36話 侯爵の護衛依頼 その1
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兵舎で一晩過ごしてから翌日、レイテアの案内で侯爵の所に連れていかれた。ちなみに朝と夕方は食事が出るので楽だ。侯爵邸には、100名位の人が滞在している事もわかった。
兵士に限らず、メイドもいるので、人が多く出入りしている。レイテアの案内で歩いていると、貴族の紋章がついた馬車や商人などが出入口から入ってきていた。
「驚くだろう。ここには兵士が30人ほどいるが、交代で門番をしたりして、24時間常に見張っている。高い壁があるが、侵入者を見つけるために、夜も巡回している。」
「俺は侯爵の近くに護衛としていればいいのか?」
「まぁ、そうだが、侯爵の騎士がついているから。部屋の外になるな。」
「侯爵軍が人を寄越せば解決しそうだが?」
「まあ、軍にも色々と仕事があるからな。魔界対戦の時は後方支援にまわっていたが、それでも魔物討伐では死者をかなり出したな。侯爵は、最後まで戦争に反対していたが……。さぁ雑談は終わりだ。二人を紹介する。」
案内された部屋は護衛の待機部屋らしく、中に2人の冒険者がいた。剣士と魔術師の様に見える。
「新しく護衛に加わることになったアッシュだ。協力して、任務にあたってくれ。私が護衛隊を管理するからな。左からジスタとベイカーだ。」
剣士がジスタ、魔術師がベイカーというらしい。見た感じだが、レイテアには劣るがそこそこ実力がありそうだ。
「アッシュだ。剣と闇魔法を使う。よろしく頼む。」
「あぁ、こちらこそ……お前見たことがあるな。まさか、シーナの英雄か!」
「英雄アッシュ……聞いたことがある。大国ザイールの軍船を奪い、海賊を皆殺しにして海に沈めた。あれは、実はザイールの海軍だったと聞いた。」
「あぁ、確かにそんな風に呼ばれていたかもしれん。昔の話だ。」
レイテアも目を丸くしていたので、噂は知っているかもな。その後も話が続き、3人と仲良くなった。その日から侯爵の執務室の扉の前に待機している。
怪しい奴は絶対に中には通さない。中は広くなっており、騎士も待機しているが、常にいるわけではない。レイテアと交代で休んでいる。顔を覚えないと難しいが、この体は知性が高いのですぐに理解した。
3週間が過ぎたあたりで、侯爵邸にて派閥のパーティーをやることになった。意見の交換など必要らしく、信用の高い者しか呼ばないそうだ。不審な奴が紛れ込む可能性があるので、いつも以上に警戒が必要になる。
当日、次から次へと貴族の馬車がやってきていた。入口にて門兵がチェックしているが、どうやら問題が起こったらしい。革新派の貴族が、パーティーの話を聞き付けて、招待状もないのに押しかけたようだ。
護衛に俺が立っていると、慌てた門兵が一人やってきた。
「至急、侯爵様に伝えてほしい。大聖女オリビア様と剣神ジョン様がお見えになられましたと。」
「わかった。伝えよう。」
門兵を外においた状態で、ノックしてから中に入った。
「何事だ!」
「大聖女オリビアと剣神ジョンが来たと門兵が言っておりました。」
目を見開いて侯爵と騎士が立ち上がり、門兵と共に出入口に向かっている。その後を俺もついていく事になった。イレギュラーな事なのだろう。
門にたどり着くと、侯爵が丁寧に話を聞いている。保守派の懇親会であること。元セブンスのメンバーが参加するものではないことを伝えている。
「何、招待状がないと私は参加できないというの?教会のトップのこの私が?」
「いえ、そうではなくて……大聖女様が参加するような大層な催しではなく……」
「な〜に、すぐに帰るから大丈夫だ。顔を見せたらすぐにね!」
無理に押しきり、パーティー会場に二人が入ってきてしまった。二人の姿を確認した保守派のメンバーの顔色がかなり悪い。
「ふ~ん、こんなもんか?」
「ジョン、そろそろ帰って楽しい事をしましょう。正直、飽きたわ?」
「……そうだね!その前に一つ仕事があるから先に馬車に戻っておいてくれないか。国王から頼まれた仕事があってね!」
「そう、掃除は早くしてね!」
「わかっている。」
侯爵の脇には騎士、レイテアがおり俺は背後にいるが、剣神と呼ばれる男が明確な殺意をこの場にいる一人の人間に抱いている。気配察知から大聖女は門のあたりで、終わるのを待っているようだ。
「侯爵、この間は暗殺未遂があったらしいですね。王国の影から話を聞きました。……俺の仕事が増えたじゃないですか?」
「何だって!」
急に消えた剣神ジョンに反応できたのは俺だけである。侯爵家で支給された割といい剣で受け止めた。騎士とレイテアも反応したが、間に合っていなかった。俺がいなければ、侯爵は死んでいたぞ。
「何だ貴様!」
「お前こそ何のつもりだ。」
目にも止まらぬ早さで何度か打ち合うが、勝てるだろう。この程度で剣神とは片腹痛いわ。
「テメー、ズタズタにして殺してやる!お前の家族もまともな姿で生きていられると思うなよ。」
「そうか、心配するな。なぜならお前がここで死ぬからだ。死ね!スラッシュ。」
正面から放った斬撃が剣神ジョンを縦に真っ二つにした。パーティー会場が血の海になってしまった。
「ジスタ、ベイカー、外にいる大聖女を捕まえてこい!奴を逃がすな!レイテア、手を貸してやれ!」
侯爵の声に反応した三人はすぐに動いた。流石に剣神を殺したとなると目撃者は口止め出来ても大聖女を逃がすわけにはいかない。
その後すぐに大聖女オリビアを捕まえたレイテアがやってきた。
「な〜に、ジョン、やられたの?馬鹿じゃん。」
保守派の貴族が帰され、侯爵邸には大聖女オリビアと侯爵と護衛だけになった。剣神の死体は片付けられて、価値の高い装備品は預かりとなったようだ。溶かして使えるかもしれない。
「さて、どうしたものでしょう?」
「早く縄を解きなさい。このロープは、魔法封じなのね。よくもこんなもの。教会のトップの私にこんな事をしたらどうなるか?考えなくてもわかるでしょう。」
「国王からの命令で私を殺すように言われたのだな。前回の暗殺未遂もそうだな?」
「そうよ。だから何?あんたが邪魔だから。」
「死んでもらいましょう。口止めしている貴族からもれる可能性もありますが、世の中のためです。あなたの代わりはいくらでもいますよ。腐った教会にはね!剣神も大聖女もここには来ていない事にしましょう。」
「ふざけるんじゃないわよ!私を誰だと思っているの!」
「ひとまず地下牢に入れておきなさい。」
侯爵の口振りだと地下牢で衰弱死させるつもりのようだ。あるいは国王からの動きがあれば、手札として使うのか?扱いは賊として考えているようだ。もったいない女なので俺がもらいたい位だ。
片足に湿布5枚




