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リトルオーガ in カレイドスコピカレード  作者: 雲渚湖良清
幼児の章【三】 青い児鬼とカラクリ魔人
28/40

盛り過ぎな…アレ

ようやっと再開デス<(_ _)>

「こっちの方が魔族の被害多そうと思ったけど、案外平穏でよかったね」

「うん、なんかうちの方が騒ぎだけなら派手だったかもしんない」


 翌朝、アンマグリに入ったセイルとバリュート達。それらをガイドする役目のチキとキキの双子。

 街に入って驚いたのは、街中の一角が難民キャンプ化しており、そこに隣の魔族領から避難してきた蛇頭族が集まって来ていたからだ。


 蛇頭族といっても領界解放の要因となる支配者種族は既に居ない。

 似てはいても別種族の括りなのだろうと推測は出来る。双子に言わせると身体の模様が全然違うし蛇腹になってる首の長さも違うという事で、今はもう存在しない方の種族は空想で補うしかないセイル一向は、『そんなもんか』と片をつけるしかない状況だった。


 アンマグリへと避難してきた蛇頭族は元々ささやかな交易で親交がある種族で、魔族特有の凶暴性も少ないのだそうだ。

 寧ろ早々に避難してきた彼等が、同族に対しての縄張りの主張という形で、後続の避難ではない暴動の群れと化した蛇頭族を牽制したおかげで街自体の被害は皆無で済んだという事だったそうだ。


 そのような経過を聞ける事も重要だが、被災地である現地を知っている魔族が居るという事は、セイル達にとって最良の情報源となる。

 言葉が通じれば、だったのではあるが……。


 蛇頭族というように、その頭部は限りなく蛇に近い。蛇には発声器官といえる程の物は無く、声でのコミュニケーションは不可能だった。

 ならばダークエルフがどうやって会話をしていたかと言うと、それは、ある意味『手話』と言えばいいのかもしれない。

 蛇頭族自身の会話は、その蛇特有の特徴である“舌”で行う。

 長く伸び二股に分かれた舌は思いの外自在に動き、案外豊かな表現が出来ていたのである。ダークエルフはその舌の動きを手で代用する事で、ある程度の意思疎通を可能としていたのだ。


「セイル様、黄鱗族によると、支配者だった赤鱗族はワザワザ中央領界の祭壇前に集められて殺されたみたい。手下扱いされてた黄燐族と緑鱗族が、ガラ空きになる集落を代わりに魔物から守るように命令されてたんだって」

「でも光の柱が立って、領界の支配が解除されたもんだから、半分パニックになって逃げ出してきたそうです」


 チキとキキが複数の蛇頭族から話を引き出して、それを纏めて報告してくれる。


「あと、赤鱗族の奴隷戦士扱いだった黒鱗族が今暴れてる暴動の原因みたいだよ」


 キキの追加報告で現在進行形の騒動の元凶も判明した。

 黒鱗族とは名の通り黒い体色の蛇頭族で、赤鱗族が支配する戦闘専門の一部族だった。赤鱗族は支配者種族専用の魔法を習得しており、強制力は弱いものの特定の相手の精神を洗脳できた。黄燐族や緑鱗族は有る程度対抗できたのだが、黒鱗族は魔法への抵抗力が弱く、完全支配された道具扱いだったそうだ。その死を恐れない戦闘力は驚異であり、それもあって殆どの蛇頭族は赤鱗族に従属していたのだった。


 だが赤鱗族の消滅によって黒鱗族は解放された。しかし数百年単位での支配関係は黒鱗族から完全に自由意思を奪い去っていた。だから何の命令も無い環境に激しく拒絶反応を示し、それが暴力衝動として現れているらしいのだった。


「なんかもう、発狂してるみたいだから関わり合う事自体が危険らしいってさ」

「それは、困ったかなあ……。目的地まででどれだけぶつかる事になるんだろう」

「対処自体は問題無いでしょうが、昼夜問わずとなると厄介でしょうな」


 セイルの困惑にバリュートが補足を入れるが、現状では此処までその黒鱗族には遭遇していない。だからか、何処か緊張感は無かったりもする。

 それはほぽ全員が殻徒という戦力を有している事もあるだろう。セイル自身は始めての戦地だが、バリュートを含め兵士は全員ウルの付き従って野良魔族との戦闘を経験しているし、侵攻の一時中止によっての再訓練もしている。

