第16話 秘密の会談
「ネリッサの予言・・・」
マイラが呟いた。
ネリッサは数々の災害や天変地異を予言し、幾度となく大陸を救った歴史上最も偉大な預言者として大陸中に知れ渡っている人物だ。
「我々はその予言を信じ、祈るように女児の誕生を待ちわびました。なるべくたくさんの子が持てるように側妃を迎えたり、帝位に就かなかった皇族にも子作りが推奨されました。」
だんだん状況が把握出来るようになり、マイラが絶望的な表情を浮かべた。
「私には異母兄弟を合わせて五人の兄と二人の弟がいましたが、皆若くして感染症や病で亡くなりました。生き残った私には四人の息子がいますが、二人の正妃が亡くなった後にあてがわれた妃たちにはそれ以上子は出来ませんでした。」
マイラとレックスはぎょっとした。
大陸の覇権を握る帝国の皇帝だというのに、それではまるで種馬扱いだ。
「そして今、私も病を得て、そう長くはないでしょう。」
「そんな!」
マイラが悲鳴を上げた。
「私の息子たちがどれだけ生きるのか、子が持てるのかは分かりませんが、もうあと一、二代でカルディアス皇族は終わるのではないかと思っていたのです。」
ジュストは淡々と告げているが、それはつまりカルディアスの結界が崩壊し魔獣が大陸全体を襲うということであり、この世界の終わりを意味する。
当たり前だと思っていた平和が誰かの犠牲の上に成り立っており、それほど脆いものだったとは・・・。
ヴァレンティン側の四人はあまりにも重い事実を知らされ何も言うことが出来なかった。
「私自身迷いました。セレナが皇帝にならなければ遅かれ早かれこの大陸は終わるでしょう。しかし、娘を犠牲にして世界を救う必要があるのかと。」
ジュストは苦悩の表情を浮かべた。
「先ほど陛下がセレナとルクス皇子を結婚させるとおっしゃいましたが、その意図は・・・」
レックスが顔を強張らせながらジュストに尋ねた。
「本来ならセレナ本人が皇帝を名乗るべきなのでしょうが・・・、それをするにはマイラやレックス陛下が聖教会に嘘の申告をしたことやヴァレンティンの王女として過ごしていたセレナが王女ではなかったことを明らかにする必要があります。」
聖教会を欺く行為は例え国王であっても重い罪に問われるだろう。
「表向きはカルディアスのルクス皇太子とヴァレンティンのセレナ王女の婚姻という形にするということ?」
マイラの言葉にジュストが頷いた。
「皇位継承の儀式は皇城内にある神殿で先の皇帝と次の皇帝のみで行われる。真の皇帝はセレナだが、表の皇帝はルクスが務めるという形にしても露見する心配はないだろう。」
淡々と告げるジュストにヴィクトルが尋ねた。
「でも、それでは異母兄弟とはいえ実の姉弟で結婚するということになるのでは?」




