第20話 皇帝の執務室で
「ヴァレンティンに帰国したマイラはそこで妊娠に気付き、当時王太子だったレックス陛下が腹の子ごと自分が引き受けると言ってマイラに結婚を申し込んだそうだ。」
ルクスは膝の上に置いた手を握りしめた。
「そんな・・・、ではセレナは・・・」
「お前の姉だ。」
ルクスの顔から完全に血の気が引いた。
重苦しい沈黙の時間が流れた後、絞り出すようにルクスが口を開いた。
「ではセレナを皇帝にされるのですか?」
ルクスはカルディアス皇族なので、帝国の事情は元から知っている。
「まだ決まっていない。そうするのが一番いいのだろうが、その場合事実を明らかにする必要があるし、マイラとレックス陛下が聖教会に裁かれることになる。私はお前とセレナが結婚し、セレナを影の皇帝とすることを提案してきた。」
実の姉弟で結婚しろというのか?
ルクスは驚いて父を見た。
「表向きはお前に皇帝を名乗ってもらうことになる。そして、セレナにはお前以外の男性との間に子を儲けてもらうことになるだろう。」
「⁉・・・父上はそれをセレナに言ったのですか?」
ルクスは目の前にいる父を殴りたくなった。
そんなことをいきなり言われてセレナはどれほど傷ついただろう。
そして、優しい彼女は両親を守るためにきっとその選択肢を選ぶだろう。
「私だって、そんなことは言いたくなかった。初めて会った娘にあんな目で見られて・・・。でも、どうしようもないだろう?」
やるせない表情の父を見て、ルクスは父へ投げつけようとした罵倒の言葉を飲み込んだ。
お互い視線を合わさず、長い沈黙が訪れた。
と、その時。
ジュストが右手で胸を押さえた。
眉間にはしわが寄り、額には大量のあぶら汗が浮かんでいる。
「父上?」
ルクスはジュストに駆け寄った。
「ちょっと疲れたんだと思う。悪いが休ませてくれ。」
「侍医を呼んで来ます。」
ルクスは部屋を飛び出した。
そして医師を連れて戻った時に見たのは、机の上で突っ伏して意識を失っている父の姿だった。