 そうそう狼狽える理由が既に無いのである。


 以降は野良魔族の領域全体の地理や、侵攻ルートの注意点などを聞きだし、特に問題も無く出発となる。

 これからは戦闘を中心に考えての行動となる為に、ガイド役の双子とも別れる。

 さすがに好意的な立場になれた勢力の子供を、本格的な危険地域へと連れては行けないとの判断だ。チキにキキとしては付いて行く気満々だったようだが、各(マグリ)間を繋ぐ定期連絡の商人キャラバンに相乗りしてロロマグリへと帰らせる事となった。


「ヨミスケさん、なんか凄くリフレッシュしてますね?」

「いやぁ、あの双子が居たからオレも楽できたしなあ。つか帰さねえで連れてきゃいいのによ」


道中、バリュート達に情報供給源として昼夜の区別なくベッタリされていたヨミスケである。しかし双子がガイドに入ってからは、双子の方から興味津津の日常会話が飛びまくり、子供特有の騒がしさに紛れるように、束の間の解放を得ていたのであった。


「じっとしててくれるなら良いと思ったんですよ。もし対話可能な蛇頭族に会ったら役立ってくれたろうし。でももし戦闘中に外に出られたら、なんてフラグは立てたくないですし」

「何だその“フラグ”って?」

「えーっと、ジンクス……は英語だった。んと、『験担ぎ』?」


 ようやく意味が通じたものの、何故それがフラグになるかは通じない。結局一々説明する事となった。


「僕の居た時代だと、悪い事柄を想像するとそれが実現するって迷信があったんです。あの双子は好奇心が強いし、いざ僕達が戦闘となったら、安全なところに隠れてくれなくて何処かの死角から見物しようとして、それが元で命の危険に遭遇する。そんな可能性が大きいって思っちゃうんですよ」

「……確かに、スゲーありそうだわ」

「そういう事を称して『フラグが立つ』とか、別名として『死亡フラグ』って言うんです。他にも『俺、この任務が終わったら故郷で結婚する約束したんだ』とかあって、コレ言ったらその人は確実に死にます」

「おおい、決定かよ!?」

「決定です。ある意味呪いですからね」

「三百年後って、恐ええな」


 セイルとヨミスケが妙な感慨に耽っていると、出発前の小休止で雑談をしている兵士達の声が聞こえてくる。


「──へへっ、今回の任務の給金でやっと農地を買える目処がついたぜ、これで俺もアイツと結っこ……」

「「言っちゃダメだぁーーー!!」」


 タイミングの良すぎるセリフを全力で阻止してしまう二人であった。

 意味も分からず驚く兵士を置いてけぼりに、二人のギフティスは時代で変わる常識の齟齬を埋めようと熱くなる。その様子を眺めつつも、アンマグリの名物料理の制覇に忙しいグウェリは聞くとも無しな状態だ。

 因みに、このダメな会話の間もセイルはグウェリの腕の中。既に周囲皆にとってのデフォルトな姿勢である。


 この姿勢が揺るがない事こそ、兵士全員に安心を与えているフラグと成っている事に、未だセイルは無自覚なのであった。



 ◆   ◆   ◆



 別れる約束をしたものの、車両の何処かに隠れられて結果的に付いて来てしまう。等と言う定番の行動を取られる事を警戒して、ロロマグリ行きのキャラバンの責任者にガッチリとホールドされた双子を確認しつつの、セイル一向の出発である。


