第21話 宰相ドミニク
ジュストの身体を寝台に運び、侍医に診てもらった。
「今は呼吸は落ち着いていますが、最近陛下の体調は急速に悪化されていましたし、そう長くはない可能性も高いと思います。」
「そんな・・・」
青ざめるルクスに侍医が慰めるように声をかけた。
「ご兄弟の中では、陛下は長命な方です。しかし、カルディアス皇族の血筋である限り・・・。」
おじ達は皆、十代・二十代で亡くなっている。
ルクス自身も長生きは出来ないだろうという覚悟は常にあった。
そこに帝国で宰相を務めているドミニクが入室してきた。
「ルクス殿下。陛下のご容体は?」
「今は落ち着いているが、長くはないかもしれないそうだ。」
ドミニクは悲愴な表情を浮かべた。
十九歳のルクスや弟の皇子達にはまだ子はいない。
ジュストが亡くなれば、カルディアス皇族は年若い四人の皇子のみになる。
その未来は・・・。
そんな表情を浮かべたドミニクを見て、ルクスは思った。
父上はドミニクにセレナの存在を話していないのか?
まあ、先ほどヴァレンティンから戻ったとおっしゃっていたし、きっと事実を確認してから話そうと思っておられたんだろうな。
セレナは帝国がこの三百年待ち望んだ待望の皇女だ。
言えばドミニクが喜ぶことは分かっていた。
しかし、彼にセレナのことを話すと、もう後戻りは出来なくなる。
一瞬魔が差しかけたが、ルクスはため息を吐き決意した。
どうせ遅かれ早かれ明らかにされることだ。
「ドミニク。話がある。別室で話せるか?」
※
暗く沈んだ様子のルクスを見て、ドミニクが不安そうな表情を浮かべた。
まさか、ルクス皇子も体調が悪いとか?
もし、そうであればカルディアス帝国の崩壊は更に目前に迫ることになる。
「お話とは何でしょうか?」
ドミニクは緊張した面持ちで尋ねてきた。
「ドミニクは父上が皇帝になる前に交際していた女性がいたことを知っているか?」
「えっ?」
思わぬことを聞かれ、ドミニクは驚きの声をあげた。
「いえ、そのような事は把握しておりませんが。そんな方がいらっしゃったのですか?」
「ヴァレンティンの王妃マイラ様だ。」
「ヴァレンティン?」
話の見えないドミニクは不思議そうな表情を浮かべた。
「マイラ様はヴァレンティンで密かに父上の子を出産されていたんだ。」
「なんと!」
数少ないカルディアス皇族が一人でも増えることは喜ばしいことだ。
ドミニクの顔が輝いた。
「陛下が帝位に就かれる前ということは、ルクス殿下より年が上だということですか?」
ルクスは頷いた。
「同じ年だが、誕生日は五月十五日。僕より一か月ほど年長だ。」
ルクスの誕生日は六月五日である。
カルディアスの皇帝は一応長子が継ぐことになっている。
しかし、同じ年齢で、ましてや一月くらいの違いであれば外国で過ごしていたということを考えてもルクスがそのまま帝位を継ぐということで問題ないだろう。
「なんと喜ばしいことでしょう。早速帝国にお越しいただけるよう手配いたしましょう。」
そこでドミニクははたっと気が付いた。
慶事のはずなのに、ルクスの表情はずっと冴えなかった。
「何か問題のある方なのですか?」
「・・・彼女はヴァレンティンの王女だ。」
「彼女・・・・・・皇女様なのですか‼」
ドミニクは目を見開いた。




