廃墟の星
光の渦を抜けると、二人は見知らぬ場所に立っていた。
そこは――瓦礫の山だった。かつて建物だったであろう石の壁が崩れ、所々から錆びた鉄骨が突き出している。空は赤茶け、太陽は一つだけだが、光は弱く、常に夕暮れのような色合い。
「ここは…戦場の跡か?」
林帆が警戒しながら周囲を見渡す。ヨルは彼の袖を掴み、黙ってついてくる。
廃墟の街を十分ほど歩いたとき、瓦礫の陰から人影が現れた。痩せ細った男。ボロボロの服。目は虚ろ。
「旅人か…ここは地獄だ。早く立ち去れ」
「何があったんだ?」
「十年前、この大陸で“力の大戦”があった。三つの力――星、マナ、根源――を巡る争いだ。結果、全てが壊れた。生き残った者は僅か」
男は咳き込み、倒れそうになる。林帆は駆け寄り、肩を貸す。
「水をくれ…」
彼は革袋から水を差し出した。男は一気に飲み干し、少しだけ顔色が戻った。
「ありがとう…あなたは、その剣…まさか“三力の剣”か?」
「知っているのか?」
「伝説でしか聞いたことがない。全ての力を統一した者のみが持てる剣。あなたがその継承者なら、この大陸を救えるかもしれない」
「救う?」
「大戦の後、この大陸には“歪みの核”がいくつも残された。それらがマナを吸い、星の光を遮り、根源の力を蝕んでいる。このままでは大陸全体が消滅する」
林帆は自分の胸のポケットに入っている宝玉を触った。先の神殿で手に入れた、三つの力を統一した宝玉。
「その歪みの核はどこにある?」
「東の山、南の森、西の砂漠、北の氷原。四ヶ所。それぞれに強力な守護者がいる」
男は震える手で簡単な地図を描いた。
「約束はできないが、やってみる」
林帆はヨルを連れて、まず一番近い東の山へ向かった。
廃墟の街を抜け、荒れた道を歩くこと半日。山のふもとに着いた。山肌には無数の洞窟。その中の一つから、黒い靄が立ち昇っている。
「ここか」
洞窟の中に入ると、空気が重い。進むにつれ、マナの濃度が異常に高くなる。
奥の広間。そこに、巨大な黒い結晶が浮かんでいた。周囲のマナを吸い込み、脈動している。
「歪みの核…」
結晶の前には、一体の石像。いや、動いた。ガゴイルだ。目が赤く輝き、翼を広げる。
「侵入者め…」
ガゴイルが襲いかかる。林帆は三力の剣を抜き、白い光を込めて迎え撃つ。
一合、二合、三合。ガゴイルの動きは速いが、剣の切れ味は更に上。
「そこだ!」
横薙ぎの一閃。ガゴイルの胴体を切り裂き、石の破片が飛び散る。
しかし、歪みの核は無事だ。黒い結晶は更に強く輝き、周囲のマナを吸い始めた。
「核自体を壊さなければ…」
林帆は剣を構え直し、全ての力を結晶に集中した。剣先から白い光の柱が放たれ、結晶を貫く。
ばりん。
結晶にひび割れが入り、あっという間に砕け散った。洞窟の中に新鮮な空気が流れ込む。
「これで一つ目だ」
外に出ると、空の赤茶けた色が少しだけ薄らいでいた。太陽の光がほんの少し強くなった気がする。
「あと三つ…」
彼はヨルを見た。彼女は疲れているが、うなずいて応える。
「行こう。次の場所へ」
二人は南の森を目指して歩き出した。
この大陸の救済は、まだ始まったばかりだ。




