5話 サラサの町 その3
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宿の位置を忘れない様に記憶してから、適当に夜の町を歩く事にした。昼間と違い、この時間を好む連中にあまり善人は多くないだろう。どちらかと言うと欲に従順な奴が多いイメージだ。まぁ、そんな時間だからこそ、手に入る情報もある。
「おい、おい、そこのおまえ!お前だよ。肩幅の広い奴!無視してんのか?こら!」
「うん?なんだ、俺の事か?何の用だ。」
「実は俺さ〜可哀想な奴で、小遣いが少なくて困ってるんだよ。恵んでくれないかな。な~に、金貨2、3枚でいいんだよ。」
俺の肩に手をまわして逃げれない様にしているが、酒に酔っているのか俺の強さを感じとれていないようだ。象が蟻の言うことを聞くと思うのか?
「目障りだ。羽虫。明るい方へ行け!」
「何だとぅ、この野郎!ぶっ殺してやる!」
殴りかかってきたので、避けてかるく平手打ちをしたら顎の骨が折れて顔がおかしな形になっていた。
「あばばばば……。」
「あははは。お前面白いな。久しぶりに腹から笑った気がするよ。お前、最高だなー。」
「それにしても醜い顔だな。治してやるよ。パシン!」
先ほどと反対側から平手打ちしてやると、いきすぎた様で顎が反対に曲がっただけであった。泡吹いて気絶して倒れてしまったので、迷惑料として懐からお金だけもらっておいた。
金貨1枚になったので、宿代がういたわ。今後の稼ぎの一つとして考えておこう。悪い奴から奪い取る。歩きながら、酒が飲めそうな店があったので、中に入った。
「いらっしゃい!」
「マスター、エールと適当につまみをくれ。」
「ほらよ、兄さん、見ない顔だな。どこから来たんだ。」
「あ~、山の向こうのネトの村だ。1日かけて歩いてきたよ。」
「あっ、上手いな。このつまみ。追加でくれ。何でも魔界と人間界で大きな戦争があったらしいけど、何か知らないか?」
「田舎町では入ってくる情報も少ないが、お互いに大きな犠牲を出して痛み分けと聞いたが、何でも魔王は倒されたと俺は聞いたぞ。」
「マスター、異世界から召喚された勇者が大活躍して、魔王を倒したんだったよな。」
「俺は異世界から召喚された勇者も何人か死んだと聞いたぞ。魔王の配下はどうなったか知らないけど……。新たな魔王が誕生するのか?」
不確かだが、情報を断片的に手に入れる事が出来た。そして、俺のステータスに「魔王軍」と書いてあったので、魔王軍の一員だったのだろう。何らかの原因で、死んだか記憶を失い、今に至るといった感じかな。これは人間には言えないな。
「そうか、ご馳走になったな。会計を頼む。」
「銀貨2枚だ。また遊びに来いよ。」
店を出てから、適当に歩き回り見てまわるが、娼館の様な店はなかった。もしかしたら、宿を兼ねた感じかもな。町にあるかもしれないし、ないかもしれない。シュリがいるからそろそろ帰ろう。
宿に戻り鍵を借りて、シュリが寝ているのを確認してからベッドに入った。シュリは俺にとって命の恩人であり、同時に保護者の様な気持ちもある。先まで考えるとお互いかなり厳しいので、若いうちに何とかしておきたいな。
翌朝、宿で朝食を済ませてから、村に帰るために食料を買いに行くことになった。村で芋や野菜を作っているので、それ以外で屋台の様なところで、チーズを多めに買っておいた。後はパンも幾つか買ったが、村につくまでになくなりそうだ。
「塩を買うんだな!結構、値段するな。」
「ええ、以前より高くなってます。戦争の影響かもしれませんね。」
「店主、金貨1枚分買うからくれ。」
「アッシュ、そんなに買わなくても……」
「大丈夫だ。俺が払うからシュリは出すな。持っていろ。」
それ以外も保存出来そうな米や小麦粉など色々とあれば役に立ちそうな食料を買いあさった。荷物が増えてきたので、背負える籠を2つ買って、持って帰る事にした。
町を出てから、来た道を戻っている。一度通った道は早く感じるので、昼には山の頂上まで到着した。
「アッシュ、少し休みましょう。買ってきたパンを一緒に食べましょう。」
「そうだな。あと数時間も歩けば村が見えて来るだろうな。」
少し休んでから歩き始めて山を抜ける頃に鹿が見えたので今晩の夕食にすることにした。
「シュリ、鹿がいたのでとってくるから、少し待っててくれ。今日の夕食は、鹿肉を焼いて食べよう!」
「いいわね。気をつけて。」
鹿と目が合うと、危険を察知したのか猛スピードで逃げたが、残念。こちらはチーターの全力を上回る速度で疲れ知らずだからな。手刀でかるく叩けば首の骨が折れて動かなくなった。
足を持って引きずりながら、シュリと合流した。無事に村に戻り、その後シュリは物々交換に出かけてしまった。芋や野菜を塩と交換するそうだ。細かいところはシュリに任せる。
俺は自分でとった鹿を解体中で、村の外である程度やることにした。欲しいのは焼いて食べれる塊の肉なので、それ以外は穴を掘り捨てておいた。内蔵も捨てておいた。
大きな葉っぱに包んでから、シュリの家に戻り、肉を焼いている。焼く前に塩をたっぷり塗り込んだので、たぶんうまいだろう。タレでもあればいいのだが……。
少しするとシュリが野菜や芋を大量に持って帰ってきた。塩をあげたら、お礼にたくさんくれたそうだ。こんな田舎の日常でも幸せを感じるのは、やはり前世の記憶があるからだろう。記憶を失ったこの体の持ち主は、いったいどんな奴だったのか非常に気になるな。明日も幸せが続けばいいと思う。
お休みです。




