第19話 皇帝の執務室で
カルディアスに戻ったジュストはもう一仕事しなければならない事があった。
「ルクスを呼んでくれ。」
側近に息子を呼ぶよう伝えると、執務室の椅子に座り目を閉じた。
人生で唯一心から愛した女性との子供かもしれない。
そう思うとセレナと会う前は久しぶりにワクワクするような高揚感を感じた。
実際に会ったセレナは自分に容姿が似ていた。
やはり・・・と思いつつ、それだけで確定できるわけではない。
ジュストにニコニコと話しかけてくるセレナを可愛いと思ったし、目新しい魔道具を見せるとキラキラ目を輝かせた彼女は昔のマイラを思い出させ愛しいと思った。
それが事実を伝えた後、セレナが自分を見る目は親の敵を見るようなものだった。
お互い、今日まで自分たちの血がつながっていることを知らなかったのだ。
今さら父として慕ってくれというつもりはない。
「だけど、あの視線はこたえたなあ。」
ジュストは自嘲するように薄く笑った。
そして青ざめるマイラを愛おしそうに抱きしめるヴァレンティン国王と、信頼するように彼に身を預けるマイラを見てショックを受けた。
別れを告げたのは自分からだし、あの時の傷ついたマイラの表情は忘れられない。
自分に二人のことをどうこう言う資格がないことは分かっている。
「でも、少し疲れたな・・・。」
ジュストが大きなため息をついた時、執務室の扉がノックされた。
「父上。ルクスです。お呼びと伺いましたが。」
「ああ、入って。」
父の言葉を受け入室したルクスは父を見てギョっとした。
「父上。顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」
青ざめ生気のない父は、今にも儚くなってしまいそうな雰囲気すら漂っていた。
「私はそんな酷い顔をしているかい?話くらいは出来るから大丈夫だ。そこに座って。」
気づかわしげに父を見ながらルクスは席に着いた。
「今、ヴァレンティンに行ってきた。」
「!」
ルクスが目を見開いた。
父は偉大な魔術師だし、魔術でヴァレンティンに飛ぶことは出来るだろうが、なぜ自分に一言もなくそんなことを・・・。
「セレナに会って来た。」
「セレナに?」
息子の結婚相手として気になるのは分かるが、息子に内緒で異国まで飛んで見に行く必要があるのだろうか?
「ルクス。心して聞いてくれ。・・・セレナは私の子だった。」
「は?」
何を言われたか分からず、ルクスは間の抜けた表情になった。
「マイラがカルディアスに留学していた時、私と彼女は恋人同士だったんだ。しかし、兄上たちが次々亡くなり突然私に皇帝の座と兄上の婚約者が回ってきた。」
「・・・」
不穏な話の流れにルクスは眉をひそめた。




