも彼女より大人びているかもしれないが、セレナの中では弟分として世話してあげた記憶が強いのだろう。
模擬戦が終わり、ソレスはヴィクトルの存在に気が付いたようだ。
全身に汗をかいたまま、こちらに走ってきた。
「殿下。どうかされましたか?」
二人は幼馴染なので、二人きりの時には対等に話をしているが、他の者がいる前では王族と臣下という形をきっちり守っている。
「少し話したいことがある。時間を貰えるか?」
「ええ、大丈夫です。」
訓練場を離れ、人気のない所まで来るとソレスが声をかけてきた。
「どこに行くんだ?こっちは王族の居住スペースだろう。」
「込み入った話だし、他の者に聞かれたくない。俺の部屋で話そう。」
「俺、汗だくだけどいいのか?」
ヴィクトルは汗でぐっしょり濡れたソレスにちらっと目を向け、一瞬苦悩の表情を浮かべたが苦笑して頷いた。
「俺の服を貸すから部屋で着替えろ。」
そんなに急ぐ話なのか?
ソレスは少し不思議に思いながら、ヴィクトルの後に続き彼の部屋に入った。
部屋でタオルと着替えのシャツを渡された。
汗を拭き着替え終わり、ソレスが対面に置かれたソファに座るとヴィクトルが真剣な眼差しでソレスを見つめてきた。
「今から話す内容はかなり秘匿性の高いものが含まれる。他言出来ないよう誓約をして欲しい。」
「誓約?」




