第2話 出会い
カルディアス帝国は横に長いガリア大陸の北半分を占める大陸一の大国だ。
そして魔術大国でもある。
皇帝一族は謎に満ちているが、精霊女王の血を引くという伝説もあり、とても高い魔力を有していると言われている。
またその魔術力の高さで、北の大地から大陸に襲い掛かる魔獣を食い止めることで南に位置する国々の防波堤の役割を果たしている。
そのためどの国もカルディアスには逆らうことは出来ず、大陸の覇権を握っている国といっていいだろう。
そして、魔術好きのセレナにとって憧れの国なのだ。
セレナ達の母であるこの国の王妃マイラはヴァレンティンの侯爵家出身だが、マイラの父であるラウレンティウス侯爵は魔術庁の長官をしている。
マイラは小さい頃から父である侯爵について王宮内にある魔術庁をよく訪れていたので、当時王子だった父レックスと幼馴染になったのだ。
その母も昔、カルディアスに魔術留学をしていたことがあったらしい。
セレナも母や祖父に似て魔力が多いため、祖父の元で魔術師棟に入り浸っている。
王位はヴィクトルが継ぐだろうから、セレナは魔術師になりたいと思っている。
そして出来ればいずれは尊敬する祖父のような魔術庁の長官になれればいいなという夢を密かに抱いていた。
私もカルディアスに留学したいのに、お母さまやお父さまが駄目だと言うのよね・・・。
”お母様も昔留学してたんでしょう?”
セレナが反論しても、一介の侯爵令嬢と王女では立場が違うとか何とか言われ相手にされないのだ。
父に相談しても、”可愛い娘が外国に行くのは寂しいから許可できないな。”と言われればセレナにはどうしようもなかった。
「ようこそ。ヴァレンティンへ。第一王女のセレナです。」
憧れの魔術大国の皇子だ。
セレナは満面の笑みを浮かべ挨拶をした。
ルクス皇子も少し頬を染めながら笑みを浮かべた。
「ヴィクトル王子から伺いましたが、セレナ様は魔術がお好きだとか。」
「ええ、将来は魔術師になるのが夢なんです。カルディアスにも是非魔術を学びに行ってみたいのですが、両親の許可が出なくて・・・。」
「ご両親の?王妃様は昔カルディアスに留学されていたこともあったと伺いましたが。」
「母はその時侯爵令嬢でしたから、一貴族と王女は違うとか言われて・・・。」
セレナ自身、母の言葉に納得していないので説明する口調も歯切れが悪かった。
そして、ルクスもセレナの言葉に眉をひそめた。
「そんなことはありません。他の国の王族の方もたくさん留学されていますよ。私から王妃様にお話してみましょうか?」
セレナは瞳を輝かせた。
「本当ですか?」
嬉しそうに笑みを浮かべたセレナにルクスも微笑んだ。
そこで、それまで黙って二人の会話を聞いていたヴィクトルが口を挟んだ。
「でも、父上も反対しているからなあ。可愛い娘を外国に出したくないって言ってただろう。」
ヴィクトルの言葉にセレナはシュンとした。
父は一人娘のセレナを可愛がってくれている。
その愛情を疑ったことはないが、やや過保護なところがあるのだ。
「そうよねえ・・・。」
セレナも遠い目になった。
今まで散々訴えて、ずっと却下されてきたのだ。
父と母の二人共を説得するのは難しい気がする。