 案の定そういう事をするつもりだったのか、悔し涙全開のキキとチキであるが獣働車と壁級殻徒(ウォーラー)の移動スピードは桁外れに早い。

 あっと言う間に丘の段差に消えていく姿には、後から追い付くという思惑も消え去るしか無かった。

 セイルの側にしてみても街の防壁に隠れて見えなくなるまで確認すれば、もう完全にフラグは折ったと安心できた。再びヨミスケが兵士達の相手で暇無しになるが、それはそれでこの度の基本仕様。「頑張ってください」とあっさり見限るセイルである。


 領界支配の条件により人族の領域から直接魔族の領域へと移動は出来ない。一度は誰も支配していない無支配の領界を跨がなければならないのである。が今回は、その魔族の領域が解放されているので特に問題は無いと言える。

 しかし長く交易の関係になっていた状況から、その段取りを取る街道のような物が出来ている。そして特に別ルートを使う必要も無いという事で、地盤の安定した道を使う方針になっていた。


「でもちょっとコレは予想外……」

「だなあ……」


 街道と呼べる程の整備された道では無いが、踏み固められて雑草すら生えれなくなった土の帯。二頭立ての馬車がすれ違う程度の幅の道の両脇に、ちょっとした野営地というか、避難所というか、難民キャンプが作られていた。

 セイル達の目算では、その手の施設はアンマグリの街中に既に有った事から、マグリの領界を抜ければ遭遇する可能性は暴徒と化した野良魔族、情報通りなら暴走した黒鱗族の集団と予想していたのだ。

 だが実際は、マグリと無支配の領界との境当りに、即席で、だがかなり大規模な陣地が築かれており、主に緑鱗族の者が警護についていたのだった。

 丁度領界の境という事もあり、土地の起伏は階段状の物になりやすい。そしてその影響なのか、この場所は谷底のような地形となっており、このキャンプが街道を塞ぐバリケードになって互いの出入りを阻害する事となっていたのだ。


「情報だと黒鱗族って強いんだよね?」

「つまり、その強さを生かせない程狂乱しているのか、もしくは組織的行動をとっている緑鱗族の実力が予想外に高いのか、なのでしょうな」


 セイル達が移動するにはバリケードを越える必要がある。だが街道の幅半分以上はバリケードで埋まっているし、それ以前に騎獣機(ギミロック)を乗せた従者トレーラーが移動するには谷幅いっぱいを使わねばならない。

 それは、このキャンプそのものを撤去(じゅうりん)しなければならないという事であった。


「アンマグリにも少しは緑鱗族が居ましたよねぇ……」

「いっそ居なきゃ問答無用でぶち殺せたんだがなぁ……」


 ヨミスケの外道な発言であるが、内心では全員が思う事でもある。

 知己が出来ていても相手は魔族であり、基本的には敵対する相手だ。だが、間にマグリという人族の勢力がある事で、そう無碍にする事もできなくなっている事実がある。


「これもフラグって言うやつかねぇ……」

「……?。なんのです?」

「双子が居ないからこそ起きたって“ヤツ”」

「ああっ!?」


 言われてみて気づく。ダークエルフの双子は蛇頭族との会話が出来る。ならばこの状況も何らかの、暴力以外の解決方法も探れるか?、な可能性があったという事だ。

 かと言って、最初にセイルが予想した事も可能性は有るには違いないのだが。


「何この四面楚歌なフラグって……」

「ついでに言っとこう。坊主の裏をかくってフラグは生きてたみてーだぞ」

「え?」


 セイル達は蛇頭族のキャンプが見え、互いに様子が窺える当りの位置で対峙していた。

 つまり、互いの表情は当然として、車両的に高さのあるセイル等からは大まかな施設の内容も確認できる位置にいた。

 その最も高い位置、駐機姿勢の騎獣機に昇っての会話だったのであるが、眼下に見える蛇頭族の中に、妙に見知った人影が二つあったりする。


「……あれぇ?」

「ダークエルフってのはな、幻影系の魔術が得意だったりすんだよなあ」

「……早く言ってくださいよ……」


 もはや何のフラグが立っているかも分からない状態であるが、兎も角、キャンプは自ら撤去されてセイル一向は無事“元”魔族領域へと侵攻する事が出来た。


 再び双子を、チキとキキを加えて。




〈~続く~〉




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