ぼくらの異世界[3]
「二条・異世界ゼミィ!?」
カチャーーーン。
手に持っていた箸入れを机の上に落とした冴夕はわなわなと震えている。
「二条学長が新しく作ったゼミってことよね!? え、い、異世界!? 異世界っていったいどんな研究するの……?」
「いや、それは言えないけど……」
――だって僕もまだちゃんと理解してないし。
「そっか、ごめん! 大丈夫、言わなくていいよ。それで、真央はもう研究方針決めたの? あ、詳細は言わなくていいよ! 決まったかどうかだけ」
「今日のゼミで提案するつもり。冴夕は? あ、詳細は言わなくていいよ」
「もう! 私はなんとなくまとまってきたかなって。メンバーを見た感じ、古代日本史選抜で選ばれたみたいだし、求められてるものとやりたいことが近かったから。でも問題はグループ研究のほうなの」
冴夕の言葉に固まる。グループ研究を失念していた。
「ワンマンプレイヤーの集まりだから、全然まとまらなくて。発表形態の案も色々だし困っちゃう。はぁ、やる気がケンカして誰かが我慢することになりそう……」
「発表形態?」
「ん……? もしかして聞いてないの? どうやって発表するのかも自由だよ。ゼミによっては動画垂れ流しとかもあるって」
「…………そこも考えないといけないのか……」
「ね、大変。でもやりがいある」
そう言って冴夕は小さくカットされたブロッコリーを口に運ぶ。僕もウインナードッグをばくりと食べた。続けてもう一口。空っぽになった手を小さなおしぼりで拭きながら、口いっぱいのウインナードッグを飲み込む。
「あっ、そうだ」
「なに?」
「僕さ、古典文学すきだったみたい」
「知ってるけど」
「はは、そっか」
――やっぱり、知らなかったのは……知らないフリをしていたのは僕だけだったんだな。
「……どうしたの、急に」
「なんでもない。なんか言いたくなった」
「? パンにへんなものはいってたんじゃない?」
「ちゃんとおいしかったよ」
「じょーだんだってば」
気づけば冴夕のお弁当箱は巾着に詰められていたので、僕もパンが入っていたビニール袋を一つにまとめる。そして、どちらからともなく立ち上がって教室の出口へ向かう。隣を歩く冴夕がコツンと肘をぶつけてきた。
「お互いがんばろーね」
「うん」
「じゃ、またね。お母さんにも電話しなよ?」
「わーってるよ」
少しおせっかいな幼馴染に手を振って、僕は三限の授業がある校舎へ歩いて行った。




