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聖域スキルを使ってみて

 案内された家の中は質素な作りになっていて、テーブルとベッド以外で目立つのは液体の入った瓶や何かの草類がたくさん入った棚があるくらいだ。

「最近は実入りが少なくて、今日は香草のスープしか出せなくて申し訳ないんですけど」

 アリスさんが申し訳なさそうに出してくれたスープは何かの木の実が具として入っているだけで、確かにお世辞にも夕食として満足できそうなものではない。それでも今日何も食べてない僕にとって食欲をそそられるその香りは、すぐにでも飲みたい衝動に駆られてくる。

「いただきます。……こ、これは!?」

 この世界の食べ物を僕は知らない。だからこのスープに何が入っているかはわからないんだけど、今まで飲んできたどのスープよりも美味しい事だけはわかる!

「凄いよこれ、凄く味しい!」

「ありがとうございます。でも庭で育てた香草と森で拾ってきたチコの実ぐらいしか入ってないんですよ?」

「じゃあアリスさんの料理の腕が神懸ってるんですね」

「そ、そんな事は……」

 アリスさんは照れている様だけど、これだけ美味しいもの物を作れるんだから絶対に褒められるべきだよ。それよりも。

「庭で香草を育ててるんですか?」

「はい、香草だけじゃなくて薬草や毒消し草もですけど。それらを調合してポーションを作って売っているんです。でも最近はちょっと薬草の成長が悪くてあまりポーションを作れなくて」

 どうやらあの棚に入っているのが材料や商品となるポーションなのだろう。

「それで最近はあまり売れなかったと?」

「恥ずかしながら。でもある程度できたので明日売りに行くつもりなんです」

 やっと収入が得られるということで明るく務めているようだけど、それまでの苦労からちょっと声に疲れが見て取れる。何か僕に出来ることはないかな?……そうだ!

「それじゃその庭を少し見せてもらってもいいですか?」

「え?かまわないですけど」

 多分だけど僕のスキルが使えるはずだ。それがどのくらいの効果になるかは判らないけど、少なくとも悪い事にはならないと思う。

「こっちです」

 家を出て裏手に回ると策で囲まれた庭に薬草などが植えられていた。これが何の植物かは分からないけど、おそらくこれが薬草や香草なんだろう。芽が出てすぐのところを見ると、収穫まで時間がかかるはずだよね。

「植えてから間もないので採れるものは無いんですけど」

 やっぱり。でもこのスキルで少しでも早く育てば彼女の役に立てるかな。あんなに美味しいスープを飲ませてもらったんだ。何かお礼をしないと僕の気が済まない。

 スキル≪聖域【植物】≫をとりあえず庭全体を範囲に指定して発動させてみる。薬草、毒消し草、香草の畑が淡い緑色に光ってすぐに消える。多分だけどちゃんと発動できた筈だ。

「え?あ、あの、今のは一体何なんですか?」

 まぁ確かに何も知らないと驚くか。

「大丈夫ですよ。僕のスキルで植物の成長を速めておきました。多分通常よりは早く収穫できると思いますよ?」

「え、本当です!?」

「えぇ。まぁ今日の宿とさっきのスープのお礼という事で」

「そんな、あんなにほとんど具のないもので……」

 アリスさんは申し訳なさそうにしてるけど、お世辞抜きにあのスープは素晴らしかった。だから実はこんな効力のわからないスキルでしかお返しができない自分の方が、内心申し訳なく思ってるんだよね。



 あぁ、身体が痛い。

 あの後寝る時になって、一つしかないベッドに僕を寝かせようとする家主(アリスさん)をベッドに追いやり毛布1枚借りて床に寝たのが原因なのはわかってるけど、女の子を床に寝かせたり一緒のベッドに入るとか、そっちの方が無理だから。どっかからヘタレと言われそうだけどそんなことは知ったこっちゃないね。

「コ、コータローさ!!」

「ぐふぅっ!」

 何だ何!?何が止めを刺しに来たんだ!何が突っ込んできたのかと見ようとすると、それに思いっきり肩を揺すられる。ヤバい、頭が、揺れる……。

「コータローさん、一体どんな能力を使ったんですか!?」

「待って、アリスさん、お、落ち着いて……」

「あ、ご、ごめんなさい」

 ふぅ、何とか落ち着いてもらえたみたいだ。

「あー、うん。大丈夫。けど一体どう、した、の……」

 何という事でしょう。僕の視線は彼女の頭部から離せなくなった。だって昨日はずっとローブを着てフードを被っていたのがそれを着てなくて。その頭部には人の物ではない、犬?狐?いや違う、これは狸耳だ!それが可愛らしくぴょこぴょこ動いている。

「え?あ!」

 僕の視線に慌てて手で耳を隠す仕草も可愛らしい。よく見たら狸らしいもふもふとした尻尾も見えている。うん。

「可愛いなぁ……」

 ヤバい、異世界に着て今一番嬉しいかもしれない。

「か、可愛い、ですか?」

「うん、凄く可愛い」

「誰が……」

「アリスさんが」

「えっと、私、この通り獣人なんですよ?」

「そうだね」

「え?」

「え?」

 何故かお互い首をかしげてしまう。

「あの、自分で言うのも何ですが、獣人ってかなり虐げられてる存在じゃないですか?」

「そうなの?まぁそんな事は置いといて」

「置いとけるんです!?」

 この世界の常識ではそうかもしれないけど、異世界から来た僕にはそんな事関係ないしね。

「さっき凄く慌ててたけどどうしたの?」

「あ!そうだった。コータローさん、ちょっと来てください」

 アリスさんは僕の手を引いて庭に引っ張ってきた。

「うわ、何だこれ?」

「何だこれって、コータローさんがしたことですよね?」

 アリスさんの言う通り、確かに僕は昨日スキルを庭に使ったよ?でも昨晩に目が出た状態の薬草達がしっかり生い茂っているとは思わないじゃないか。流石に僕でも驚くよ。

「薬草も毒消し草も香草も、全部ちゃんと収穫できる状態です。それもどれも状態が良くて、良質のポーションができますね」

 嘘でしょ?あれ、外れスキルと思ったら園芸家にとっては神スキルなのかなこれ。園芸王に俺はなる!とか言えばいいのかな?

「本当に、本当にありがとうございます」

「う、うん……」

 アリスさんは何度も頭を下げ僕にお礼を言ってくれる。それは嬉しいんだけど、僕自身はこのスキルでどうやって生きていけばいいんだろうな……? 冗談抜きで園芸王……?

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