第12話 中庭の先客
「大陸の存亡?」
さすがのマイラも、その言葉に反応し眉をひそめた。
「どういうこと?」
話を聞くそぶりをみせたマイラにジュストはホッと息をついた。
「カルディアス皇族に関する極秘の情報が絡む話だ。安全なところで話したい。」
マイラはしばらく見極めるようにジュストを見つめていたが、フウっとため息をついた。
「部屋を用意させるから、あなたはここで待っていて。準備が整ったら使いに呼びに行かせるわ。」
「わかった。」
話を聞いてもらえると言われ、ジュストはホッとしたように頷いた。
そして、娘と去って行くマイラの後ろ姿を見送った。
一緒には行動しないとマイラに拒絶された悲しみや、彼女に対する切なさなど様々な感情が混ざった複雑な表情がその顔には浮かんでいた。
くるりと向きを変え王宮内へ戻る母の後をセレナも追いかけた。
「お母さま。今の人は誰なんですか?」
カツカツと歩きながらマイラはセレナに視線を向けた。
「カルディアス帝国皇帝ジュストよ。」
「カルディアス帝国皇帝?」
この大陸の覇者だ。
そしてルクスの父でもある。
驚くセレナにマイラは暗い顔で続けた。
「彼が何を目的にここに来たかは私にはわからないし、詳しい話は部屋に集まってからになるわ。」
そう言うとマイラは前を見て黙り込んだ。
口を閉ざした母の表情を見て、セレナもこれ以上母に尋ねることを諦めたのだった。
※
そして程なくして、防音魔術が施された王宮内の応接室にヴァレンティン王家の四人とジュストが集まった。
父と母の対面のソファにジュストが座り、横のソファにセレナとヴィクトルが並んで腰かけた。
父のレックスは普段から男らしく威厳のあるタイプの男性なのだが、今日は機嫌が悪いのか特に近づき難いオーラを放っていた。
マイラは青ざめ憔悴した表情を浮かべ、急に呼ばれたヴィクトルは状況が分からず目を白黒させていた。
「ジュスト陛下。こちらが招待したわけでもないのに王宮に不法侵入されていたということは国際法に触れる行為です。いかにあなたがカルディアス帝国の皇帝といえど、裁かれる覚悟があるということですか?」
国力や国の序列でいえば絶対的にカルディアスの方が上である。
しかし、ジュストは線が細く穏やかそうな雰囲気の男性で、今はうなだれているためセレナの目から見てもレックスに圧倒されているように見えた。
「そのことについてはおっしゃる通りです。何か裁きを受けなければいけないのなら、それは甘んじて受けましょう。しかし、私はここに来てどうしても調べなければならないことがあったのです。」
その言葉にマイラがビクっと身体を震わせた。




