第10話 中庭の先客
昼食会から始まったパーティーで、前回の二の舞を踏まないようセレナは着々と接待をこなしていった。
そして九人の要人の相手を終えた後、休憩がてら人気のない中庭の方へ出向いた。しかし、そこには予想外に先客が休憩を取っていた。
四十歳前後の線の細い綺麗な感じの男性だった。
「あ、申し訳ありません。休憩中でしたか?」
本当は一人でゆっくり休みたかったのだが、客を追い出すわけにもいかない。
セレナはこの男性を十人目にしようと考え直し、さらに話しかけた。
「私、ヴァレンティンの王女のセレナと申します。あの、どちらから?」
接待相手の国名と名前、役職を聞いておく必要があるのだ。
「私はカルディアス帝国の魔術師です。」
男性の言葉にセレナは目を輝かせた。
「まあ、カルディアスの魔術師?」
「姫君は魔術にご興味がおありだという噂を耳に挟みましたが・・・。」
今日、接待した別の要人にも言われた。
その噂ってそんなに広まっているのかしら?
セレナは頬を染めながら頷いた。
「ええ。王位は弟が継ぐので、私は魔術師になりたいと思っているんです。」
「へえ、そうなのですね。こちらに魔力の種類や量を測ることの出来るカルディアスの魔道具があるのですが、姫君も試してみられますか?」
男性はそう言うと、懐から手のひらに乗るくらいの大きさの美しい水晶玉を取り出した。
セレナはキラキラした眼差しで水晶玉を見た。
「魔力の種類や量ってどうやってわかるんですか?」
「手を水晶に載せ、そこに魔力を流すんです。火属性なら赤、水属性なら青といったように水晶が光ります。属性が多ければ、多数の色が混ざりますね。そして魔力が多いと光は輝きを増します。」
セレナは主要四属性持ちであることは分かっている。
四色がどんな風に混ざり光るんだろう?
「試してみたいです。」
好奇心に負けセレナは手を伸ばした。
男性はにっこりと笑い水晶をずいっと差し出してきた。
セレナは右手を水晶に載せ、手のひらに魔力が流れるよう集中した。
すると水晶は虹色に光り出し、眩い光を放ち出した。
「えっ?これってどういう意味なんですか?」
セレナは焦って男性の方に目をやり尋ねた。
男性は目を見張り、水晶を見つめている。
「やはり・・・。」
そしてセレナの問いには答えず、茫然と水晶を見つめていた。
その時、中庭の外からパタパタと人が走って来る音が聞こえた。
「セレナ!今日は王宮内で魔術を使っては駄目だとあれ程言ったでしょう!」
母のマイラだ。
相当怒っているようだ。
やばい。
お母さまに見つかっちゃった。
セレナはパッと水晶から手を放し、うつむいた。
母が怒っている時は、しおらしく反省しているふりをする方が早く嵐が過ぎ去るのだ。
「お母さま、申し訳ありません・・・」
いい子を装って速攻で謝った。
「・・・」
「?」
母の反応が無かったので、セレナはそろそろと顔を上げマイラを見た。
マイラは両手で口元を押さえ青ざめていた。
セレナはびっくりして母に尋ねた。
「お母さま?どうしたの?気分が悪くなったの?」
セレナが母に駆け寄ろうとすると、マイラが呟いた。
「ジュスト・・・。どうしてここに・・・?」




