第11話 中庭の先客
ジュスト?
この男性の名前かしら?
お母さまの知り合いだったんだ。
それにしても、どこかで聞いたことがあるような・・・?
セレナが思い出そうと考えていると、男性が口を開いた。
「やあ、マイラ。久しぶりだね。会えて嬉しいよ。」
親しげな男性の言葉に、流石のセレナも違和感を覚えた。
母は曲がりなりにもこの国の王妃だ。
一般の男性が馴れ馴れしく話しかけていい身分の人ではない。
ましてや今日は国主催のパーティーの日である。
セレナは眉をひそめて男性と母を見比べた。
「あなたを招待した記憶はないわ。何しに来たの?」
母の言葉に驚いた。
この人、招待客じゃなかったの?
今日は王宮主催のパーティーである。
警備はいつもより厳重であるし、招待客の入城も念入りにチェックされているはずだ。
それをすり抜けてここにいるということは・・・。
セレナは怖くなり、強張った表情で男性から距離を取ろうとした。
それを見て男性は寂しそうな表情を浮かべた。
そして、母に向きなおり尋ねた。
「マイラ、正直に答えてくれ。セレナは僕の子だね?」
男性の言葉に青ざめていたマイラの顔色がさらに青くなった。
母の表情を見て、セレナもさらに顔を強張らせた。
僕の子?
「何をバカなことを言ってるの。そんなはずないでしょう。セレナは私とレックスの子よ。」
母がすぐにそれを否定してくれ、セレナがホッと息を吐いたと同時に男性が言葉を紡いだ。
「うそだ。精霊女王の水晶が七色に光った。この子はカルディアス皇族の血を引いている。」
その言葉を聞き、マイラがガクガクと身体を震えさせた。
「お母さま!」
今度こそセレナは母に駆け寄り、その身体を支えてやった。
「お母さま、大丈夫?」
娘に心配そうに顔を覗き込まれ、マイラはハッとした。
今、この男に対峙できるのは自分しかいない。
そう思い、足に力をこめ背筋を伸ばした。
「もし、そうだとして、それがどうしたというの?セレナは私とレックスの子だと聖教会にも認められているわ。あなたが何をしに来たか知らないけど、こちらには話すことなど何もないわ。帰ってちょうだい。」
もし、そうだとして・・・?
母の言葉にセレナは不安を感じ、マイラを見た。
そんなセレナの視線に気付いたマイラが弱々しい笑顔を浮かべた。
「さあ、セレナも一緒に部屋に戻りましょう。」
そう言うとマイラはくるりと身体の向きを変え、セレナの肩を抱き部屋へ戻ろうとした。
「マイラ、待ってくれ!これはガリア大陸の存亡がかかっている重大な話なんだ。レックス陛下も一緒でいいから話を聞いてくれ!」
ジュストが悲痛な声で訴えてきた。




