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異世界ゼミの主人公諸君  作者: 福緒唯
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ぼくらの異世界[9]

「このあとも作業する?」


 もうすぐゼミの時間として当てがわれている四限は終わる時間だ。


このあともというのは五限以降の時間もということだろう。なんだかんだ話し込んでしまって作業も中途半端なところでとまっている。このあとの何か予定があるわけでもないので、僕は「うん」と返事をした。


「じゃあさ、この二百円でジュース買いに行かない?」


◇


 結局ジュースどころか早めの夕飯にと敷地内にあるダムダムバーガーでハンバーガーを買ってゼミ室に戻った。入学してから初めて知ったファーストフード店だったけど、グランドメニューはシンプルなラインナップなのに期間限定メニューはチャレンジ精神があって面白い。そしてどっちもちゃんとおいしいのでよく利用している。僕はビッグダムチーズバーガーにポテトとコーヒーのセット。夏澄くんはBLTバーガーにポテトとメロンソーダのセット。それから、二人で分けるかぁーと十個入りのチーズポテト。紙袋から取り出してローテーブルの机に並べていく。きゅる、とおなかが待ち遠しそうに鳴いた。


「そういえば、夏澄くんはどういうかんじで発表するの? プログラムを組んだりしてることは知ってるんだけど……」


「んー、体験型だしARかVRかなって考えてたんだけど、あ、違いわかる?」


「さすがにわかるよ。ARは拡張現実でVRは仮想現実でしょ」


AR(拡張現実)は現実に情報を付加・協調することで、現実の一部に情報的変化を起こす技術。 VR(仮想現実)はコンピューターによって作られた世界をデバイスなどを通じて現実として認知すること、だ。僕はチーズポテトに手を伸ばして口に放り込んだ。


「どっちもさ、なんか嫌だなと思ってて」


「ほ、ほういうこと? ング……このどういうこと?っていうのは技術への疑問じゃなくて、純粋な疑問ね」


「なんか、つまんないなぁーって。最近はゲームとかサービスでよく使われる技術だし、わかりやすいしいいかなって思ってたんだけど……どうせならもう少し別のかたちにしたくて」


 あぐ、とハンバーガーにかぶりつく。繊細な顔していい食べっぷりだ。


「僕はシステム系の専門じゃないからなんとなくしか分からないんだけど、それって夏澄くんひとりでできるもの?」


 まだほんのりあたたかいコーヒーを手に取る。飲んでみると意外と熱かったりするので注意が必要だ。


「ああ、それは大丈夫。余裕」


 おそるおそる啜ってみたけどぬるいコーヒーが口内に流れてきたので安心する。


「ならいいんじゃないかなー。夏澄くんの理想に近いほうがいいと思うし……僕もそっちが見たいよ」


 へへっ、と照れくさそうに笑って彼は「サンキュ!」と手の甲を僕に向けてきた。一瞬なんの意味を持っているのか分からなかったけど、夏澄くんがノックするように手首を動かしたので理解した。僕も手の甲を夏澄くんのほうに向けて、コツンと手首を合わせる。つまるところ、逆版ハイタッチだ。


「悪いな、ちょっと手がベタついてるから」


「ほんのりしょっぱいかんじにね」


「ははっ、言えてら!」


 

 それから僕らは警備員の方が見回りに来るまで黙々と作業をしていた。


二十一時十八分、梅並木を並んで歩きながら「牛丼食ってく?」「うーん、大盛り」「決まり!」なんて会話をした。誰かと学校帰りにご飯を食べるのはすごく久しぶりなことに気づいて、ちょっと照れ臭かった。




 牛丼はおいしかった。

 ……そのあと、僕らを見つめる月があくびをするくらい、他愛もない話をした。

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