6話 サラサの町に移住
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この世界に転生してから、半年が過ぎただろうか。相変わらずシュリの家に居候しており、ネトの村で暮らし始めて、最近では狩りや薬草採取の効率を上げて、残りの時間は、字を覚えたりして勉強している。
「シュリ、この字の意味は何だったかな?」
「あ~、え〜と、トロイの木馬ですね。一見すると無害に見える物で、相手を油断させてから内部に侵入する事ですね。昔、人間が魔界に攻めこむ時に使った作戦の一つです。この本に書いてありました。」
「そうだった。姑息な人間のやりそうな事だからな。また、無駄な言葉を覚えてしまった。」
「相変わらずね。でも、マーサに字を教わってから、飲み込みが早くて彼女も驚いてたわ。アッシュは、頭が凄くよかったんですね。」
この体は、鋼の様な肉体に加えて、もの覚えも非常によくて助かる。マーサから教わった字の読み書きを一度で覚えて、シュリに教えたり、教わったりして復習している。
今では何冊か本を借りて、薬草の納品にあわせて返したりしている。この国の地理について書かれた本は特に役に立ちそうだ。
「半年で金も大分たまったし、そろそろマーサのいるサラサの町に引っ越さないか?そこの学校に入って、シュリは勉強するんだろう。サラサの町の学校はいつから始まるんだ?」
「2ヶ月後だけど、アッシュはどうするの?」
「俺は冒険者になって、生活費を稼ごうと考えているよ。町から北に歩いて2日ほど進んだ所に大きな都市シーナがあって、そこには誰でもなれる冒険者ギルドがあるみたい。まぁ、間口が広いだけで、ランクの低い連中はその日暮らしだそうだ。今の俺らより酷いかも。金の事は心配せずに、シュリは勉強してくれ。その後で俺に教えてくれてもいいし。」
「わかったけど、サラサの町に私と住むのは約束よ。たまには帰ってくること。いいわね!」
「もちろんだ。お世話になった村の人にお礼をしっかりとしてから行こう。」
半年も一緒に住んでいれば、お互いに情もうつり大切な存在となっている。シュリの頭を撫でてから、狩りに行く事にした。今日は大物を狙って少し遠くまで行こうかな?
森の中を一人で走り回っている。慣れたもので、すでに自分の家の庭の様なものだ。薬草の群生地により、適当に採取してから本日の獲物ビックボアを探している。村の人に配っても余る位の肉がとれる。
「あっ、いたいた!」
ビッグボアを見つけてから、すぐに気配遮断をしてゆっくりと近づいた。背後に近づいて、手刀をくり出し、首の骨をへし折った。一瞬の事で何が起きたかわからずに死んでいるだろうな。
ビッグボアをそのまま引きずってネトの村まで持ち帰り、解体は村の人がやってくれた。でかいブロックを1つもらい、それ以外はすべて村の人にあげた。
「俺とシュリは近いうちにサラサの町に引っ越します!学校にシュリは通う事になります。短い間でしたが、色々とお世話になりました。」
「それは寂しくなるの!いつでも戻ってきていいんだからな。この村はシュリが生まれた村だから。」
バス爺は村長みたいな人であり、シュリの両親の事もよく知っていた。シュリの事を心配しているのが、よくわかった。
話は変わるが以前、遠くに見えた城は人間側の建物で、魔界との国境線を見張る砦だとマーサから教えてもらった。そこから数十キロ離れた先から魔界になるそうだ。おそらくこの体の持ち主は魔界から来たのだろうが、今は別にいいか。特に気にならないし。
一度、様子を見に近くまで近づいたが、見張りが、いるだけで特別な事はなかった。魔界側は、禍々しさが感じられた……。
そういえば、以前、転がしてそのままにしておいた刃がボロボロの黒刀を狩りの時に使って、勢いをつけすぎて地面を叩いたら折れてしまった。折れては役に立たないので、またその辺にポイ捨てしておいた。これで暗黒騎士は、卒業です。
大都市シーナに行ったら何か一つくらいは得物を買うつもりだが、生活費もあるのでよく考えないとな。この体は、丸腰でも十分に強いけど。
シュリが入学試験をパスした学校に入る数週間前に俺達はサラサの町に移住した。道具屋のマーサに紹介してもらった物件で賃貸で毎月金貨5枚と少し高いが、貯金もあるので何とかなるだろう。最低でもシュリが卒業する2年間はいるつもりである。
「アッシュも学校に入ればよかったじゃない?学歴はつけておいて損はないよ!」
「マーサ、勘弁してくれ。俺は記憶がないが、学校は出ているよ。ただね、覚えてないだけだ。」
「そう!じゃあ、シュリに教わりなさいよ。」
同年代のマーサに小言を言われてから、いつもの薬草を納品してお金を受けとった。
「こっちに引っ越したから、薬草も納品は出来ないんでしょ。アッシュならとりに行けるんじゃないの?たまに納品してよね。」
「わかった。シーナに行って薬草を採取してみるよ。ギルドを通さない方が互いに得だろう。」
「あんたよくわかっているね。戦争が終わったから、ポーションの需要も減るだろうし、なるべく仕入れ値は抑えたいんだよね。その代わり、アッシュがいない間、シュリの事は私がみておいてあげるから。」
俺に何かあってもマーサがいるし、マーサに何かあればシュリが対応するだろう。心置きなくシーナに向かうことが出来ると思った。
ひとまず美人の女性を探すより、冒険者の仕事を何とかしたいと思った。
まったく、やる気がない。




